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運動能力と歯周病

歯周病とはご存じの通り、歯牙欠損の原因第1位です。
そして歯牙欠損をすると噛み合わせが悪くなります。

一流のアスリート達は歯に対しての意識が非常に高く
オリンピック選手の男子53.3%、女子62.7%にむし歯がありません。
顎関節のすぐそばには体の平衡感覚を司る三半規管があり、
悪い噛み合わせによる噛み癖や違和感は重心移動に悪影響を与えます。
つまり、身体のバランス感覚に影響が出てくるということです。
また、筋力や姿勢にも影響し骨格や筋肉の歪みに繋がります。
歯を食いしばる、噛むという行為は瞬発力にも大きく関わっており、
背骨、首の骨が頭部に完全に固定されていない人間の身体において
「噛み合わせ」が3番目の支えとなり、筋力と運動能力に非常に
関係していることが分かっています。

中学生を対象に、咬合接触面積と背筋力・握力・50メートル走との
関係について調査した結果は、筋力・握力・50メートル走共に
咬合面積が大きいほど良い結果が出ており、
噛み合わせが良いと運動能力が高い傾向にあることが分かります。

義歯やインプラント等により欠損を補う、隙間を無くして
噛み心地を安定させるマウスピースを使用するといった方法により
咬合力を向上することで運動能力をアップさせられると考えられます。
高齢者の方にとって運動能力の低下は転倒のリスクに繋がります。
歯周病予防・治療により欠損を防ぐ、義歯を使用するなど
しっかりとした噛み合わせを確保ことにより、生活するうえで必要な
起き上がる、歩くといった動作をスムーズに行うことができ、
行動範囲も広がることが期待できます。

現場のQ:歯磨きは一日何回?

いったい一日何回歯磨きすればいいの?
と聞かれることがあります。
理想を言えば最低5回とお答えしています。
大リーガーのイチロー選手も5回するそうです。
朝起きてすぐ、朝・昼・夕食後、寝る前の5回です。
少し忙しいですが、磨くのにはやはり理由があります。
口腔内で細菌が一番繁殖するのは、唾液分泌が少なくなる睡眠中です。
そのため、朝起きた時は口腔乾燥と共に細菌が増えた状態となります。
歯磨きをしていただくことにより誤嚥性肺炎の予防に繋がりますし、
食事前の口腔ケアにより、唾液分泌の促進(摂食嚥下が行いやすい)、
味覚感覚の向上等に繋がります。
そして毎食後の口腔ケアにより口腔内を衛生的に保つことが期待されます。
睡眠中は口腔乾燥により細菌数が増えますので、
睡眠前に細菌を減らしておくことで、むし歯予防、歯周病予防
誤嚥性肺炎(不顕性誤嚥)の予防に繋がるため
丁寧な口腔ケアをすることをお勧めしています。

歯周病は隠れた糖尿病のサイン

歯科医から2型糖尿病の疑いがあると言われたら驚くかもしれない。しかし、歯周病は隠れた糖尿病の徴候である可能性が、新しい研究で示された。

 この研究によると、重度な歯周病をもつ人の5人に1人は2型糖尿病をもち、しかも患者はそのことに気づいていなかった。この知見は、歯科クリニックが糖尿病前症や2型糖尿病のスクリーニングに適している可能性を示唆している。

 「口腔内の健康状態が悪化すること、なかでも歯周病の存在は糖尿病などの疾患の徴候になりうる。糖尿病前症や2型糖尿病を早期に発見し治療することは、その後の合併症予防において重要な課題だ」と、研究著者であるオランダAcademic Center Dentistry Amsterdam(ACTA)歯周病学のWijnand Teeuw氏は述べている。

 世界中で増加が著しい糖尿病患者は、2010年には世界で2億8500万人と推定され、2030年には5億5200万人に達するとみられている。しかし、糖尿病患者の3人に1人は自分が糖尿病であることに気づいていないとされる。

 米国糖尿病協会(ADA)によると、糖尿病を治療せずに放置すると、視力障害や深刻な腎臓病、心臓障害、感染症などさまざまな合併症を引き起こす。同氏は、歯周病は歯茎に炎症を起こし、歯を支える骨をむしばむ感染症で、糖尿病の合併症と考えられることも多いと指摘している。

 今回の研究は、アムステルダムの歯科医院に来院した313人を対象としたもの。参加者のうち126人が軽度~中等度の歯周病を、78人が重度の歯周病をもち、残りの109人には歯周病は認められなかった。参加者全員のHbA1c値を測定し、糖尿病前症や2型糖尿病の有無を判定した。

