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子供用歯磨剤「チェック・アップコドモA」(以下本製品)の使用後にアナフィラキシー

本年5月19日の厚生労働省通知により、子供用歯磨剤「チェック・アップコドモA」(以下本製品)の使用後にアナフィラキシーを発現した事例が、2022年12月から2023年5月の間に3件報告されています。本製品の使用とアナフィラキシーの発現との因果関係は明らかにされていませんが、厚生労働省は,今後本製品の使用に関する安全性についてより注視する必要があるとしています。それを受けて、ライオン歯科材料株式会社より、本製品を患者様に推奨するにあたって、患者様のアレルギー様症状の既往や喘息の既往等を確認するように注意喚起されています。詳細は以下URLよりご確認の上、ご対処いただきますようよろしくお願いいたします。

厚生労働省通知
https://www.mhlw.go.jp/content/001098618.pdf

ライオン歯科材料株式会社より注意喚起文
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:d36bad9f-f4b5-3350-8cea-be05ce6c1536

なぜ人は「つい食べ過ぎてしまう」のか?

「おいしい」には“意味”がある
 ダイエット中に「つい」一口食べたら、止まらなくなってしまった。

 好きなお菓子をつまみながらテレビを見ていたら、「つい」大量に食べてしまっていた。

 こうした、おいしくて食べ過ぎてしたという経験は、だれでも身に覚えがあることではないだろうか。どうして「つい、つい、食べすぎてしまう」をやってしまうのだろうか。

 その謎を考える前に、そもそも「おいしい」と感じること、その正体について述べたい。

 おいしさとは、食べ物を食べたときの「快感」だ。私たちは食べないと生きていけない。そこで、食べることに快感がもたらされることで、食欲がわくようにできているのである。私たちは体に必要なものは本能的においしく感じる。それを識別する役割を担っているのが味覚である。

 味覚は「甘味」「塩味」「旨味」「酸味」「苦味」で構成されており、このうち、甘味、塩味、旨味は、おいしく感じる。

 甘味はエネルギー源の糖、塩味は生体調節などに必要なミネラル、旨味はたんぱく質のもとになるアミノ酸や核酸に由来し、人体に必要な栄養素の存在を知らせるシグナルになっている。

「本能的なおししさ」と「経験的なおいしさ」
 一方、腐ったものは酸っぱくなり、毒のあるものは苦いものが多いため、酸味は腐敗を、苦味は毒素の存在を知らせる味だ。

 そのため、生まれたばかりの赤ちゃんでも甘味や旨味を口に入れると気持ちよさそうな表情になり、苦味や酸味は嫌がる。

 やがて食経験を重ねると、味覚は発達し、苦味や酸味を受け入れるようになる。大人になって苦いコーヒーやビールがおいしくなるなど、食経験を重ねることで感じるのが経験的なおいしさだ。

 このようにおいしさは、本能的なおいしさと経験的なおいしさに大別される。経験的なおいしさは、人それぞれで基準が異なるが、本能的なおいしさは生まれながらに感じる共通なものである。

 さて、味覚だけをとっても、「おいしさ」は、複雑なことがわかるが、味覚以外にもさらに多くの要因がからんでくる。

香りは食欲を制する!
 食欲をそそる、おいしさをもたらす要因には、味以外にも、においなど食べ物に由来するものはもちろん、食べる人の体調や食べるときの環境、食文化の背景など、多くのものがある。おいしさの要因には実に多くのものがあり、実際はかなり複雑な感覚といえるだろう。

 そのなかでも、甘い香りの果物、香ばしい香りのトーストなど、香りは味や食感などとともにおいしさの重要な要素だ。ポテトチップスやスナック菓子につい手が伸びるのも、香りが大きく絡んでいるのだ。

技術の進化が目覚ましい、フレーバーのすごい力!
 そういった食品に重要な香りや風味を与えているのがフレーバー(食品香料)だ。フレーバーは、調理や加工で薄れた香りを補い、食材由来の好ましくない臭いをマスキングする役割を担う。さらに、食品に新たな風味を加えるために添加される場合も多い。

 近年は技術の進歩によって、より本物に近い自然な香りのするフレーバーや、味と一体となっておいしさを生み出すフレーバーなどが開発されている。フレーバーは、食品の香りを再現するようにつくられており、味わう人の想像力をかきたて、食品のおいしさを引き立てている。
 
 マクロバイオティックのクッキングスクールなどを行っている「日本CI協会」で講演した際に、果汁含量の異なる2種類の果実飲料の官能試験を行い、香りがおいしさに及ぼす影響を評価してもらった。

