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かかりつけ医機能の評価をめぐり 支払側と診療側で意見が対立

10月17日の中央社会保険医療協議会総会で、厚生労働省が論点に挙げた「かかりつけ医機能に係る評価」をめぐり、支払側と診療側で意見が対立した。支払側は見直しを主張し、診療側からは制度の効果が現れているとして評価の継続と強化を求めている。

社会的共通資本を振り返る~AIと人間界の調和~

「社会的共通資本」とは、経済学者・宇沢弘文氏が2000年に提唱した概念であり、「すべての人々が豊かな生活を送り、人間的で魅力ある社会を安定して維持するための社会的装置」を社会全体の共有財産としてとらえるものである。
宇沢は社会の基盤を、(1)自然環境(大気・森林など)、(2)社会資本(道路・交通・上下水道など)、(3)制度資本(教育・医療・司法・金融など)の三つに分類し、特に医療を制度資本の一部と位置づけた。彼は市場原理主義が進む中で、環境破壊や格差拡大、地域社会の崩壊が進む現実に強い危機感を抱き、これらの共通資本を社会全体で守り、適切に管理する必要を訴えた。
現代の医療界においても、競争原理の強まりによる格差拡大や、急速なデジタル化による人間性の喪失が問題となっている。この状況はかつて手塚治虫の「鉄腕アトム」に描かれた、人間とロボットの共存と対立の構図にも重なる。AIが発達する現代において、社会的共通資本の理念を再考し、技術の進歩と人間らしさの調和を実現することが、私たちの社会に求められているのかもしれない。

口腔機能管理の重要性学ぶ  令和7年度社会保険指導者研修会

令和7年度社会保険指導者研修会が10月10日、「ライフコースで異なる口腔機能関連検査の実際~小児および高齢者における有効な検査法~」をテーマに、都内の日本教育会館(一ツ橋ホール)で開催され、全国から地方厚生(支)局および都道府県事務所指導医療官・都道府県国保技術吏員・社会保険審査委員会委員・国民健康保険審査委員会委員・都道府県歯科医師会社会保険指導者・日歯社保委員会委員など約420名が出席した。
研修会では、間隆一郎・厚労省保険局長、高橋英登・日歯会長による挨拶の後、和田康志・厚労省保険局歯科医療管理官が「令和8年度診療報酬改定に向けて~口腔機能管理を中心に~」、大杉和司常務理事が「国民の『健口をまもる』歯科検査項目の実際」の演題でそれぞれ講演した他、特別講演では小林隆太郎・日本歯科医学会会長が、研修では田村文誉・日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科教授、上田貴之・東京歯科大学老年歯科補綴学講座教授が、それぞれの視点から口腔機能管理の重要性について述べた。

国立大学病院の今年度赤字は400億円超 次期改定で11.0%の引き上げを要望

国立大学病院長会議は 10 月3日の記者会見で、国立大学病院の2025年度の損益見込が 400 億円を超える可能性があることを明らかにした。同会議の大鳥精司会長(千葉大学医学部附属病院病院長)は「大学病院が機能不全に陥れば、人材輩出されている医師の派遣等で支えられている地域の医療機関の存続も危ぶまれ、大学病院の経営基盤強化は地域の医療提供体制の維持にとっても死活問題」だとして、2026 年度診療報酬改定での11.0%の引き上げと、厚生労働省および文部科学省双方からの補正予算による財政支援を政府に要請する考えを示した。

歯科医療分野におけるAIの技術革新

政府は人工知能(AI)政策の指針となる「AI基本計画」に国内開発推進を明記する方針を固め、AIの利活用が日常化する社会を目指すと記述した。
デジタル革命の波は我々歯科医療の世界にも押し寄せ、AIの導入によって診療スタイルが大きく変化しようとしている。
歯科医療は予防の重要性が高い分野であり、AIによるリスク予測や早期発見が患者さんの口腔健康管理に大きく貢献する可能性を秘めている。例えば、画像診断はむし歯や歯周病などの診断に必要で、従来は歯科医療の経験や知識による目視判断が主であった。だが近年、AIが画像を解析して異常を自動検索するシステムが歯科においても開発、導入され始めている。特に歯科パノラマX線画像は、多くの患者さんに対して撮影されるため、AIによる支援の有用性は非常に高いと言える。
また、歯科CADシステムとAIの連携も進んでおり、自然な嚙み合わせを実現する被せ物デザインをAIが提案することも可能であり、矯正治療においても一部でAIの活用の試みが始まっている。特にマウスピースの矯正では、AIがすでに治療計画の立案から装置のデザインまでサポートしている。
今後AIがますます発展することで、歯科医師の負担軽減と患者サービスの向上が同時に実現されていくと思われる。

