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肺炎での入院が激減 経営面でもメリット 「暮らしコンパス」歯科医の訪問食事指導

歯科医師の往診を依頼してから、特別養護老人ホーム「フレンズホーム」(東京都世田谷区)では誤嚥(ごえん)性肺炎で入院する人が大幅に減った。

 高齢者が普通のかたさの食事を取っていたころは年間30~40人が入院していた。8年前、やわらかい食事を導入したことで、年約20人に減少。昨年から日本歯科大の診察を受けて以後、今年4月から10月の間に入院した人は1人になった。

 施設の経営面でのメリットも大きい。入所者が肺炎で施設から病院に入院すると、ベッドが空き施設の収入は減少する。空きベッドが少なければ経営は安定する。

 さらに、歯科医師の指示を受けて施設スタッフが高齢者の口の中を手入れし、食事を管理すると、介護保険から施設に報酬が支払われる。

医療費抑制に効果 栄養優先を提唱 「暮らしコンパス」歯科医の訪問食事指導

日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニック院長の菊谷武(きくたに・たけし)教授の話 高齢者はある時期から食後、うがいをすると、米粒や野菜かすが出るようになる。「入れ歯が合わない」「あごがやせた」と訴えられるが、舌と唇の筋力や脳の機能が衰え、かすがあるのを分からなくなるのが原因だ。

 こういう段階の人が普通の食事を無理に食べようとすると、窒息するか、のどを通らず栄養が不足する。口の感覚が落ちた人は、食べるときの姿勢や食べ物のやわらかさを調整し、栄養を取ることを優先する新しい考え方を提唱している。

 しっかり食べられれば、免疫力が高まり、病気になりにくくなる。歯科医師が訪問診療し、施設の管理栄養士らと協力して栄養指導ができれば、医療費の抑制にも効果があることをデータで示したい。過当競争が問題となっている歯科医師の職場も広がる。

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