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タンパク質はどう摂ればいい?

推奨される摂取量はどのくらい?
 フレイルやサルコペニアの予防・改善には、筋肉量、筋力、身体機能と強く関連するタンパク質を十分に摂取することが重要です。高齢者(65歳以上)のタンパク質の推奨量は体形や身体活動量にかかわらず、男性は1日に60g、女性は50gを下限としています。言い換えれば、1日に体重1㎏あたり1.0g~1.25g以上のタンパク質を摂取する必要があるということ。一見簡単なようですが、今元気な地域在住高齢者でさえ、多くは1g/㎏体重/日も摂れていないのが現状です。
 では、タンパク質は食材にどのくらい含まれているのかというと、肉類の場合、鶏ささみ(若どり・生)100gで23.9g。和牛ヒレ(生)100gで19.1g。調理方法などにもよりますが、50g以上のタンパク質を摂るには軽く250g程度の肉を食べなければならない計算になります。

高齢者が積極的に摂るべき栄養素とは?

フレイルやサルコペニアの予防・改善には栄養が必要
 健康を保つためには、さまざまな食品群の食品・食材を満遍なく食べることが大切です。しかし、高齢になると病気や加齢による食欲不振から食事量が減ったり、偏った食事になったりすることで、実は必要なエネルギーや栄養素を十分に摂れていないことが少なくありません。
 栄養不足は筋肉量が減少するサルコペニアの原因にもなり、サルコペニアによって基礎代謝量が低下し、エネルギー消費量が減れば、食欲や食事量も低下して低栄養となり、さらに活動度が落ちるという悪循環(フレイル・サイクル)へとつながります。要介護状態になるリスクを減らすためには栄養が必須なのです。

あんぱんと牛乳の組み合わせは最強の間食!

食欲や口腔機能の低下などによって1回の食事量が減ってきたという人は、間食の回数を増やして1日のエネルギー摂取量を補うようにしましょう。間食には、エネルギーとタンパク質を摂取できる乳製品、卵、豆類がおすすめ。油を多く含みエネルギー確保ができるクッキーやチョコレート、パンも適しています。
 例えば、普段のおやつを「煎餅とお茶」から「あんパンと牛乳」の組み合わせにするだけでも栄養価はかなり変わります。牛乳は脂質が多くカロリーが高いうえにタンパク質やビタミンDが摂れ、水分補給にもなります。あんの原料である小豆にはタンパク質が豊富に含まれています。間食によって血中のアミノ酸濃度の変動が抑えられる(食事と食事の間にアミノ酸濃度が下がらない)とタンパク質合成能も高くなるので、この組み合わせのおやつは高齢者にとって最強といえるのです。

胃瘻フィーバーの終焉に強い「政策誘導」-新潟県福祉保健部長・松本晴樹氏

 飛龍。松本氏と話してまず持ったのはこのイメージだ。この若き高級官僚は、水を得た魚のように厚生労働省、新潟県と飛び回っている。世を睥睨し全体を見ながら、近づけばその鱗には無数の傷がついている。以前ここで対談させてもらった、同じ厚生労働省医系技官の堀岡伸彦氏はどこからどうみても猛虎だったが、今回の松本氏は飛龍だ。なんとなく、二人の対決を見てみたい、など勝手なことを考える。

 それにしても私の出会う官僚たちはみな、どうしてこうもエネルギーに満ちあふれているのだろうか。個人的な知人が厚生労働省以外の省庁にもいるが、その人間もマグマの塊のようだ。こういう人が、この国の制度を考えて作り、問題を解決し続けているのだと思うと大変心強く思う。それも、私たち臨床医よりもはるかに安い給料でだ。城山三郎の小説「官僚たちの夏」でも、日本という国のために心を尽くして悩み抜く官僚たちの姿が描かれる。時代は少し前だが、あれはけっこうリアルだと知人の官僚は言っていた。

 松本氏に伺いたかったのは、官僚がどんな仕事をしているのか、ということだ。答えは非常に明快で、「官僚は問題解決が仕事」とのこと。なるほど、問題解決の能力を磨けば、1、2年で部署がコロコロ変わっても同じスキルが積まれていくのだろう。臨床医とはかけ離れた仕事内容で、とても面白そうである。対談では聞けなかったが、「関係者の説得」では裏技や寝技も使うのだろう。教科書的であればあるほど高い能力になり、良い結果を生み出す臨床医とはまた違う。

 医系技官は数年おきに部署を変わるが、その度にまずやることは2次情報に当たることだという。「広く浅く学んでから、詳しい情報を入れ」、その上で「鍵になる人に聞きまくる」という態度はとても学びになった。そんなこと、あまりやっていないなあ、と自戒する。今自分がやっている臨床研究では、京大公衆衛生大学院で広く浅く学び、詳しい情報もまあ入れたのだが、「鍵になる人に聞きまくる」ことは全然やっていない。もっとそういうアクションも取っていかねば。

