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つい忘れていた、一番大切なこと

口腔ケアをしていたのは、後輩看護師でした。特に変わった様子はなく、ケア
用品は『モアブラシ』と『ウエットキーピング』でいつもと同じ。声のかけ方も、
病院で定めたマニュアルの通りです。
 しかしよく観察してみると、あることに気づきました。ストレッチやマッサー
ジをする回数と場所が、Kさんとは違っていたのです。

 Kさんは後輩看護師に、なぜ康子さんが嫌がらないのかを聞いてみました。
「気持ちいいところは重点的に、痛いところはササッとケアをしているからだと
思います。康子さんの反応を見ているうちに、どこが気持ちいいか、痛いかが分
かってきたんです」

 この答えを聞いて、Kさんはドキッとしました。いつの間にか、マニュアル通
りにやることを優先していたと気づいたのです。
「看護師全員が一定レベルの口腔ケアを提供するためには、マニュアルが必須で
す。でも、それにとらわれすぎて患者さんを見ないのは本末転倒。患者さんを思
いやる気持ちが一番大切です」

 これ以降Kさんは、口腔ケアのときに患者さんの様子をじっくり観察するよう
になりました。まだ康子さんに怒鳴られることもありますが、少しずつその回数
は減っているそうです。

家族の絆を深める口腔ケア

「おじいちゃんの口が臭いからお見舞いに行きたくないって孫が言うの」
 奥様は、そうKさんにこぼしたのです。

 ショックを受けたKさんは、なんとかしたいと思って書籍を調べてみました。
そこで目に入ったのは、「口臭の原因のひとつは口腔乾燥」という一文。夢中で
読み進めると、ストレッチを加えて唾液分泌を促す口腔ケアが効果的と書かれて
いたのです。

 さっそくKさんは、その日から粘膜ブラシ『くるリーナ』で口腔内のストレッ
チを行ない、唾液の分泌を促進。1週間ほどすると口腔内が潤い、口臭も軽減さ
れてきました。

 そして数週間後……。

 和幸さんの病室から聞こえてきたのは、お孫さんのかわいい声。室内を見てみ
ると、和幸さんが幸せそうにお孫さんを抱っこしていました。

「口腔ケアは、家族の絆を深める役割もあるんですね。今までは、清潔に保った
り誤嚥性肺炎を防ぐことだけが目的だと思っていました」
 Kさんは今、あることを看護師長に提案する予定です。それは、口臭が強い患
者さんにはお見舞い時間の前に口腔ケアをすること。たくさんお見舞いに来ても
らい、早く患者さんに元気になってほしいとKさんは願っています。

水素水に歯周病予防の可能性。全身の抗酸化力アップに効果。

水素水の摂取に歯周病を予防する効果があるとの研究結果が、ラットを使った実験で確認された。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野の森田学教授らのグループによる、世界で初めての証明となる。今回の研究では、歯周病を惹起させたラットを2群に分け、一方に蒸留水、もう一方に水素水を摂取させた。結果、蒸留水を与えたラットでは、経時的に血液中の活性酵素の濃度が高まったものの、水素水を与えたラットでは、血液中の活性酸素の増加を抑えることを確認。さらに、水素水を与えたラットの歯茎の組織を観察したところ、蒸留水を与えたラットに比べて歯周病の進行が抑制されていることが確認されたという。これまでの研究で、歯周病の進行に活性酸素が関わることが知られており、今回の実験によって、水素水の摂取に伴う活性酸素の減少が、歯周病の進行を予防した可能性を示したことになる。成果は、欧州の歯周病専門雑誌「Journal of clinical Periodontology」に掲載された。
 現在、歯周病予防は歯磨きや歯石除去など、口腔内で行われているが、本研究の成果は前進の抗酸化力を高めることもまた、歯周病の予防に効果的であることを示唆。日本人の成人の80%が歯周病または予備軍といわれる昨今、その新しい予防法の可能性に期待したい。

思い切って話してよかった!

Sさんが口腔ケアを担当している、脳梗塞の既往がある60代の男性患者さん。
現在は、糖尿病性腎症を患い人工透析を受けています。その患者さんの口腔内は、
歯周病が進行して、歯肉が腫れている状態。ただでさえ感染に対する抵抗力が弱
いので、できるだけ口腔内の細菌を減らす必要がありました。
 ところが、奥さんが持参したのは、ホテルや旅館においてあるアメニティグッ
ズの歯ブラシだったのです。

「この歯ブラシは毛先が硬い。患者さんの歯肉に当てたら、傷ついて出血してし
まうかも……」

 そう思いながら、歯肉になるべく当たらないように歯をちょこちょこ磨くSさ
ん。心のなかは迷いでいっぱいでした。「この磨き方だと、汚れがちゃんととれ
ない」と。悩んだ末、Sさんは勇気を振り絞って、奥さんにこう言いました。

「この歯ブラシだと毛先が硬くて、ご主人のお口のなかを傷つけてしまうかもし
れません。そして、今はご病気で、感染に対する抵抗力が弱い状態です。お口の
なかの細菌を減らすためにも、しっかり磨ける毛先の軟らかい歯ブラシが必要で
す。お手数ですが、下の売店で買ってきていただけますか?」

 それを聞いた奥さんはハッとした顔をして、すぐに歯ブラシを買ってきてくれ
ました。そして安堵したような表情で、「歯ブラシってなんでもいいわけじゃな
いのね。教えてくれてありがとう!」と言ったそうです。

