記事一覧

頭頸部の身体診察 その2――口腔・喉頭の診察

口腔・咽頭の診察
 口腔の観察では、口腔粘膜、口蓋扁桃、口蓋垂、咽頭後壁の順に診察を進めます。

(1)口腔粘膜
 口腔粘膜の観察では、粘膜の湿潤の程度と粘膜上に現れる色素沈着などの異常所見を探すように観察します。

① 体液量減少
 身体所見上、最も体液量減少と相関するとされているのが、舌の乾燥、溝状舌(図1)、口腔粘膜の乾燥です1)。口腔粘膜の乾燥を評価する際は、舌圧子を頬粘膜に当てたときに、舌圧子が貼りつくかどうかでも評価できます(図2)。


図1 体液量減少による溝状舌


図2 口腔内の観察
体液量減少が疑われる患者さん:舌圧子が頬粘膜に貼りついている。

② Koplik斑
 麻疹に疾患特異的な所見とされ、紅斑を背景として頬粘膜に白い、砂状の斑状構造物として観察されます(図3)。


図3 Koplik斑
大船中央病院 須藤博先生のご厚意による。

 Koplik斑は麻疹ウイルスに感染してからおよそ10~14日後、皮疹が出現する約2日前に出現します2)。麻疹は発熱、咳嗽などの前駆症状期は一般的な急性上気道炎との鑑別が難しく、Koplik斑は麻疹の早期診断のきっかけとなるため、流行している場合は基本的な感染対策を行ったうえで、ぜひ確認しておきたい所見です。

(2)口蓋扁桃
 口蓋扁桃の観察では、扁桃腫大の程度、発赤の有無、滲出液や白苔の付着などを確認します。急性扁桃炎などにより口蓋扁桃が腫大している場合は、Mackenzie分類を使って腫大の程度を分類します(図4)。


図4 Mackenzie分類

(3)口蓋垂
 口蓋垂を観察する際は、口蓋垂が正中にあるかどうか、左右どちらかに偏位していないかどうかを確認します。

 特に咽頭痛を訴える患者さんで口蓋垂の偏位が観察されるときは、扁桃周囲膿瘍である可能性があります。扁桃周囲膿瘍ではhot potato voiceと呼ばれる、熱いジャガイモを口に含んで喋っているような含み声が特徴的です。

(4)咽頭後壁
 咽頭後壁では、後鼻漏の有無やリンパ濾胞の有無を確認します。

 急性上気道炎では咽頭後壁に赤色のリンパ濾胞を認めることがあり、特にインフルエンザウイルスによる感染では、濾胞の境界が明瞭で、イクラのような外観を呈することがあります(画像は文献3を参照)。

歯科衛生士不足に歯止め 山梨県歯科医師会

山梨県歯科医師会の吉田英二会長は11日、歯科衛生士の不足に対応するため、県歯科衛生専門学校の学生への修学資金貸付制度を設けたことに、「口腔の健康づくりを支える仕事に興味を持つ人が増えてほしい」と切り出した。

 貸与額は年額43万2千円。県内医療機関に5年間勤務するなどの条件で返還を免除する。歯の健康に対するニーズが高まり、要介護者への訪問口腔ケアも多いとして、「歯科衛生士の役割は広がっている。チーム医療を行う上でも不可欠な専門職だ」と強調した。

 続けて「仕事内容を詳しく知らない県民も多い。啓発イベントを通じてPRしたい」とも。人材不足に歯止めをかけるため力を尽くす構え。

「歯生え薬」実用化目指す 京大ベンチャー、来夏治験

歯を生やす「歯生え薬」の実用化に、京都大発のベンチャー「トレジェムバイオファーマ」(京都市)などのチームが取り組んでいる。2024年7月ごろから健康な成人で薬の安全性などを確かめる臨床試験(治験)を始め、30年ごろの実用化を目指す。チームは「世界初の試み」としている。

 チームは、歯の成長を抑制するタンパク質「USAG―1」の働きをなくす抗体薬を開発。人には乳歯、永久歯とは別に、新たな歯になり得る「芽」のようなものがあるが、通常は生えずになくなる。薬はこの芽に働きかけ、成長を促す。

 18年、歯の数が少ないマウスに薬を投与し、歯を生やすことに成功した。人と同様、乳歯と永久歯があるフェレットでは永久歯の内側から新たな歯が生えた。

 25年からは生まれつき永久歯の数が少ない「先天性無歯症」の2~6歳の子どもを対象とした治験を始める予定。歯の芽の成長を狙い、静脈注射で薬を1度投与する。

 虫歯などで歯を失った成人の治療も将来的には視野に入れている。同社創業メンバーで北野病院(大阪市)の高橋克(たかはし・かつ)歯科口腔(こうくう)外科主任部長は「子どもの場合、歯が生えないと顎の骨の発達などにも影響する。歯生え薬で悩みに応えたい」と話した。

