日本老年歯科医学会では、2013年に「高齢者の口腔機能低下を病名にできるか」というテーマのワークショップを開催した。ワークショップでは、「口腔機能低下症」、「口腔機能低下症候群」、「口腔老化症候群」、「要介護性口腔症候群」といった病名とその内容が報告された。当時は要介護高齢者のみを想定した病名の検討であった。日本歯科医学会でも2014年に歯科新病名の創生に向けたワークショップを開催した。その結果、「口腔機能低下症」、「口腔機能発達不全症」、「生活習慣性歯周病」、「口腔バイオフィルム感染症」の4つの新病名が提案された。2014年には、国立長寿医療研究センターの研究班から「オーラルフレイル」の概念が発表された。そこで、日本老年歯科医学会では、これまで検討してきた「口腔機能低下症」と、概念としての「オーラルフレイル」を区別して、診断名としての「口腔機能低下症」の検査や診断基準を明確にするために、「高齢期における口腔機能低下 -学会見解論文2016年度版-」を公表した。
その後、2018年4月に「口腔機能低下症」の検査と管理が保険収載されるに際して、日本老年歯科医学会の支援で、日本歯科医学会から「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」が発表された。保険収載されたことにより、多くのデータが集まり、エビデンスが確かなものになっていくことが期待された。また2022年度の改定から、口腔機能管理料の対象年齢が65歳以上から50歳以下に引き下げられた。これによって、より若いうちから、歯科医療が口腔機能へのアプローチを開始できることになり、高齢期の口腔健康をより計画性をもって達成できるようになったと考えられる。「口腔機能発達不全症」の保険収載も合わせて、シームレスに口腔健康を管理する体制構築のバックグラウンドが整ったのではないかと考える。また、令和6年には関連3学会による協議によりオーラルフレイルと「口腔機能低下症」の位置づけを明確化し、国民の口腔機能低下に気付きを確実なものとした。
さらに令和8年の診療報酬改定により、口腔細菌量検査、咀嚼能力検査、咬合圧検査の施設基準が撤廃された。また口腔粘膜湿潤度検査も算定できるようになった。これにより「口腔機能低下症」の実施件数がさらに伸びることを期待している。口腔機能低下症の検査と指導は手間がかかると思いがちであるが、なんとか工夫していただき、より多くの患者さんに効率よく検査や指導ができるような体制にしていただきたいと考える。
それは増収につながると同時に、患者さんの意識改革や行動変容につながるものと思われる。