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社会的共通資本を振り返る~AIと人間界の調和~

「社会的共通資本」とは、経済学者・宇沢弘文氏が2000年に提唱した概念であり、「すべての人々が豊かな生活を送り、人間的で魅力ある社会を安定して維持するための社会的装置」を社会全体の共有財産としてとらえるものである。
宇沢は社会の基盤を、(1)自然環境(大気・森林など)、(2)社会資本(道路・交通・上下水道など)、(3)制度資本(教育・医療・司法・金融など)の三つに分類し、特に医療を制度資本の一部と位置づけた。彼は市場原理主義が進む中で、環境破壊や格差拡大、地域社会の崩壊が進む現実に強い危機感を抱き、これらの共通資本を社会全体で守り、適切に管理する必要を訴えた。
現代の医療界においても、競争原理の強まりによる格差拡大や、急速なデジタル化による人間性の喪失が問題となっている。この状況はかつて手塚治虫の「鉄腕アトム」に描かれた、人間とロボットの共存と対立の構図にも重なる。AIが発達する現代において、社会的共通資本の理念を再考し、技術の進歩と人間らしさの調和を実現することが、私たちの社会に求められているのかもしれない。

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