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細径内視鏡、「口から入れても楽」は本当か

経鼻内視鏡が普及する中で、経鼻にこだわる必要がないとの意見がある。
鼻痛を訴えるケースが無視できず、積極的に細径内視鏡を口から入れるという。
鼻から入れてこそ検査を容易にするとも指摘されるが、賛否はどうか。

(鼻から入れる)
「鼻用の細径内視鏡は鼻から入れてこそ、患者の負担軽減を実現できる」と説明する静岡赤十字病院の川田和昭氏
 「細径内視鏡は、鼻から入れてこそ意味がある」と、静岡赤十字病院経鼻内視鏡センター長の川田和昭氏は強調する。
静岡赤十字病院は、経鼻内視鏡による検査を増やしており、2009年度は年間4316件の経鼻内視鏡を利用した検査を実施している。
「経鼻内視鏡に慣れない人が、口から入れてくれないかと申し出る場合がある。そうした場合、口から入れるよりも楽な方法があると、経鼻を勧めるのが医師の役割だと考えている。通常径のスコープより細く、鼻から入れられる。吐き気を催さずに、苦痛が少ない。鼻から挿入することで、経鼻内視鏡のメリットを最大限に生かしていくべきだ」と川田氏は説明する。実際、検査を受けてもらうと、楽であることを分かってもらい、経鼻で行う意義は明白という。
経鼻内視鏡は、検査の際に、患者も話せることが重要という。医師の側から話しかけ、それに応じて、患者も応える。そのことで、検査を受けることの緊張感が和らぎ、痛みが軽減するという考え方で、経口では不可能な側面という。川田氏は「Vocal Anesthesia(声による麻酔)」と呼んでいる。
舌根部を触れず咽頭反射がない
経鼻では、口から入れないので、舌根部に触れることもない点も重要。「自ら、通常径の内視鏡を口から入れ、さらに細径内視鏡を口から、鼻からと体験した。細径内視鏡を鼻から挿入する検査を自ら経験した医師であれば、細径を鼻から入れた場合が、苦痛は最小になると判断するのではないか。検査を受けた方を対象に、アンケートを取っても、経鼻は安心感があるという意見が圧倒的だ」と川田氏は言う。
経鼻内視鏡は挿入率が7割程度にとどまると指摘されることがあるが、川田氏は、「前処置を確実に行えば、鼻からの挿入成功率は9割を超える」と考えている。なお、川田氏自身の挿入成功率は99.8%に達する。8%のリドカインをスティックに付けて鼻粘膜の鎮痛を入念に行い、ナファゾリンで血管収縮の処理をする。最低10分は待機することが大切という。

 川田氏は、「鼻から入れるのは難しいのではなく、コツがある。先行して経鼻内視鏡の検査に取り組んでいる医師から技術を学び取っていけば、細径内視鏡は可能な限り鼻から入れるべきと考えていただける。口から入れるということにはならないだろう」と話す。

【補足】 2010年10月15日に、以下の点を補足しました。

・本文中下から2段落目で、挿入成功率の向上について川田氏が言及していますが、川田氏自身の挿入成功率は99.8%です。

(口から入れる)
「細径の内視鏡は、鼻から入れることにこだわることはない」と総合南東北病院の西野徳之氏は説明する
 「経鼻内視鏡が楽だと言われるが、実際には細径内視鏡を口から入れても変わりない」と、福島県の総合南東北病院消化器センター長の西野徳之氏は説明する。
西野氏らのグループは年間1万件を超える上部消化管の内視鏡検査を実施している。西野氏は積極的に細径内視鏡を利用しているが、ほぼ全例で口から挿入しているという。「細径の内視鏡は経鼻だから楽なのではなく、細いから苦痛が小さい」と西野氏は見ている。
検査のコツは幾つかある。姿勢は、ややうつぶせ気味になってもらい、よだれは飲み込まず、垂れ流してもらう。肩の力を抜き、視線は1m先の宙を眺めてもらうようにする。呼吸は腹式の5秒程度の深呼吸をしてもらう。「内視鏡検査を行う前、検査を受ける方は周囲から、胃カメラはつらいといった情報を聞かされて緊張している場合も多い。検査前に1回笑わせたりして、緊張をほぐし、十分な説明を行うことが大切。説明通りに検査すれば苦痛は生じない」(西野氏)。
工夫で咽頭反射は招かない

