記事一覧

口に含んでアレルギー改善 花粉・ダニ、体質変える治療

国民の多くが悩まされているアレルギー性鼻炎。スギ花粉症の患者が原因物質を自分の口に含むことで体質を改善させる新しい治療法が昨年、保険適用された。ダニについての同様の薬も発売。治療は長くかかるが、根治できる可能性がある。今月改訂された診療ガイドラインには治療の詳しい記述が加わった。

 三重県鈴鹿市の高校生の女性(15)は幼稚園のころ、花粉症になった。スギ花粉が飛ぶ3月ごろから、鼻水やくしゃみが頻発。小学生のときには、マスクをしてティッシュペーパーを箱ごと持ち歩き、十分に眠れない夜もあった。

 10歳のとき、母親が新聞記事で、ごく微量のアレルギー原因物質を自分の口に含むことで体質を変える舌下免疫療法を知った。受験勉強のときにきちんと眠れなくなることや、試験当日の症状を考え、臨床研究に参加することにした。

 花粉症の症状を抑える別の薬を飲む回数は年を追うごとに減り、今春は1シーズンで数回に減った。女性は「夜にちゃんと眠れるようになったことが一番うれしい」と話しているという。

 アレルゲン免疫療法は、少ない量のアレルギーの原因物質を体内に入れ、体質を変えていく治療だ。舌下のほか、抽出物を注射する皮下免疫療法があるが、通院する回数が多く、注射による痛みもある。

 舌下免疫療法薬シダトレンが昨年10月に発売された。舌の下に薬液を入れ、2分後に飲み込む。初日は医療機関で飲み、2日目からは自宅で段階的に飲む量を増やす。その後、一定量を毎日飲み続ける。

 保険適用は今のところ12歳以上で、3~5年の治療が必要。血液検査などでアレルギーの原因がスギ花粉と特定された人が治療を受ける。女性の治療を担当してきた「ゆたクリニック」(津市)の湯田厚司院長によると、治療をした人のうち約2割が治り約3割が花粉症の薬の使用が激減。2~3割が症状が以前より楽になっている。ただ1~2割には効果がないという。

 湯田さんは今月、薬の発売後に舌下免疫療法を受けた200人弱の今春の症状を学会誌で報告。今春の津市の花粉飛散は中程度だったが、舌下免疫療法を受けた人は、未治療の人や花粉が飛び出してから別の薬を飲み始めた人たちに比べ、くしゃみや鼻詰まりが軽かったという。

 最近は眠気などの副作用が少なく、効果的な抗ヒスタミン薬なども増えている。免疫療法は即効性を期待できず、ゆたクリニックでは花粉が飛ぶ1~5月の治療開始はしていない。湯田さんは「花粉症の治療法としてよい選択肢が出たというのは違いない。ただ、治療が長期間であることや、誰にでも効果があるというわけではないという点を理解することが大切だ」と話す。

所得低いほど高い喫煙率、歯少なく肥満者多い

世帯の所得が低い人ほど、健康診断を受けない割合や喫煙率が高いなど、健康作りに積極的ではないとする国民健康・栄養調査の結果を厚生労働省が発表した。

 厚労省は、低所得層は健康管理を意識する余裕がないことが背景にあると分析、生活習慣の改善を後押ししていく考えだ。

 調査は、昨年11月に5432世帯を対象に実施。回答のあった3648世帯を、世帯所得別に200万円未満の低所得層、200万円以上600万円未満の中所得層、600万円以上の高所得層の3群に分け、生活習慣を分析した。

 低所得層では健診を未受診の人の割合が男性で42%、女性で40%と、高所得層のそれぞれ16%、30%よりも高かった。習慣的に喫煙する人の割合も男性で35%、女性で15%と、高所得層のそれぞれ29%、5%を上回った。さらに歯が20本未満の人や肥満者の割合も、低所得層は男女ともに高い傾向があった。

過去ログ