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人類は昔から歯周病になやまされていた?

スペイン古生代人類学カタロニア研究センターのマリーナ・ロザノ氏
らの研究が10月16日、米科学雑誌PLOS ONEにオンライン掲載、公表さ
れた。論文タイトルは「Toothpicking and Periodontal Disease in
a Neanderthal Specimen from Cova Forada Site (Valencia, Spain)」
直訳すると 「スペイン、バレンシア地方コーバ フォラーダで収集さ
れたネアンデルタール人の標本に認められた歯周病と楊枝の使用」と
なる。ネアンデルタール人は約2万年前までヨーロッパ地方を中心に
生息していたヒト属であるが、最近の研究では現生人類の直系の先祖
ではないとされている。ロザノ氏らは採集されたネアンデルタール人
の上顎骨と小臼歯、臼歯について、肉眼、SEM(走査型電子顕微鏡)、
X線を用いた検討を加えたところ、興味深い知見が得られたとしている。
歯には非常に強い摩耗が認められ、咬頭、切縁のエナメル質はほとん
ど喪失し、象牙質が露出していた。砂や植物繊維を多く混入した食事
が原因であろう。
上顎骨及び、歯のX線、SEM所見からはう蝕による脱灰、根尖病巣など
は観察されなかった、つまり虫歯はなかった。しかしながら、歯槽骨
の脱灰と粗鬆化が認められ、歯周病に罹患していたことが明らかにな
った。また、すべての歯の隣接面に頬舌方向にわたり、人為的につけ
られた細い溝が存在した。これは彼らが楊子またはこれに類する道具
を常用していたことを示している。口腔にたまった食片の除去、また、
時には歯周病による疼痛の緩和に使用していたと推測される。
論文の内容から、2万年以上前から人類は歯周病に悩まされていたこ
とになる。まさかとは思うが、歯周病はネアンデルタール人の衰退
の一因になったかもしれない。

原著論文ははこちら
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.007
6852;jsessionid=2491494EC61F070E6D4A7277ADE51A49

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