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次期診療報酬改定

厚生労働省は診療報酬改定について、12月22日の予算大臣折衝を踏まえ令和4年度の診療報酬改定が決定したとして公表した。診療報酬本体は +0.43%。各科改定率は医科 +0.26%、 歯科 +0.29%、調剤 +0.08%。薬価は -1.35%の引き下げ。

【歯科通信】

医学部地域枠は労基法に抵触か、医師の「人身拘束」の懸念

一般社団法人「医療法務研究協会」は12月19日、「医学部地域枠の運用上の法律問題」をテーマに都内でセミナーを開催、医学部の地域枠について、卒後に長期間の従事要件を設けたり、臨床研修や専門研修において、「不同意離脱」した場合にペナルティーを科すことは不当な「人身拘束」の防止規定を設ける労働基準法に抵触する可能性が指摘された。

 2022年度入試から地域枠の運用が厳格化されるほか、新専門医制度についても2021年度から、都道府県の同意なく離脱(不同意離脱)する医師に対しては、専門医として不認定とする方針が打ち出されている。同協会会長で弁護士の井上清成氏は、セミナーの冒頭、法的な問題が内在する可能性があることから、本セミナーを企画したと説明。「必ずしも解決の糸口が見えないかもしれないが、今後運用面の改善をしていくにあたって、問題点を意識してもらいたい」。

 「奨学金返済など、お金の問題なら解決しやすい」とも述べ、地域枠が臨床研修や専門医資格などにかかわる現状を問題視。「いろいろな相談が弁護士に行っている現状だ。中には提訴に値する問題もある。早急に組み直しをしないと、大きな裁判が勃発することを危惧している」と指摘し、医学生、研修医、専門医のほか、地域の住民などの利害関係者全てが集まり、法的な整理をする必要性を強調した。

 スプリング法律事務所の弁護士の石井林太郎氏は、地域枠出身者に対し、特定就業先での長期間の就業義務を設けたり、違反(離脱)時に専門医を不認定としたり、奨学金の一括返済などのペナルティーを科すことは、労基法5条(強制労働の禁止)、14条(契約期間の制限)、16条(賠償予定の禁止)に抵触する可能性があるとし、警鐘を鳴らした。さらに日本専門医機構が、「不同意離脱」をしているか否かの情報提供を当該都道府県から受けるのは、第三者提供の観点から個人情報保護法に抵触する恐れもあると指摘した。

「ウイルス除去率99%」に根拠なし 消費者庁が2社に措置命令

消費者庁は17日、「ウイルス除去率99%」などとうたった2社の空間除菌商品には効果を裏付ける根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、2社に対して、商品のパッケージなどの表示をやめることなどを求める措置命令を出した。

 同庁によると、2社は「大木製薬」(東京都千代田区)と「CLO2 Lab」(兵庫県西宮市)。2社は商品にはウイルスを除去する効果がある二酸化塩素を発生させる成分が含まれ、室内などのウイルスの除去ができるとうたっていた。同庁は2社に表示の根拠となる資料の提出を求めたが、いずれも密閉空間での実験結果で、室内での効果をうたう根拠とは認められないと判断した。

 大木製薬は「措置命令は遺憾で、法的措置を講じることも視野に、慎重に検討する」とコメント。消費者庁によると、「CLO2 Lab」は「命令の内容を精査し、対応を検討したい」と説明しているという。

チューインガムで術後イレウスが低減

心臓手術後にチューインガムをかむことで、術後イレウス(腸閉塞)を軽減できることが、米国胸部外科学会(STS)主催のPerioperative and Critical Care Conference(9月10~11日、オンライン開催)で報告された。

 米クローザーチェスター医療センターのSirivan Seng氏らは、2017~2020年に心臓手術を受けた連続症例341例を対例に、安定が確認された後、1日3回、5~10分間ガムをかんでもらい、2013~2016年に同様の選択的心臓手術を受けた496例と術後イレウス発生率を比較。

 その結果、身体診察により腹部膨満を示し、画像診断で術後イレウスと確定されたのは、ガムをかんだ群で2例(0.59%)だったのに対し、かまなかった群では17例(3.43%)であり、この差は統計学的に有意であった。

 Seng氏は、「心臓手術を受けた患者でのガムの使用について調べた研究は過去になかったが、今回ガムが腸機能の回復を早める可能性が示された。リスクが最小でコストもわずかであることから、心臓手術後にガム介入を組み込むことは、新たな標準治療として強く検討されるべきである」と述べている。

舌炎②

ケアおよび在宅でのポイント
 唾液腺マッサージはセルフケアにて行う。耳下腺は両手の指の腹を使って咬筋部を後方から前方に向かって回すように刺激する。顎下腺は親指を下顎骨の内側にあて、後方から前方に向かって押していく。舌下腺は両手の親指をそろえ顎の真下から舌を突き上げるように押す。食前や口腔ケア前に5~10回行うとよい。

【参考資料】
柿木保明:日歯医師会誌. 2007;60(2):104-14.
徳間みづほ:老年歯医. 2006;20(4):356-61.