男児の父「非認め責任を」 ウズラ卵死亡訴訟、初弁論

福岡県で昨年2月、市立小1年の男子児童=当時(7)=が給食でウズラの卵を喉に詰まらせ死亡したのは、学校側が窒息の危険性の指導を怠ったのが原因だとして、父親が市に6千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が17日、福岡地裁であり、父親が「非を認めて謝罪し責任を取るのが先決だ」と意見陳述した。

 父親は法廷で「息子は友達思いでみんなから愛される明るい子だった。なぜ死ななければならなかったのか明らかにしたい」と訴えた。閉廷後、市は「司法の判断を仰ぎたい」とし請求棄却を求めるとの見解を示した。

 訴状によると、昨年2月26日午後0時35分ごろ、男児は給食時間中にみそおでんの食材だったウズラの卵を喉に詰まらせた。救急隊が同50分ごろに到着。隊員が卵を取り出したが、その後死亡が確認されたとしている。

 原告側は、校長から担任教諭にウズラの卵の危険性に関し十分な指導がなく、担任から児童への食べ方の注意もなかったほか、救命措置も遅れたと主張している。

在宅で積極的役割担う医療機関、 設定の考え方明示へ

2027 年度に始まる第8次医療計画の中間見直しに向けて、厚生労働省は9月24日、在宅医療で積極的な役割を担う医療機関を各都道府県が設定する際の考え方を検討する方針を省内のワーキンググループに示した。 また、在宅医療の連携拠点などとの役割の明確化も議論する。年度内に取りまとめを行い、指針の見直しに反映させる。 在宅医療で積極的役割を担う医療機関は24時間対応体制で在宅医療を提供するとともに、ほかの医療機関を支援しながら、医療や介護、障害福祉の現場での多職種連携の支援を行う病院や診療所。厚労省によると、在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院が担っているケースが多い。

外国人患者受入れの調査結果を公表 約9割の病院がマニュアル未整備

厚生労働省は9月 19 日、2024 年度の「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果を公表。全国すべての病院を対象とした調査で、約9割の病院が「外国人受入れ体制整備方針」や「外国人対応マニュアル」を整備していないことがわかった。 2024 年の訪日外国人数は過去最高を記録し、今年はさらに上回るペースで推移しているが、医療においては受入れ体制の整備が不十分な実情が浮き彫りとなった。 ■医療コーディネーターの配置はわずか2.6% 調査によれば、2024 年9月の1カ月間で外国人患者受入れ実績があった病院は全体の52.7%。外国人患者数は 10 人以下が44.9%、50 人以下が 75.6%だったが、500人以上受入れている病院も48病院あった(全体の0.2%)。 外国人患者に対する体制整備状況については前述のとおりで、受け入れ体制の「現状把握および課題抽出」すらしていない病院が約8 割、拠点的な医療機関でも6割以上が実施していなかった。 そういった状況であるため、外国人患者受入れ医療コーディネーターを配置している病院も少なく、わずか151病院(2.6%)だった。拠点的な医療機関でも、724病院のうち配置しているのは108病院(14.9%)にとどまった。配置している病院でも、専任者はわずか18病院だった。 一方、多言語化への対応は比較的進んでいる。全国330の2次医療圏のうち、50.0%は医療通訳者を配置。71.5%は電話通訳が利用可能な病院があり、「外国人患者の受入れに資するタブレット端末・スマートフォン端末等」を導入している病院がある2次医療圏は93.9%だった。 ■16.3%の病院が未収金を経験 外国人患者に対する自由診療の診療価格は、9 割以上の病院が診療報酬点数票を活用した倍数計算(1点=10円)で対応している。 ただし、そのうち14.3%は1点あたり10円を超える診療価格を設定。

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