近年、歯科受診によって咀嚼能力をはじめとした口腔機能の低下に早期に気づくことが重要だと考えられている。加齢に伴い歯数が減少し、咀嚼能力が低下することで、栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的にメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へと繋がることがこれまでの研究で示唆されている一方、歯科定期受診と咀嚼能力との関係についてはほとんど報告がなく、そのエビデンスが求められていた。
近年、歯科受診によって咀嚼能力をはじめとした口腔機能の低下に早期に気づくことが重要だと考えられている。加齢に伴い歯数が減少し、咀嚼能力が低下することで、栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的にメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へと繋がることがこれまでの研究で示唆されている一方、歯科定期受診と咀嚼能力との関係についてはほとんど報告がなく、そのエビデンスが求められていた。
サンスターが一般男女600名を対象に行った「オーラルフレイルに対する意識調査」によると、65歳以上の高齢者の5割以上がオーラルフレイルの危険性があると判明した。さらに64歳以下の人も、習慣的な歯や口周りのケア方法に改善の余地があり、年代を問わずオーラルフレイル予防の必要があることが分かった。65歳以上の人のリスクチェックの結果を見ると、具体的なオーラルフレイルの症状である「口の乾きが気になる」「さきいかやたくわんぐらいの硬さのものが噛めない」などの項目で、5人に1人以上が該当。さらに、「歯科医院の受診は1年に1回未満」の割合は28%にも及び、65歳以上の人でも多くの人が定期的なプロケアを受けていない実態が明らかになった。
日本歯科技工士会が3年ごとに調査を実施している「歯科技工士実態調査報告書」によると、有給休暇制度が「ある」とした職場は全体の63%、「ない」とした職場が33.7%だった。有給取得日数でみると、「0日」が23.8%にものぼっている。また、給与面でボーナス支給の状況を見てみると、「支給された」が60.4%。過去の調査を比較しても、2009年の68.9%から12年には66.4%、15年には64.5%と回を追うごとに減少している。しかも、歯科技工所勤務のみでみると48.7%と5割を切っている状況だ。
脳卒中後に経口栄養が不可能となり、経管栄養とならざるを得ないケースは多いが、摂食嚥下訓練により再び口から食事を摂取できるようになったという報告も多い。口腔と大腸は腸管を通じて繋がっており、食物、唾液、口腔内細菌は嚥下によって腸管へと流入しているため、これらが腸内細菌叢の変化に影響を及ぼす可能性がある。しかし、経口栄養がどのように腸内細菌叢に影響を及ぼしているかは不明だった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野の戸原玄准教授と歯周病学分野の片桐さやか助教のグループの研究により、経口栄養を再獲得することにより、口腔内および腸内細菌叢の多様性が増加し、細菌叢の組成が変化していることがわかった。
高齢者の死因の中でも上位に入る誤嚥性肺炎。口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であることは、入院患者及び介護施設入居者を対象にした多くの研究で明らかにされている。そんな中、東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授らのグループが65歳以上の地域在住高齢者約7万人を対象に調査を行った。対象者71227人のうち、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2.3%だった一方、毎日清掃しない人では3.0%だった。さらに、75歳以上の人に限ると、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2.9%であった一方、毎日清掃しない人おでは4.3%と、肺炎発症リスクが高くなった。
頭頸部がんは、首から上に発症するがんのうち、脳、脊髄、目を除いた総称です。口の中の舌がんなどの口腔がん、のどにできる咽頭・喉頭がん、鼻の中の鼻腔・副鼻腔がん、甲状腺がん、唾液腺がん、耳にできる聴器がんなどがあります。「頭頸部がんは種類は多いがそれぞれの発症頻度は少なく、がん全体の5%程度」と恵佑会札幌病院(札幌市白石区)の渡辺昭仁副院長(57)=耳鼻咽喉科、頭頸部外科=は話します。
頭頸部がんの最大の要因は「喫煙と過度の飲酒」です。口やのどなどの頭頸部や食道は、たばこの煙や酒の通り道です。日本頭頸部癌学会は、喫煙で喉頭がんの発生率が32倍に、飲酒で口腔、咽頭、喉頭、食道などの各がんの発生率が6倍になる、などと警告し、2006年に「禁煙・節酒宣言」を出して国民に予防を呼びかけています。
20本以上の歯を残すことを目標とした「8020運動」を、みなさんはご存じでしょうか。これは1989年に始まった国民運動です。当初はこの目標を達成した人は1割にも満たない状況でしたが、約30年後の2017年の調査では約5割以上の人が達成しています。歯を残すこができるようになった今、残った歯をどう使うか、つまり「口の機能」が注目され、その重要性を広めるために提案された概念が「オーラルフレイル」です。
オーラルフレイルは、直訳すると「口の機能の虚弱」です。口に関するささいな衰えを放置したり、適切に対応しないままにしたりすると、口の機能の低下、食べる機能の障害、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念です。
こうしたオーラルフレイルの進行は、誰もが避けられない自然な衰え(老化)と違い、仲間との交流の減少などが原因で自身の口の健康への関心が薄れてしまうことなどと複合して生じる「不自然な衰え」です。早い段階かた適切に対応すれば回復できますが、放置すると老化に加え、さまざまな要因が口の機能低下などを悪化させてしまいます。
多くの人は、加齢とともに低下する運動機能、栄養状態、生活能力を「齢のせい」とあきらめ、自ら活動範囲を狭めたり、噛みにくいものを避けたりしがちです。口まわりの”ささいな衰え”から始まる現象は、自覚しないまま悪循環に陥り、やがて食欲低下や低栄養にまで至ってしまいます。こうした問題を人ごとでなく”自分ごと”として、意識的に対処することが最も重要なポイントと言えます。
札幌市は10区に分かれていて、区民の健康づくりのため独自の体操を考案した区もあり、この欄でも「エコロコ!やまベェ誰でも体操」(西区)や「こりめ脳活体操」(豊平区)などをご紹介してきました。今回は市が制作した「サッポロスマイル体操」をご紹介します。
この体操ができたのは昨年10月。高齢者が住み慣れた地域で、生きがいや役割を持って主体的に介護予防に取り組む一助にと、北海道リハビリテーション専門職協会(HARP)の監修と市内の介護予防センターの協力のもと、約1年がかりで完成しました。
体操は「バランス&ストレッチ」など四つのバージョンがあります。このうち口や舌などを動かす「口腔バージョン」を説明しましょう。運動は腹式呼吸を含めて全部で7種類。楽曲に合わせて「パ・タ・カ・ラ」と発音する動作や、下顎を指で押したり頬をさすったりする「唾液腺マッサージ」などから構成され、時間は約4分です。
食べ物を食べたり飲み込んだりする動作などを改善する体操で、HARPの方々が歯科衛生士の助言を得て作ったそうです。
北海道新聞(夕刊) 2020