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あごマスク 「海外エッセー 世界の街から」

「まさかこれほどとは」。わが目を疑った。新型コロナウイルスの流行が続く米南部ジョージア州で共和党の集会を取材したときのことだ。トランプ大統領を熱狂的に支持する参加者約200人のうち、マスク着用者は数えるほど。マスク姿をさがすのは「ウォーリー」と同じくらい難しい。

 一方、野党民主党の集会ではマスク姿がほとんど。広がる光景は正反対で、同じ国とはとても思えない。感染防止に欠かせなくなったマスクだが、米国では依然「政治化」が甚だしい。トランプ氏のマスク嫌いを反映し、熱心な共和党支持者ほど着用しない傾向にあるようだ。

 逆に考えると、マスクを着けているかどうかで、ある程度政治的なスタンスが推測可能ということでもある。大統領選の行く末が世界的関心事となり、世論調査の精度も疑問視される中で、これほど興味深い手掛かりもないだろう。

 ただ厄介なのは、あごに着けて口も鼻も隠さない、いわゆる「あごマスク」である。単に煩わしくてずらしているのか、積極的に無党派を主張しているのか、それとも何も考えていないのか。控えめに言って曖昧すぎる。

 試しに「あごマスク派」の男性に話を聞くと、トランプ氏支持だったので、混乱はますます深まった。社会学の観点から本格的に研究すれば、きっとイグ・ノーベル賞も狙えるはずだ。

 あごマスク派を見かけると「感染防止には全く意味ないから」と言ってあげたくもなるが、分断極まる米社会で「異文化」が衝突する最前線なのかもしれないと考え、つい興味深く眺めてしまう日々が続いている。

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