 官能試験とは、人の感覚を使って物の特性を評価することで、試料の違いを評価することもあれば、好ましさを調査するために行われることもある。品評会や新商品の開発、市場テストなどさまざまな用途で使われる試験だ。

 試料の果実飲料は、どこのスーパーやコンビニでも売られている、よく知られている2製品を用いた。白い紙コップに入れて並べられると製品の区別はつかない。果実味をどちらで強く感じるか、色や味、香りなどどちらが好ましいかを評価してもらった。


2つの飲料の果実味、色や味、香りの比較

 実際は、Aが果汁25%、Bが果汁40%であった。だが結果は、色や香りの好ましさについては大差がなく、果実味の感じ方にも差がなかった。果実味や味の好ましさを感じる人の数は、果汁の濃度が低い方にむしろ多かったことが興味深い。

 また、フレーバーの加えていない果実飲料を25%に薄めたものも試してもらうと、果実味はあまり感じられないという人がほとんどだった。

 香りは味覚を操っているといっても過言ではないほど、おいしさに大きな影響を及ぼしていることを実感することができた。

 しかし、いくら「味」や「香り」が良くても、永遠に食べ続けることはできない。では、この「食欲」とは、どのようなしくみでコントロールされているのだろうか?

食行動のカギを握るホルモン「レプチン」
 生命を維持するためには、エネルギー源になる栄養素を摂取しなければならず、そのための食行動をコントロールしているのが食欲である。

 脳のなかの間脳にある視床下部には、摂食中枢や満腹中枢があり、摂食を調節している。ここは自律神経系の中枢で、体温や睡眠など、生命維持に重要な機能を制御しているところだ。

 脳にはホルモンなどを介して体内の栄養状態が伝えられ、栄養素が不足していれば、脳の摂食中枢が作用し、空腹を感じる。一方、十分に栄養素が摂取できれば満腹感を感じ、食べるのをやめる。

 体重は摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスの調節の情報で、体重を一定に保つことで、エネルギーのバランスを維持することができる。もし、食欲によるコントロールがなかったら、まったくお腹がすかず、やせ細っていくか、食べても食べても満腹にならず、体重が増え続けることになる。

 肥満や糖尿病の病態を解明する研究には、食欲を抑制できず体重や体脂肪が増加した肥満マウスが使われている。そのマウスでは「レプチン」という食欲を抑制するホルモンがはたらかないようになっている。

 正常マウスに比べて明らかに巨大な肥満マウスの様子を見ると、普段当たり前に感じている満腹や空腹が、生体にとって重要な意味があることを認識させられる。また、肥満状態の人を調べると、摂食は必ずしも抑制されておらず、レプチンが効きにくくなるという現象が起きていることが知られる。

食べ過ぎを防ぐには「脳をだます」!?
 おいしさは口や舌で感じるのではなく、脳で感じている。味覚や嗅覚、視覚、触覚、聴覚の五感をフルに活用して、食べ物の情報を脳に伝えている。では、食べすぎを防ぐために効果的な方法はあるのか?

 前述の通り、脳はおいしさを覚えており、おいしさは食べるという行動を促す。おいしさは食欲を引き起こし、さらに食欲が食行動を支えているのである。

 また、もしも何かを食べた後に下痢や吐き気など不快な思いをすると、その食べ物が嫌いになり、食べなくなることもある。内臓の不快感と味覚の情報が脳の中で合わさって、先天的に好きな甘い味でも嫌いになったりする。

 このような後天的な味覚の学習には脳の扁桃体の機能が関わる。偏桃体は味覚をはじめ、嗅覚や視覚などあらゆる五感の情報が集まるところで、「快」「不快」「好き」「嫌い」などの価値を判断している。内臓の感覚情報も集まってくるので、偏桃体の中でそれらの情報が処理され、その味を嫌うように記憶づけられている。

 また、味は同じでも、色が違うだけで食べ物はおいしそうに見えたり、まずそうに見えたりする。一般的に赤やオレンジ色など暖色系の色はおいしそうに感じ、青や紫色など寒色系の色はあまり感じない。

 色は、食欲をコントロールする手段かもしれない。

 また、実験マウスのところで述べた、食欲を抑える「レプチン」のメカニズムと、それに関わる酵素などの研究が進んでいる。将来的には、そのメカニズムを利用して食欲をコントロールできるのではないだろうか。

   ◇   

 さて、おいしさと食欲の関係ついて概観してみました。さまざまな味や味覚にあふれ、彩り豊かな食べ物が揃うお正月。青く寒々しいおせちも、不快な思い出いっぱいのお正月もありえないから、おいしいものをがまんするのは難しそうです。「1年のエネルギー源になる栄養素を摂取」と考えて、お正月はおいしいものを食べますか!

