令和6年歯科疾患実態調査によると、8020達成者は61.5%であり、前回の調査より10%増加した。令和4年の報告での各年代のう歯所有者率を図3に示したが、若年者のう歯所有者率は年々減少しているにもかかわらず、高齢期においては増加している。これは若年者における現象は、家庭や学校における口腔衛生管理やフッ素洗口などが普及してきたことによるものと推察されるが、高齢期におけるう歯所有者率の増加は、残存歯を多く有する高齢者が増えてきているということを意味している。
高齢者のう蝕予防策が困難であり、かつ徹底されていないことを示していると考えられる。令和4年歯科疾患実態調査での75~84歳のう歯を持つ者の割合が90%近いことを考慮すると、ほぼすべての高齢者において、つまり自立している高齢者も要介護高齢者に対しても、う蝕に対する何らかの系統的な対策を取らなければならず、またそれは高齢者にとどまらない、ライフコースを考えた対策でなければならないと考えられる。
家庭や学校における口腔衛生管理やフッ素洗口の実施によって、若い人たちのう蝕の有病率は低下している。ただ、年齢が進むにつれて有病率は増加し、35歳~64歳についてはほぼ100%である。これには、中学・高校受験やクラブ活動といった将来への布石を固め始める時期である若年期に、自身の健康を継続的に保つためにはどうすればよいか、つまり口腔健康管理の習慣を得ることが、老年期に至るまでの重要な資産となることをきちんと認識させるという対策が必要である。
現在、国民皆歯科健診が議論されているが、その実施については、われわれ歯科医療者側が相当な責任感を持って実施するべきである。おそらくほぼすべての方々に何らかの歯科的問題が存在するであろうが、その状態とその対策について理論的に分かりやすく説明する知識と技術をわれわれが有しなければならない。つまり、一応説明したけど治療にもリコールにもこないのは患者の責任である、というスタンスではなく、国民皆歯科健診を提案したのだから、それを受け入れた国民に対してはきっちりその期待に応える、という意識がわれわれに必要であろう。