 それにしても驚いたのは、2014年度の診療報酬改定で胃瘻造設術の保険点数を下げる仕事に松本氏が携わっていたことだった。ご存知の読者の方も多いと思うが、あの頃、胃瘻造設術まわりがドル箱になり一斉に消化器内科医、外科医が胃瘻を作りまくったのだ。その後点数が下がり、同時期に胃瘻への批判も高まったこともあり急速に廃れた印象がある。もちろん今でも必要な患者さんへは作られているが、乱造と言われていた当時の胃瘻フィーバーは私もおかしいと感じていた。療養病院へ行けば、10人中8、9人は胃瘻の入った高齢者だった。日本の医療は規制産業で、非常に強い「政策誘導」がある。保険点数が高くつけば人が集まり専門施設が立ち、充足したところで点数が下がるとプレイヤーが去り程良い塩梅となる。この胃瘻がいい例だ。それも良し悪しである。

 松本氏の人生を考えた。臨床医を3年、その後、医系技官として厚生労働省に入省し、ハーバード大で公衆衛生を学び新潟県への出向。すぐにまた厚生労働省に戻るのだろう。そこでいろいろな部署でのキャリアを積み、どこを目指していくのだろうか。

 いや、そんなことはあまり考えていないのかもしれない。その場その場で全力を尽くし、泥臭くのたうち回ってめざましい結果を出していく。それにただただ夢中になっているのかもしれない。ふと、そう思った。翻って自分の来た道を振り返る。外科医をずっと続け、大腸癌の専門家として技術を高め続け、ロボット支援手術など新しい技術を取り入れ、ひたすらその道を追い求める。

 全く違う二つの道だが、こんなところでクロスしたのはただの偶然か。いつかコロナが明けたら酒でも呑みに行きたい。

 臨床医の給与が下がることについても、松本氏は触れた。これを読む若手医師の皆さんへは、「従来の臨床+αをしないと、コモディティになってしまう」というセリフをよくよく覚えておいていただきたい。医師の人数が相対的に増え、さらに「超長時間働ける」スキルが働き方改革で使えなくなるなどすれば、医師の能力はさらに均てん化される。誰でも同じになり、差別化ができなくなることをコモディティ化と言う。もはや医師というライセンスだけで1500万円を超すような高給は期待できなくなるのだ。自分にもしっかりと言い聞かせつつ、本対談を振り返った。

摂食障害の小児に多い精神疾患は

 米国のAdolescent Brain Cognitive Development研究のデータを用いて、摂食障害がある9-10歳の小児1万1718例に併存する精神疾患を検討した。

 その結果、摂食障害のある小児は、摂食障害のない小児と比較すると、精神疾患の同時発症が実質的に多かったが、大うつ病性障害または外傷後ストレス障害の診断を受けた小児との比較では同じ傾向は見られなかった。摂食障害のある小児で最も一般的な併存疾患は、不安症(71.4%)、注意欠陥/多動障害(47.9%)、秩序破壊的/衝動制御障害(45.0%)、気分障害(29.6%)、強迫性障害(28.8%)で、概ね既報と一致していた。

地中海食の特徴

  ●果物や野菜、オリーブオイル、ナッツ類、豆類、未精製穀物を   
   毎食使用。
  ●乳製品や肉よりも魚を多く使う
   (牛肉、豚肉、菓子は月に数回程度)。
  ●食事と一緒に適量の赤ワインを飲む。

地中海食で健康増進を

 近年、n-3系とn-9系の油を上手に摂れる地中海食が注目されています。地中海食はイタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国の人が食べている伝統的な料理のことで、肥満を予防・改善するダイエット関連のワードとして目にすることも多くなりました。地中海食の定義は広く、特徴としては加工度を最小限にとどめ、その地域でとれた旬の新鮮な食材を使った料理であること。
 魚介類やオリーブオイル、ナッツ類などを多用し、赤身肉の使用と加糖(菓子)を減らして、植物性食品が豊富に摂れるような食事のパターンになっています。
 地中海食は死亡率の低下や、心血管疾患、がん、アルツハイマー病などの発生率の低下との関連が多数報告されています。複雑な調理手順がなく、入手の難しい食材や特別な調理器具も必要としないので、日常の食事に気軽に取り入れてみてはどうでしょうか。

唾液で迅速に大腸がん検査 慶応大、短時間で高精度に

慶応大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)の曽我朋義(そが・ともよし)教授らは3日までに、唾液による大腸がん検査について、多くの人から採取した検体を一度に測定する技術を開発したと発表した。精度も高い上、検査に要する時間が大幅に減り、手軽ながん診断へ期待がかかる。成果は国際的な分析化学誌電子版に掲載された。

 大腸がんなどの患者の唾液や尿からは、一般の人に比べ高濃度のポリアミンと呼ばれる成分が検出される。鶴岡市のベンチャー企業「サリバテック」が専用の検査キットを開発するなど、唾液中のポリアミン濃度からがんのリスクや有無を調べる方法は近年普及が進んでいる。

 従来は1検体ずつ10分以上かけて調べたが、新たな技術では40検体をまとめて40分で測定できる。1検体当たり1分で終了する計算だ。また大腸がん患者と健常者から採取したポリアミンを調べたところ、8割以上の精度で両者を区別できた。一般的な便潜血検査に比べ手間がかからず、精度も高いという。

 他に膵臓(すいぞう)がん、乳がん、口腔(こうくう)がんでも唾液中のポリアミン濃度が上昇することが分かっており、これらの検査にも応用できる可能性がある。

 今後、サリバテックへ技術を導入し、実用化と大幅なコスト削減を目指す。曽我教授は「安く検査できればがんの早期発見にもつながる」と期待する。

 注)分析化学誌は「ジャーナル・オブ・クロマトグラフィーA」

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