 その結果、2型糖尿病の診断歴がない人では、重度の歯周病をもつ人の47%が糖尿病前症で、18.1%が2型糖尿病であることがわかった。軽度~中等度の歯周病をもつ人では46%が糖尿病前症で、9.9%が2型糖尿病であったほか、歯周病をもたない人でも37%が糖尿病前症、8.5%が2型糖尿病であることが判明した。

 歯周病専門医でADAのスポークスパーソンを務めるSally Cram氏は、自身の臨床経験でも多くの患者が糖尿病の存在に気づいていないことを実感しているとしつつ、「治療しても歯周病が治らない患者には糖尿病の検査を勧めるべきだ」と述べている。同氏によると、血糖コントロールが不良な糖尿病患者でも歯周病を治療すると糖尿病も改善するケースがみられるという。

 米モンテフィオーレ医療センター(ニューヨーク市)臨床糖尿病センター長のJoel Zonszein氏は、感染症によく罹ったり、治るのに時間がかかるのは糖尿病の重要な徴候であるとし、「糖尿病と歯周病の関係は両方向で、どちらか一方が改善すれば、もう一方も改善する」と説明している。なお、同氏は、この研究は因果関係を証明するものではないと付け加えている。

 また、Cram氏は、歯科トラブルのほとんどは歯周病であるが、歯を1日2回磨き、フロスを1回使い、定期的に歯科医の診察を受ければ予防できると、歯周病予防の大切さを強調している。

 なお、歯茎からの出血や歯茎の退縮、知覚過敏、息がくさい、変な味がするといった症状がみられたら歯周病のサインであるという。この研究は、「BMJ Open Diabetes Research & Care」1月号に掲載された。

肥満と歯周病

肥満防止の食べ方としてよく言われるのが「よく噛む」です。
沢山噛むことにより、満腹中枢を刺激し脳から「満腹ですよ」という
シグナルが出され、結果食べる量をセーブするというのが根拠です。
では、肥満の方のお口の中はどうでしょう。

肥満になると内臓脂肪に「TNF-α(腫瘍壊死因子)」
という物質が沢山発現します。白血球の1つ「単球(マクロファージ)」
からも分泌され、炎症反応を活発化させるのに重要な役割を果たしています。
つまり、肥満の人は常に体内が炎症状態にあるということです。
この状態で何らかの感染症に感染すると更に全身の炎症がひどくなり
感染症の1つである歯周病もより悪化するということになります。
更に、歯周病菌の死骸が「内毒素」と言われる多量の毒素をまき散らします。
すると脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を進め、
血液中の糖分の取り込みを押さえインスリンの働きを邪魔します。
肥満も歯周病もTNF-αのの分泌が活発になり血糖値のコントルールが
悪化し結果的に糖尿病を発症させる可能性があると考えられます。

BMI値の高い肥満の人は普通体重者に比べ歯周病にかかるリスクは
1.55倍高いことが認められました。
有名某タレントさんが「カレーは飲み物」だとおっしゃっていました。
そのタレントさんは確かにかなりのぽっちゃりさんだとお見受けします。
しっかり噛んでお食事をしないと肥満のリスクが高くなる。
肥満になると歯周病のリスクが高くなる。歯周病になるとしっかり噛むことが
難しくなってくる。すると噛まずに食事をし肥満になるリスクが上がる。
まさに負のスパイラルです。
せっかくの美味しいお食事です。しっかり噛んでさらに味わいたいものです。

電動歯ブラシについて

電動歯ブラシはいいのか?悪いのか?といった質問を良く受けます。
電動歯ブラシが悪いとは思わないので、手動でも電動でも
汚れにしっかりと毛先が当たっていないと磨き残しに繋がります。

案外多いのが電動歯ブラシを更に動かして使う方や押し付けて使って
しまう方などで、すると歯や歯肉に傷等つけてしまう原因になるので
動かさず、優しく当てて使うといった事に注意するようにお使い頂くと
効果的だと思います。
自立の高い高齢者の方で、小刻みなブラッシングが難しいと
おっしゃる方の中には、電動ブラシの方が効果的かなと感じる方も
いらっしゃいます。
使い方を間違っていては効果も望めませんので、
「使用上の注意をお守りください」とお話をしています。

