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生活保護、減額の可能性 指標に65歳以上の単身世帯水準追加案

来年度に迎える5年に1度の生活保護費の支給水準見直しに向けた議論が6日、本格化した。厚生労働省は高齢者の単身世帯の生活水準を指標に加える案を提示。長期的に保護費が下がる可能性が出てきた。保護費は抑制傾向が続いており、憲法がうたう「健康で文化的な最低限度の生活」の定義も問われる。

 6日にあった社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の生活保護基準部会。生活保護費の基本となる食費や光熱水費に充てる生活扶助について、厚労省は今回、夫婦と子ども1人のモデル世帯に加え、単身の65歳以上世帯による消費動向も調べ、支給水準を定める際の参考にする考えを示した。その結果を保護世帯全体の水準に反映させるという。

 2007年の見直し議論ではこうしたモデルを参考にし、この時の単身世帯は60歳以上とした。これを5歳引き上げる案だ。厚労省は「生活保護受給世帯の中で65歳以上の単身世帯がもっとも多い」と理由を説明した。高齢者が占める割合は増加傾向にあり、今年2月には46・7%に達した。

 これに対し、基準部会では学者らが「年金給付水準の低下に合わせて生活保護基準も低下する恐れがある」と反発した。年金には、伸び幅を物価の伸びより低く抑える「マクロ経済スライド」との仕組みがある。昨年末の法改正で適用されやすくなった。高齢者の収入が相対的に減れば消費も抑え気味になり、生活扶助も下がるとの懸念だ。

 そもそも生活保護費は近年、抑制が続いている。03年度に初めて0・9%引き下げられ、04年度も0・2%の減。13年度からは3年で独自の物価指数を基に計6・5%減らされた。大幅引き下げをめぐっては29都道府県の約900人が違憲だとして提訴。東京都内で1日にあった集会で、原告の女性(66)は「生活はますます苦しくなるばかり」などと訴えた。

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