 経口の場合、吐き気を催すことが問題となるが、工夫次第で咽頭反射を回避できるという考え方だ。「5cm、5cmと大きく内視鏡を動かすのではなく、毎秒1cmほどのペースでゆっくりと動かす。のどをまっすぐにして入れる。舌根部に触れても刺激は少ない」(西野氏)。

 2006年11月から2007年2月にかけて、西野氏は健常者のボランティアを30人募り、経鼻と経口のどちらが楽か調べたことがある。患者の希望に従って、最初に経鼻で検査して次に経口で検査する経鼻開始群13人と、経口で始めて経鼻を行う経口開始群17人に分けた。経鼻開始群の中で鼻痛のために経鼻中止者が1人、経口開始群で同様に鼻痛で経鼻中止者が5人出たが、経口の中止者はいなかった。胃潰瘍があって除外した2人を除くと、どちらが楽かという回答は、経鼻は12人、経口は13人、同等は3人で、経鼻も経口も苦痛の差はなかった。
西野氏は、「経鼻の場合に、圧迫感があってつらくていやという人がいる。特に若い女性を中心に、顔の大きさが小さめで、鼻が高くても鼻腔が狭い人が多く、経鼻は向かない。自分自身は、鼻中隔が湾曲して経鼻内視鏡は合わなかった。口から細径内視鏡を入れてみたところ、苦痛なく挿入できた。経鼻にこだわることはない」と語る。
2010年10月14日 星良孝(m3.com編集部)

ALS患者ら、介護行政の遅れ指摘 在宅生活支援のNPO、シンポジウム

全身の筋力が低下する難病「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症」(ALS)の患者の在宅生活を支援するNPO法人「リターンホーム」が、千葉市でシンポジウム「進化する介護in千葉」を今月開き、介護関係者や識者、ALS患者やその家族らが活発に意見交換した。
ALS患者には、痰(たん)の吸引や呼吸器具使用など医療的ケアを伴う24時間の見守り介護が必要だが、障害者自立支援法の定める「重度訪問介護事業」を引き受ける事業所は少ない。このため患者が地域生活を送るのは難しく、長期入院を強いられるケースが大半だ。
父親が今年ALSを発症した県内の男性は「父は呼吸器を付け命ある限り生きたいと願っているが、家族介護には限界がある」と悩みを吐露した。
討論では、立命館大の立岩真也教授(社会学)が「難病患者に必要な介護保険法と障害者自立支援法の両方を熟知する人材は圧倒的に少ない。地域差もあり、千葉は遅れている」と指摘。介護事業所代表の伊藤佳世子さんは「県内で在宅24時間介護が実現したのは千葉市など3市のみ。自治体の裁量次第だが、担当者には家族が介護すべきだとの考え方が根強い」と介護行政に疑問を表明した。【中川聡子】
2010年10月13日 提供:毎日新聞社

0.67%増の3,277億円、特対費は廃止・組替えへ/国保組合概算要求

厚労省が8月26日に公表した23年度予算概算要求では、国保組合の助成費として22年度予算比0.67%増の3,277億円を要求した。被保険者数を1.6%減の355.5万人、1人あたり医療費を3.6%増の18万4,597円、医療費総額を1.9%増の6,194億円と見込んだ結果、「療養給付費補助金」の要求額は1.47%増の2,217億円となった。
 国保組合の補助金制度は来年度から大きく見直される予定。概算要求では「特別対策費補助金」の要求額がゼロとなっている。厚労省では「特別対策費補助金については概算要求ではゼロとされているが、補助金制度全体を見直す中で、同様の機能を維持し、保険者機能の強化を支援する仕組みを検討する」としている。
      「国保情報(国保中央会発行)№974~976より転載」

70~74歳、窓口負担2割に 現行1割から引き上げ 13年度から5年かけ 新高齢者医療で厚労省方針

厚生労働省は2日、2013年度に導入予定の新たな高齢者医療制度で、医療機関の窓口で支払う患者の自己負担割合について、現在は暫定的に1割となっている70~74歳の負担を見直し、早ければ13年度から段階的に2割負担に引き上げる方針を固めた。

 新制度では現役世代の負担増が避けられない見通しとなったことから、厚労省は高齢者にも応分の負担を求める考え。高齢者の窓口負担は総額で1700億円増える一方、公費投入は同程度減ると試算している。ただ、負担増には政府、与党内にも慎重な意見があり、調整は難航しそうだ。

