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医学部地域枠は労基法に抵触か、医師の「人身拘束」の懸念

一般社団法人「医療法務研究協会」は12月19日、「医学部地域枠の運用上の法律問題」をテーマに都内でセミナーを開催、医学部の地域枠について、卒後に長期間の従事要件を設けたり、臨床研修や専門研修において、「不同意離脱」した場合にペナルティーを科すことは不当な「人身拘束」の防止規定を設ける労働基準法に抵触する可能性が指摘された。

 2022年度入試から地域枠の運用が厳格化されるほか、新専門医制度についても2021年度から、都道府県の同意なく離脱(不同意離脱)する医師に対しては、専門医として不認定とする方針が打ち出されている。同協会会長で弁護士の井上清成氏は、セミナーの冒頭、法的な問題が内在する可能性があることから、本セミナーを企画したと説明。「必ずしも解決の糸口が見えないかもしれないが、今後運用面の改善をしていくにあたって、問題点を意識してもらいたい」。

 「奨学金返済など、お金の問題なら解決しやすい」とも述べ、地域枠が臨床研修や専門医資格などにかかわる現状を問題視。「いろいろな相談が弁護士に行っている現状だ。中には提訴に値する問題もある。早急に組み直しをしないと、大きな裁判が勃発することを危惧している」と指摘し、医学生、研修医、専門医のほか、地域の住民などの利害関係者全てが集まり、法的な整理をする必要性を強調した。

 スプリング法律事務所の弁護士の石井林太郎氏は、地域枠出身者に対し、特定就業先での長期間の就業義務を設けたり、違反(離脱)時に専門医を不認定としたり、奨学金の一括返済などのペナルティーを科すことは、労基法5条(強制労働の禁止)、14条(契約期間の制限)、16条(賠償予定の禁止)に抵触する可能性があるとし、警鐘を鳴らした。さらに日本専門医機構が、「不同意離脱」をしているか否かの情報提供を当該都道府県から受けるのは、第三者提供の観点から個人情報保護法に抵触する恐れもあると指摘した。