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(私の視点)歯の健康教育 発育踏まえ、小中高一貫で 不二崎正径

私は小学校の歯科校医を30年近く務めてきた。教科書の記述の量をみれば分かるように、歯科保健活動は小学校に重点が置かれ、中学、高校と進むにつれて先細りになる。だが、かむ機能はがんや認知症、肥満の予防に有効なことが分かってきた。年をとっても元気でいられるよう、知能と体の発育に合わせ、小中高での一貫した歯の健康教育が必要だ。

 小学校で「虫歯はなぜできるか」を教えても「虫歯を放置するとどうなるか」はほとんど教えない。歯周病も同様だ。歯を失うとかみ合わせのバランスが崩れて、体全体に悪影響を及ぼすという内容が難しいからだ。しかし、これらは中学、高校できちんと学んでほしい。加えてスポーツに必要な瞬発力や持久力、平衡感覚にも歯が重要なことを理解してほしい。

 18歳ぐらいから生えてくる「親知らず」についても正しい知識を持たない生徒が多い。口を開けたり、かみしめたりした時に痛む顎(がく)関節症についても知っておくべきだ。

 虫歯や歯周病の予防の第一歩は、自分の目で観察すること。子供の頃から、口の中をライト付きのミラーなどでチェックする習慣をつけることも大事だ。小学生は乳歯がぐらぐらして抜けそうになると、口の中が気になり、見たくなる。この感覚を大切にしたい。

 学校で健診後に配る「お知らせ」に虫歯や歯肉炎の部位を明記すれば、子供たちが実際に見て、悪い場所を確認できるようになる。

 また、子供たちは歯並びに関心があるが、毎日の食べ方や食材が歯並びと深く関係していることはよく知らない。かむ習慣が重要なのだが、現代の食は軟らかく、かまずに飲み込めるものが多い。発育期によくかまないと、あごが発達しない。その結果、狭い場所に永久歯が無理して生えてしまい、かみ合わせが悪くなる。かむ刺激が脳への血流と神経伝達を増やし、知能の発達や脳の活性化に不可欠なことも学んでほしい。

 人生の後半で歯が失われてからでは遅い。子供の頃から健康に関心を持ち、自らの歯を守る姿勢を育成したい。高齢者になっても、かむ機能を維持できれば、医療費も節減できる。国をあげて、歯の健康教育に取り組んでもらいたい。

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