 厚労省の方針では、早ければ13年度に70歳を迎えた人(10年度に67歳)から引き上げを開始。5年間かけて年度経過ごとに順次、70歳になる人へ対象を広げ、70~74歳の全体が2割負担となるのは17年度の見通しだ。現在68歳以上の人は1割負担のまま。
2010年10月4日 提供:共同通信社

 方針通り見直されれば、高齢者の窓口負担は、一般的な所得の人で(1)75歳以上が1割(2)70~74歳が2割(3)69歳以下は3割-と整理される。

 ただ、70歳以上でも課税所得が145万円以上で、かつ夫婦の合計年収が520万円以上(単身は年収383万円以上)の世帯は「現役並み所得」と扱われ、現行通り3割負担だ。

 70~74歳の窓口負担は本来、自公政権の法改正に基づき08年度から2割になる予定だった。だが同年度の後期高齢者医療制度開始に伴う高齢者の負担軽減策の一環で、それまでの1割を維持し引き上げを凍結していた。

 後期医療制度廃止後の新制度では、75歳以上は国民健康保険か、健康保険組合など被用者保険に移る予定。高齢者医療の枠組みが変わるのに合わせ、厚労省は現在の負担軽減策を見直し、本来の規定に戻すことにした。

※新高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度を2012年度末に廃止し、13年度から75歳以上は国民健康保険(国保)か被用者保険に加入。国保に約1200万人、被用者保険に約200万人が後期医療から移る。75歳以上の国保は都道府県単位の運営とし、財政も区分し別会計とする方向。厚生労働省は、一連の見直しを盛り込んだ関連法案を11年の通常国会に提出することを目指している。

インフル予防接種開始 新型と季節性混合ワクチン

今シーズンのインフルエンザの予防接種が1日、スタート。この日に開始しなかった医療機関も順次始める。厚生労働省によると、使われるのは昨年から今年にかけて流行した新型インフルエンザと、季節性のA香港型、B型の計3種類を混ぜたワクチン。

 最大約5300万回分と見込まれる需要に対し、5800万回分以上が供給できる見通し。昨シーズンの新型ワクチンのように、接種を受ける人の優先順位は付けない。費用は自治体ごとに違うが、多くが3600円前後になるとみられる。

 国立感染症研究所によると、全国の定点医療機関から報告されるインフルエンザ患者は依然、流行入りの指標よりもかなり低い水準。ただ、夏の間も学校などで集団発生は散発し、新型やA香港型のウイルスも検出されているという。

障害者自立支援法改正、6団体中5団体が難色―民主PT

民主党政策調査会の「障がい者政策プロジェクトチーム(PT)」は9月28日、5回目の会合を開き、障害者自立支援法の見直しの在り方について障害当事者団体からヒアリングした。ヒアリングに参加した6団体のうち5団体が同法の改正に難色を示した。

薬包装誤飲 のどに傷、86件 高齢者ら10年間で

国民生活センターは15日、錠剤を包装シートごと誤ってのみ込み、のどなどを傷つける事故が00年からの10年間で高齢者を中心に86件あったと発表した。60代以上が8割を占め、10件は入院が必要なほど重症。1錠ずつ切り分けていたため、間違えてのみ込むケースが目立った。

 包装シートはプラスチックにアルミなどを張り付けており、誤飲を防ぐため、96年から手で切り離せない構造に改良された。包装はレントゲンで見つかりにくく、08年には内視鏡検査で80代男性から包装が見つかり、十二指腸に穴があいていた。同センターは「1回分の薬の量が多い場合や急いでいる場合、誤飲が起きやすい。1錠ずつに切り離さず、周りの人も気を配ってほしい」と話している。
2010年9月16日 提供:毎日新聞社

様変わりする手術部位感染予防法 

「手術前の手洗いは、ブラシは使わず、石けんと流水で汚れを落とした後に速乾性擦込式アルコール製剤を使用」「抗菌薬投与は術後2、3日までがメド」「滅菌被覆材は術後48時間まで」―。
手術部位感染(SSI:surgical site infection)の予防法は、ここ数年で大きく様変わりしました。きっかけは、米疾病対策センター(CDC)が1999年に発表
した「手術部位感染予防ガイドライン(SSI予防ガイドライン)」。これにより、術前の剃毛やブラシによる手洗い、創面への消毒など、従来の“常識”の多くが否定されました。

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