記事一覧

家庭用バイトブロック(開口保定器)の機械的性質からみた有効性と安全性

要旨:市販されている家庭用バイトブロックの安全性や有効性について、具体的な検討がされていない。そこで本研究は、市販されている家庭用バイトブロック(5種類)の破断荷量、破壊状態、咬んだときの表面の硬さと変位量を評価し、比較した。対象のバイトブロックの材質はポリサルフォン、ナイロン、ポリウレタンスポンジ、ウレタンゴム、シリコンであった。破断荷量および破壊状態の評価は、コバルトクロム合金製実験用治具(歯式:上下顎左側2~6)を作製し、万能試験機に装着し、圧縮試験を行った。
    試験回数各バイトブロックを5個用意し、計5回のデータを得た。破断荷量の平均値は、すべてのバイトブロックにおいて200kgfを上回り、実験用治具が咬合接触しても完全離断することはなかった。破断荷重後のバイトブロックの外形は、ポリサルフォンとナイロンは亀裂が入り、元の外形をとどめなかった。ポリウレタンスポンジとウレタンゴムは咬合痕を認めるものの元の外形に近い状態まで復した。咬んだときに表面が最も硬いのはポリサルフォンで、次がナイロン、ウレタンゴム、ポリウレタンスポンジ、シリコンの順であった。
    今回の実験対象となったバイトブロックは、医療や介護の現場で使う際に完全離断となる危険性が低く、特にウレタンゴム、ポリウレタンスポンジ、シリコンは、歯の損傷の危険性も低いことが示唆された。

 諸言:市販されており、個人で購入および使用が可能なバイトブロック(家庭用バイトブロック)は、歯科医療や介護の現場において、障害者や要介護高齢者などの開口保持困難な者の対しての介助歯磨き、検診、そして歯科治療の際に使われる。特に発達レベルの低い障害児・者は、介助歯磨き時に静止して開口を保持しておくことが困難なので、バイトブロックは不可欠である。しかしながら、重度心身障害児における介助歯磨き時のバイトブロックの噛み切りの報告があり、噛み切られない硬さが必要である。家庭用バイトブロックと異なるが、全身麻酔時に使用するバイトブロックの内筒が気道異物となり、呼吸状態が悪化した報告もあり、バイトブロックの破損は窒息を起こす危険性もある。
    また臨床的に金属性の開口器により臼歯部の歯の破折も経験し、咬む部分の表面の軟らかさが要求される。しかし軟らかい素材であると、咬んだときに開口量を保持できない。ヒトの歯を損傷させない程度の軟らかさ、いわゆる咬んだときの表面軟らかさを必要とする一方で、咬合力で破損および変形しない硬さと強さが必要である。現在、家庭での介助歯磨きのためのバイトブロックが市販されているが、バイトブロックが破損される荷重(破断荷重)や咬んだときの外表面の軟らかさについては明らかにされていない。またヒトの咬合力によるバイトブロックの変形量についても検討がなされていない。

 考察:今回の調査対象となった家庭用バイトブロックにおいてEが最も低い破断荷重で平均244.8kgfであった。CとDの破断荷量は、ヒトの最大咬合力の2倍以上、AとBは4倍以上であり、いずれもヒトの最大咬合力以上であることから、ヒトが破断させる危険性が低いことが示唆された。万が一強い咬合力が加えられ、上下の臼歯が咬合接触したとしても、今回の調査多少となった家庭用バイトブロックは離断しないものと思われる。つまりバイトブロックが離断し、誤飲・誤嚥による窒息の危険性は低いと判断された。バイトブロック表面の硬さは、歯の損傷に影響を与える。バイトブロック表面が硬い場合、咬合力が咬頭の一部や、一歯に力が加わり、歯の破損や脱臼の危険性があると考える。
    今回使用したすべての家庭用バイトブロックは購入直後のものであり、経時的な劣化による影響は明らかとなっていない。

過去ログ