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不正咬合の予防にむけてご近所のお医者さん

私は中学校の学校歯科医を務めています。最近の学校健診では、何らかの歯列や咬合(こうごう)の乱れのある子どもは全体の60~70%にのぼり、治療勧告を行う子どももかなりの数に上ります。

 特に気になるのが、上顎(うわあご)が飛び出している上顎前突。おそ松くんのイヤミや、リス、ハムスターのような歯です。ものを飲み込む際、舌が上の前歯を押し、口は開けぎみ、猫背、うつぶせ寝といった習慣が連鎖していますが、元は舌の位置が上顎の口蓋(こうがい)部についていないことと口唇(こうしん)が十分に閉鎖できていないことから起こるものです。乳児期に母乳をうまく飲む、吸啜(きゅうてつ)、嚥下(えんげ)(のみ込み)のサイクルがうまくできていないことと、幼児期に前歯で捕食するトレーニングができていないことに起因しているように考えています。リンゴなどを前歯を合わせて毛抜きのようにかんでいく動きは口唇や舌の協同作業として重要なものです。これは前歯が開いている開咬という状態の予防としても効果的です。

 トレーニングとして取り入れたいのが、福岡の内科医今井一彰先生考案の「あいうべ体操」。あー、いー、うー、べーと1ストロークを4秒ずつくらい、毎食後10回で1日30回ぐらい行えば、舌はだんだん上顎にくっつくようになってきます。追加で上顎の固いところと喉(のど)の方の柔らかいところの境目を舌でなめる練習や、上顎に舌を付けて離すときにポッと音を出すポッピングという運動も併用されると効果的です。

 更に1口30~50回のそしゃく回数は、消化を助け、顎に刺激が加わり、顎骨の成長を促し。さらに嚥下の回数が増えることもあり、舌のトレーニングを補助することにもつながります。

 問題がある状態を正常な成長発育に戻していくことは大変重要です。早い時期に適切なトレーニングを行うことで、正常な機能と形態の範囲に戻すことができます。変形が著しい場合や成長後期、成人になれば、やはり矯正治療等の処置が必要になってきます。

 正常な機能と健康な成長発育のため、生活習慣や態癖を見直していかれてはいかがでしょうか。

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