舌炎【私の治療】

加藤 宏 (東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)
舌炎には、萎縮をきたす舌炎と、構造に異常をきたす舌炎がある。前者には、①萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎、②口腔乾燥症に伴う舌炎、③鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson症候群)に伴う舌炎、④悪性貧血に伴うHunter舌炎がある。後者には、地図状舌と溝状舌がある(「地図状舌・溝状舌」の稿参照)。ここでは萎縮をきたす4つの舌炎のうち、①および②について解説する(③および④は「赤色平滑舌」の稿参照)。

診断のポイント
【萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎】

 舌背中央~後方部、分界溝前方に左右対称性の赤みを帯びた斑を呈する。自覚症状は乏しく、時に軽度の疼痛や違和感を認める。病変部の糸状乳頭の消失が特徴である。

【口腔乾燥症に伴う舌炎】

 唾液分泌量低下に伴う舌の乾燥感や疼痛、唾液の粘稠感、口腔不快感、味覚異常、口臭を呈する。口腔乾燥症の検査にはサクソンテストとガムテストがある。サクソンテストは、乾燥したガーゼを2分間一定の速度で噛み、ガーゼに吸収される唾液の重量を測定し、2 g/2分間以下で陽性と診断する。ガムテストは無味のガムを10分間噛み、その間に分泌された唾液を小容器に集めて測定し、10 mL/10分間以下の場合、陽性と診断する。

私の治療方針・処方の組み立て方
【萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎】

 無症候性の場合は加療の必要はなく、疼痛などを認める場合は対症療法として含嗽薬、トローチを使用する。カンジダ培養検査にて陽性の場合は抗真菌薬を併用する。

【口腔乾燥症に伴う舌炎】

 シェーグレン症候群、糖尿病、薬剤性などの全身的要因が考えられる場合は専門医へ相談し、原因疾患の治療や内服薬の変更を依頼する。器質的疾患がないものについては含嗽薬、保湿ケア、人工唾液、唾液腺マッサージによる対症療法を行い、改善がみられない場合は漢方や唾液分泌促進薬の投薬を行う。

治療の実際
【萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎】

一手目 :アズノール4%うがい液(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物)1回4~6 mg(1回押し切り分、または5~7滴)1日数回〔適量(約100 mL)の水または微温湯に溶解し、含嗽〕

二手目 :〈一手目に追加〉SPトローチ0.25 mg(デカリニウム塩化物)1回1錠1日6回

【カンジダ菌が同定された場合】

一手目 :フロリードゲル2%経口用(ミコナゾール)1回2.5~5.0 g 1日4回(毎食後・就寝前)

二手目 :〈処方変更〉ファンギゾンシロップ(アムホテリシンB)1回0.5~1.0 mL 1日2~4回

三手目 :〈処方変更〉イトリゾール1%内用液(イトラコナゾール)1回20 mL 1日1回(空腹時)

【口腔乾燥症に伴う舌炎】

一手目 :アズノール4%うがい液1回4~6 mg(1回押し切り分、または5~7滴)1日数回〔適量(約100 mL)の水または微温湯に溶解し、含嗽〕

二手目 :〈一手目に追加〉バイオディーンオーラルバランスジェル(口内保湿ジェル。天然酵素ラクトペルオキシダーゼ・グルコースオキシダーゼ・リゾチーム)1回1 cm 1日4回(毎食後・就寝前)

三手目 :〈二手目に追加〉サリベートエアゾール(塩化ナトリウム・塩化カリウム・塩化カルシウム水和物・塩化マグネシウム・リン酸二カリウム等)1回1~2秒間1日4~5回(噴霧)

四手目 :〈三手目に追加〉ツムラ白虎加人参湯エキス顆粒1日9 g 分2~3(食前または食間)、またはツムラ五苓散エキス顆粒1日7.5 g 分2~3(食前または食間)

五手目 :〈処方変更〉サラジェン5 mg錠(ピロカルピン塩酸塩)1回1錠1日3回(毎食後)、またはサリグレン30 mgカプセル(セビメリン塩酸塩水和物)1回1カプセル1日3回(毎食後)

コーヒーとアミロイドβ

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☕はアミロイドβ(Aβ)の蓄積を遅らせる。世界の大手製薬会社がアルツハイマー病(AD)治療薬から撤退する中、㈱エーザイの新薬(BAN2401:アデュカヌマブ)をFDAが承認して、現在日本でも審査中。効能は「Aβの蓄積を遅らせる」。今回の論文は、認知力正常な227人(>65歳)を10年間追跡し、☕1日摂取量が3杯以上の群で、Aβ蓄積量CL=3.7を観察しました(図の右端)。☕博士:CLとは、健康成人での蓄積レベルを0、典型的なアルツハイマー病の蓄積レベルを100として、症例ごとのスケールを表示する方法。別途、BAN2401 の18ヶ月投与では5.5となっています。数値的には、☕とBAN2401 は同等です。

モデルナ製ワクチン、ファイザー製より有効性わずかに高い

米国の退役軍人を対象に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)とmRNA-1273(モデルナ製)の有効性を比較。ワクチンの初回接種を受けた米国退役軍人の電子診療記録を用いて、各ワクチン群に21万9842例を登録した。

 その結果、アルファ変異株が優勢だった24週間の追跡期間中に見られた1000人当たりの推定感染リスクは、BNT162b2群5.75件、mRNA-1273群4.52件だった。BNT162b2の方がmRNA-1273よりもCOVID-19感染(1000人当たり1.23)、症候性COVID-1(同0.44)、COVID-19入院(同0.55)、COVID-19によるICU入室(同0.10)、COVID-19死亡(同0.02)の超過事象数が多かった。このほか、デルタ変異株が優勢だった12週間の追跡期間中の感染超過リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、1000人当たり6.54件だった。

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