2型糖尿病患者のNSAID、心不全による入院リスクと関連

1998-2021年のデンマークのデータベースを用いて2型糖尿病と診断された患者33万1189例を特定し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)短期間の使用が心不全の新規発症と関連するという仮説を立てて検証した。診断の120日以内に心不全、リウマチ性疾患、およびNSAIDの使用がない患者を分析対象とした。

 その結果、NSAIDの短期使用が、心不全の入院リスク増加と関連した(オッズ比1.43、95%CI 1.27-1.63)。特に80歳以上の高齢者(同1.78、1.39-2.28)、HbA1c高値に対して糖尿病治療薬の使用なしまたは1種類のみの使用者(同1.68、1.00-2.88)、NSAID新規使用(同2.71、1.78-4.23)で入院リスクが高かった。

【原文を読む】
Holt A, et al. Heart Failure Following Anti-Inflammatory Medications in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus. J Am Coll Cardiol. 2023; 81: 1459-1470.

歯科衛生士 9割超が「転職経験あり」 職場選びでは「勤務地」を重視

「転職経験あり」と回答した歯科衛生士は9割以上で、職場を選んだときに重視したポイントでは、「勤務地・通いやすさ」が最も多く、「仕事内容・業務内容」「給料・待遇面」の順で多かった。

 デンタルサポートが調査したもので、転職経験の有無と回数では、95%が「転職経験あり」と回答、「3回」27.9%、「2回」15.1%、「1回」13.6%だった。さらに、転職のタイミングでは「次が決まったらすぐ」25.1%、「年度末などの区切りのいいタイミング」22.8%、「ボーナス・賞与支給後」8.2%と、人材の流動性が高いことが分かった。退職理由では、「人間関係への不満」11.1%が最も多く、「結婚のため」10.4%、「出産のため」8.8%、「仕事内容への不満」7.8%、「経営方針が合わない・共感できない」6.5%、「キャリアアップできないと感じた」6.1%などの結果が出た。

【歯科通信】

簡便に歯周病リスク判定

歯周病は、自覚症状が発現するころには重篤化していることが多く、リスク判定に基づく早期発見・早期治療が重要となる。既存の歯周病検査は重症度の診断を目的とするだけで、簡易にリスク判定を行える検査は存在していなかった。 

 東北大学病院の石井京子 歯科衛生士、東北大学大学院歯学研究科の梶原貴子 歯科衛生士、八幡祥生 准教授、齋藤正寛 教授らのグループはSillHa唾液検査装置(アークレイ社)を用いた唾液中の白血球エステラーゼ活性が歯周病の炎症状態の改善に伴って低下することを明らかにした。この方法は唾液を試験紙に染み込ませて機械で読み取るだけで短時間に検査することができるため、簡便に歯周病のリスク判定を行うことができる検査方法となることが期待される。

 現在、国が推進している「国民皆歯科健診」の実現につながる可能性があるとも言われている。


【日本歯科新聞】

「下顎管の位置を特定するAI」で歯科診療をアシスト

下顎には、神経と血管が走行する重要な解剖学的構造である「下顎管」がある。例えばインプラント治療では、神経損傷を避けるため、下顎管から2mm以上の安全マージンが推奨されるなど、その位置把握は歯科治療で重要な意味を持つ。歯科用コーンビームCT(CBCT)から下顎管の位置を把握する際には、個人差や人種的差異のために手動では難しい場合もあるなど、より正確で自動化された手法の開発が求められている。

フィンランドのアールト大学などによる多施設共同研究では、下顎管の位置を特定するAIモデルの評価を行っており、その研究成果はScientific Reportsに発表されている。「モデルの生成した下顎管の位置」に関する臨床評価として専門家によるレビューを受けたところ、96%で臨床的に十分使用可能、という高い評価がなされたとする。

著者でアールト大学のJaakko Sahlsten氏は「AIモデルの学習で課題となったのは、3D画像に写る下顎管の大きさが画像全体のデータに比べ非常に小さいという、トレーニング素材のアンバランスさだった。臨床評価を受け、我々はこのモデルがうまく機能していると強く確信している」と語った。

