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心と食を支えるお口のケア認知症について考える

「口」は様々な役割と機能を持ちますが、健康を維持する栄養面だけではなく、楽しく、美味しく、安全な食事、さらには人と人のコミュニケーションに必要な会話や感情表現を演出する役割もあり、特に高齢者では、日常生活において保守すべき中心的な器官の内の一つとして認識されています。
 近年「口の健康」を守るケアの方法や器具は数多く考案され、要介護高齢者の「口の健康」を取り巻く環境は改善の方向に向かっています。しかし、認知症の方には残念ながらこれらの恩恵が、効果的に行き渡っていないのが現実であって、その原因に「認知症への理解の不足」があるようです。
 認知症の「口の健康」を支えるためには、認知症に特化した特別な手技や器具は基本的に必要ではなく、むしろ認知症の方々の個々の特徴を理解することが必要不可欠とされています。
 認知機能の障害のない方や軽度に認知機能の低下が見られる方は、従来どおりの歯磨きができますが、除々に口腔の清掃度合いに”むら”が生じてきます。中等度になると簡単な清掃はできるものの複雑な清掃が困難になり、一部介助が必要でも介助の受け入れは自尊心が障害となり困難を極めるときがあります。
 高度の認知症になると通常の清掃行為が困難になり、不快感を極力軽減するような配慮が必要となります。また、同時に食事に関しても食に対する意欲の低下、摂食・嚥下機能は保持されているが一口の量や、食べる速度が不良となり食べこぼしなども出現してきます。

のみ込みやすさ 調理から

東京都豊島区の特別養護老人ホームにはそしゃくや嚥下(飲み下し)に問題のある人が16人いる。管理栄養士や介護職、看護師らは、管から栄養をとる「胃ろう」にせず、なるべく口から食べてもらう方法を歯科医の助言を受けて検討。姿勢の取り方、料理の盛り付け、介助道具の選び方などに様々な工夫を凝らす。
 軟らかく調理した食事の合間に「かりかり」とスナック菓子をほおばるのは、95歳の女性だ。忘れがちなそしゃくを促しているのだ。誤って気管に食べ物が入る誤嚥を、口に食べ物を多く入れすぎることで起こしやすい人には、食べ物を小分けにしたり、小さいスプーンを使ったりもする。
「口から」の取り組みが介護施設でほろがる一方、在宅高齢者への支援がほとんどないのが実情だ。歯科医や歯科衛生士、管理栄養士、ケアマネージャーらが、口から食べるのが難しい在宅高齢者を早めに見つけ、対応する活動を展開している。「今は家族に【食】に対する意識やこだわりがないと、食べられなくなったらすぐ胃をうに、となってしまう。在宅のお年寄りを支える地域のネットワークを作りたい。」
                 読売新聞 2010.6.25

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