口腔がん術後放射線治療の開始延長、OS不良と関連

カナダの8施設で手術および補助放射線療法を受けた口腔がん患者1368例(診断時の年齢中央値61歳、男性65%)を対象に、口腔がんの治療遅延と全生存率(OS)との関連を多施設コホート研究で検討。手術から術後放射線治療開始までの間隔(S-PORT)と放射線治療間の間隔(RTI)を評価し、それぞれ42日超、46日超を治療間隔延長と定義した。

 追跡期間中央値34カ月の結果、3年OSは68%だった。単変量解析では、S-PORT延長の患者で3年OSがより不良だったが(66% vs. 77%、オッズ比1.75、95%CI 1.27-2.42)、RTI延長はOSと関連がなかった(67% vs. 69%、同1.06、95%CI 0.81-1.38)。OSと関連を認めた他の因子は、年齢、チャールソン併存疾患指数、飲酒状況、T分類、N分類、および施設だった。多変量モデルでも、S-PORT延長はOSと独立した関連が見られた(ハザード比1.39、95%CI 1.07-1.80)。

道民公開講座 -320人が来場

8月19日(土)午前11時より、札幌パークホテルにおいて、本会主催による道民公開講座が「スポーツと食で健康を育む」をテーマに「田中賢介氏トークショー」を開催した。

 田中賢介氏(学校法人田中学園 田中学園立命館慶祥小学校 理事長・北海道日本ハムファイターズスペシャルアドバイザー)をゲストに迎え、高橋英登氏(日本歯科医師会 会長)が座長となり、講演から対談形式によるトークへと展開され、例年には見られない子ども連れの姿もあり、盛況を呈していた。

 田中氏は食と身体の関係についてストイックなまでに食に向き合ってきた歴史を織り交ぜながら「食は身体と健康の基本であるため、年齢に応じた食事を習慣づけることが大切である」と説き、参加者は大きく頷いていた。

重度の歯周病の歯を残すことは脳を委縮させる可能性がある!

[研究のポイント]
(1)55歳以上の地域住民を対象としたコホート研究のデータを用いて、歯数や歯周病と海馬の萎縮との関連を解析した
(2)軽度の歯周病では歯の数が多いほど左海馬の萎縮は遅くなるのに対し、重度の歯周病では歯の数が多いほど左海馬の萎縮が速いことを明らかにした
(3) 重度の歯周病の歯を残すことは、海馬の萎縮を速める可能性があることを示唆している

https://n.neurology.org/content/early/2023/07/05/WNL.0000000000207579.long

診療報酬改定の施行時期 6月に後ろ倒しを了承 ―中医協総会

 中医協総会が8月2日に開催され、令和6年度以降の診療報酬改定の施行時期を従来の4月から6月に後ろ倒しする厚労省案を了承した。薬価は、これまでどおり4月に改定する。

 デジタル時代に対応した診療報酬や改定作業の効率化や費用の低廉化を目指す診療報酬改定DXの推進に向けて、共通のマスタ、算定モジュールの開発などを国主導で行い、それを各ベンダーに提供し、準備期間を延ばすことで、集中的な業務負荷を平準化する観点から施行時期が後ろ倒しとなる。
【歯科通信】

ヌーカラで成人の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加を一変申請

 グラクソ・スミスクライン(GSK)は9月4日、ヒト化抗IL-5モノクローナル抗体・ヌーカラ(一般名:メポリズマブ)について、成人の既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加を一変申請したと発表した。承認された場合、同剤はこの追加適応に対し、日本で初めての抗IL-5生物学的製剤となる可能性がある。

 今回の申請は、日本人、中国人、ロシア人の既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎/好酸球性副鼻腔炎の患者を対象として、52週にわたり同剤の有効性と安全性を検討した主要な第3相臨床試験(MERIT試験)のデータと、400人以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象に同剤とプラセボの効果を比較検討した国際共同第3相試験(SYNAPSE試験)のデータに基づく。

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎/好酸球性副鼻腔炎は世界の人口の2~4%が罹患しているとされる。日本の慢性副鼻腔炎患者は200万人、このうち約20万人が鼻茸手術の対象となるような患者と推定されている。

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は鼻粘膜の慢性炎症により引き起こされ、Type2炎症の結果、IL-5のレベルが上昇し、鼻茸として知られる副鼻腔や鼻腔に発生する軟部組織の増殖を引き起こすことがある。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者には鼻閉塞、嗅覚の消失、顔面痛、睡眠障害、鼻汁などの症状が現れる。また、重症の場合には手術が適応となる場合があるが、鼻茸は再発する傾向が強く、手術を繰り返すことが多くある。

 なお、ヌーカラは日本で、▽6歳以上の小児および成人の気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)、▽成人の既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症――で承認されている。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎が承認されれば3つ目の適応となる。

過去ログ