 その後、数日で患者さんの口腔内は見違えるように改善され、奥さんの表情も
ニッコリ。
 Sさんは、「思い切ってお話してよかった。きっと私と同じように遠慮して言
えない方もいるかもしれません。もしそういう人がいたら、何も迷う必要はない
って伝えてあげたいですね」と微笑みながら話してくれました。

 奥さんと、患者さんに“健康になってほしい”と思うSさんの気持ちは同じ。
それを叶えるために、一人ひとりに合った口腔ケアグッズを提案するのはとても
大切なことなのです。

親知らずで歯の神経再生。歯髄幹細胞移植の臨床研究へ。

虫歯の治療で抜いた歯髄を再生させるため、親知らずなどから取り出した歯髄幹細胞を移植する臨床研究の実施を厚生労働省科学技術部会が承認。近く厚生労働省が正式承認する。申請していたのは、国立長寿医療研究センター(愛知県)と愛知学院大の研究グループ。20歳以上55歳未満の患者5人を対象に治療効果を確かめる。虫歯が進むと歯髄が炎症を起こして激しく痛む。歯髄を抜いて詰め物をすれば痛みを感じなくなるが、虫歯の再発に気付きにくくなったり歯と詰め物の間に細菌が繁殖したりし、歯の寿命が短くなる恐れがある。計画では、親知らずなど不要な歯を抜いて歯髄の中にある幹細胞を採取、約6週間培養して数を増やす。その後、穴を開けて歯髄を抜いた虫歯の中に、幹細胞とともに歯髄の再生を促す薬剤やコラーゲンを注入し、セメントなどで穴をふさぐ。成功すれば、移植した幹細胞が神経や血管をつくるタイプの幹細胞を歯の根元側から少しずつ引き寄せ、約1ヶ月で歯髄がほぼ完成する。

歯科医師4人当選で 歯科系国会議員は8人に 来夏の参院選では30万票必要!

12月16日に行われた第46回衆院選で立候補していた12人の歯科医師は、
自民党3人、日本維新の会1人の計4人の候補者が当選した。歯科医師
の国会議員は、自民党と民主党の参議院議員各2人を合わせて計8人と
過去最多数となった。(当選者は以下の通り)

<自民党>
渡辺孝一氏 (北海道比例・昭和32生・道医療大卒・前岩見沢市長)
白須賀貴樹氏(千葉13区・昭和50生・東歯大卒)
比嘉奈津美氏(沖縄3区・昭和33生・福歯大卒・沖縄県歯会副会長)

<日本維新の会>
新原秀人氏(近畿比例・昭和37生・阪大歯学部卒・前兵庫県議会議員)

参議院議員(歯科医師) 
石井みどり氏 (自民党比例・昭和24生・鶴見大歯卒)
西村正美氏  (民主党比例・昭和38生・日歯大卒)
関口昌一氏  (自民党埼玉・昭和28生・明海大歯卒)
大久保潔重氏 (民主党長崎・昭和41生・長崎大歯卒)

フッ化物洗口の実施向上で全国ワースト2位から脱却。

当時、秋田県の12歳児の1人平均のむし歯の本数は、全国最下位レベル。秋田県内の幼稚園や保育所、小中学校に粘り強く働きかけ、危機感を共有し、、様々な連携の中で、フッ化物洗口の実施率の向上を促した。フッ化物洗口を実施した地域では、12歳児のむし歯の本数が激減。2008年には全国ワースト2位だった秋田県の12歳児のむし歯本数の軽減を後押しすると見られる数値もマークしている。
 フッ化物洗口といえば、全国に先駆けて学校等で集団フッ化物洗口を展開してきた新潟県のお家芸。なんと新潟県では、12歳児1人平均むし歯本数を全国平均1.20本を大きく割り込み(0.68本)、12年連続で全国1位を獲得している。フッ化物洗口に遅れをとっている都道府県は、今回の松野才さんの受賞により、取り組みを見直すきっかけにしてみてはどうだろう。

患者さんに喜んでもらうために大切なこととは?

看護師のKさんは、急性骨髄性白血病の方の口腔ケアについて悩んでいました。
病気に対しての不安や恐怖を抱えている患者さん。さらに上唇内面に大きな潰瘍
もあり、痛がって口を開けてくれません。そこで、同じ病院に勤務している歯科
医師と共に患者さんの病室へ行きました。

 患者さんと対面した先生は、まず抱えている不満や愚痴を聞き続けたそうです。
「もう田んぼも続けられないよ」と嘆く患者さんに「来年も自分で作ったお米を
食べられるよう、僕たちが全力でサポートしていくからね」と話す先生。そして
患者さんの目をじっと見て、こう続けたのです。

 「絶対に痛いことしないからお口の中を診せてくれるかな。今より確実によく
なるよ。本当だったら傷口に軟膏を塗った方がいいんだけど、痛いところは触ら
ないようにするね。潰瘍の原因を作っている歯のほうに塗れば大丈夫だから」

 患者さんが痛がらずにケアする方法を探した先生。Kさんは患者さんの気持ち
を理解し、ベストな方法で処置をしている姿にとても驚いたそうです。さらに、
口腔ケアをすることばかりに目を向けていた自分を恥ずかしく感じたといいます。

 以来、常に先生が行なったことを思い出しているとのこと。Kさんは患者さん
の気持ちを理解したうえで、ケアをするよう努めています。「これからも“患者
さんに気持ちいい”と思ってもらえる口腔ケアをしていきます」と笑顔を見せて
くれました。

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