オンライン資格確認未導入~「すぐに個別指導は行わない」

■ メルマガニュース
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オンライン資格確認未導入~「すぐに個別指導は行わない」
 ― 日歯・堀 会長
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 日本歯科医師会の堀 会長は20日の会見で、今月から原則義務化となったオンライン資格確認について、未導入医療機関に対してはすぐに個別指導を行うのではなく、まずは個別の改善を促す方針で厚労省と合意していると明らかにした。

 オン資未導入で、経過措置の届出をしていない医療機関に対しては「社会保険診療報酬支払基金から個別にメールで経過措置を知らせる」「ポータルサイトなどの委託先から電話で勧奨する」「Eラーニングによる集団指導を行う」などの方針で合意しているという。


【メディファクス】

口腔ケアは全身疾患の予防につながるのか「分かりやすい発信方法を考えたい」‐河口浩之・広島大学病院革新的病院口腔ケアプロジェクトセンター長に聞く◆Vol.2

医科と歯科の具体的な連携について教えてください。

 これはセンター設立以前から行っているのですが、特に手術や化学療法・移植手術の前には口腔ケアが必須のため、歯科に紹介していただいています。手術前に口腔ケアをすると消化器系の手術における傷口の感染率や、化学療法後の発熱の割合が低下するとのデータがあるほか、ビスホスホネート製剤など抜歯と相性の悪い薬もあるため、手術前や該当薬の投薬前には、歯科でのチェックや口腔ケアを欠かさず行っているのです。口腔ケアとしては、口腔内のクリーニングを行い、口の中の細菌数を減らす作業を行っています。時間がある場合は歯の治療を行ったり、抜歯が必要な歯を抜いたりもしています。化学療法を行う場合は、放射線が当たった後に歯を抜くと予後が悪いと言われているためです。

 この医科と歯科の連携は2010年から当院で実施しており、現在医科から歯科へは、月に300人前後の口腔ケアの紹介があります。医科歯科連携での歯科医の紹介数は大学病院の中でもトップレベルです。口腔ケアは医科の治療が成功するための一つの要因でもあり、非常に重要な工程であると考えています。

――医師が患者の診察をする上で、口腔面で注意すべきことは何でしょうか。

 医科の面から見ても、口腔ケアのメリットはとても大きいと思います。感染源を清潔にする、無くすといった意味合いで考えた際に、口腔ケアは非常に重要です。医科には口腔面と病気の関連性を非常に良く理解されている先生がおり、例えば消化器内科系の先生からは、肝臓の疾患と口腔面の不衛生とはかなり関わりがあるとのことで、口の中の状況を確認してほしいとの依頼を受けることがあります。医科の先生方には、口腔内の状態が身体の病気の原因になることを理解したうえで、歯科にアプローチしていただければと思います。

 今までに口腔総合診療科で医科から紹介を受けた患者さんを多数診てきましたが、自主的に診療を受けに来る患者さんとは異なり、紹介の場合は、口の中の状態がかなりひどい方が多いです。上の歯が全て虫歯で歯が無かったり、もう抜くしかない状態になったりしている方もたくさんいました。そういった方は恐らく口の中に劣等感を持っており、恥ずかしくて歯科には行けないとすら感じている場合が多く、長い間治療を放置してしまっています。そのため「通院している歯科がある場合はよく診てもらった方が良い」など、歯科へ行くきっかけとなるようなアドバイスをしていただけると良いですね。 

――医科と歯科の連携に関して先生が感じている課題は。

 歯科から医科に患者さんを紹介する際に、患者さんの口腔内の状況を伝えづらいことです。例えば、糖尿病と歯周病の両方で通院している患者さんを診る場合、歯科では糖尿病の状態を検査結果などの数値ですぐに理解することができます。しかし、歯科はそういった検査値があまりなく、現在の状況を説明したり、理解してもらったりすることが難しいです。

 「歯周病の状態はどうですか?」と患者さんや医科の先生に聞かれても、重症や中程度や軽症などと言うしかなく、やはり皆さんピンとこないのではないかと思います。歯周病だけでなく、今の口腔内の状態を患者さんや医科の先生に分かりやすく数字で表現できないと、状況を理解するのはなかなか難しいのではないでしょうか。メタボリックシンドロームの場合は腹囲などの理解しやすい基準がありますが、歯周病も検査をして数値が100以上であれば歯周病の可能性ありなど、そういった分かりやすい形で提示しないと口腔内に興味を持ってもらえないだろうと感じています。そのため、今後は分かりやすい数値での発信に関して方法を検討していきたいと考えています。

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