震災で歯が減るリスク増 高齢者、口の衛生悪化

 東日本大震災で被災した高齢者の調査で、経済状況が悪化したり家屋が被害を受けたりした人は、歯の本数が減る危険性の高いことが分かったと東北大などのチームが28日、明らかにした。

 チームによると、災害の前後で歯の本数を調べた研究は世界的にも例がないという。避難所で水や物資が不足し口の衛生状態が悪化したほか、避難生活のストレスなどが背景にあるとみている。

 高齢者の歯の減少は、心身の健康状態に悪影響を与えるとされる。東北大の松山祐輔(まつやま・ゆうすけ)歯科医師は「被災者は歯を失う可能性が高いことがはっきり分かった。避難所でも歯磨きができる環境の整備のほか、家屋の早期再建や、医療費の免除といった継続的な支援が必要だ」と話している。

 チームは、宮城県岩沼市の65歳以上の高齢者を対象に、同じ人を震災前の2010年と震災後の13年に調査。約2300人分を分析したところ、震災後に歯の本数が少なくなっていたのは8・2%だった。

 震災で経済状況が「苦しい」と答えた人のうち、歯が減ったのは12・4%だったが、「変化なし」や「良い」では計7・4%だった。

 家屋が全壊した人で歯が減ったのは15・5%で、被害がなかった人の7・9%よりも、7・6ポイント多かった。

舌と口唇のお話

口唇は体の表面に現れていますが、皮膚ではなく粘膜の一部です。
口唇には非常に薄い角質しかなく、角質層を持つ皮膚に比べて
水分の保持力や外部からの刺激に対するバリア力が低くなります。
そのため、乾燥しやすかったり口唇炎、口角炎、口内炎等を
発症しやすくなります。口唇の炎症には下記のようなものがあります。
口唇の口内炎
1.ヘルペス性口内炎・・小さな水泡が沢山でき激しい痛みが特徴
2.アフタ性口内炎・・・最も多い口内炎で白い円形で痛みを伴う
3. カタル性口内炎・・・口腔内の熱感、粘性唾液、口臭が特徴
3.アレルギー性口内炎・食物、金属、薬品、化粧品等が原因、
            死に至ることも
4.外傷による口内炎・・けがによる炎症
原因として1.ヘルペス性はウイルス感染、3.カタル性は火傷や
口腔内不衛生等が考えられます。
2.アフタ性については一般的でよくみられる口内炎ですが栄養の偏りや
疲れや免疫力に低下などが考えられますが原因不明のものもあります。

同じく舌にも口内炎ができたり、他の病気になったりします。
舌の病気には下記のようなものがあります。
1.舌痛症・・・・・外見的に異常がない、チクチクした痛みを伴う
2.舌のできもの・・粘液膿疱、唾石症、乳頭腫など
3.溝状舌・・・・・舌の表面に深い溝がある、特に治療の必要なし
4.白板症又は紅板症・舌に白い斑点や赤い斑点がある
5.黒毛舌・・・・・舌に黒もしくは褐色の毛が生える
6.味覚障害・・・・亜鉛欠乏、神経要害、糖尿病、貧血、肝機能障害
          タバコ、外傷、口内炎、乾燥、ストレス、薬剤等

原因として1.舌痛症はストレスや唾液の分泌低下、
5.黒毛舌は糸状乳頭の過形成と表面の角化などと言われます。

舌についても口唇についても症状が長引くようであれば歯科受診にあわせ、
日頃からストレスとうまく付き合い、生活習慣等を見直すといったことも
大切になってくるのではないかと思います。

▼唇の口内炎について(参考)
https://k.d.combzmail.jp/t/sw0d/g0n2mer05s2hpjhrnp9cM

歯科医長の解雇無効 国立成育医療研究センター

国立成育医療研究センター(東京都)で歯科医長を務めていた男性が、部下の指導や医療に問題があるとして解雇されたのは不当だとして起こした訴訟の判決で、東京地裁は23日、解雇を無効と判断し、未払い賃金や賞与の支払いを命じた。

 吉田徹(よしだ・とおる)裁判長は、病院側が主張した解雇理由について「多くは事実自体が認められない」と指摘。別の医師から指示されたものと異なる薬を患者に処方したことは事実と認めた上で「解雇理由にはならない」と述べた。

 判決によると、男性は2013年11月、歯科医長として5年の任期付きで採用されたが、「適格性を欠く」などとして14年4月末に解雇された。

 国立成育医療研究センターは「詳細が分からないため、コメントを差し控える」としている。

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