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虫歯ある中学生、ピーク時の半分

文部科学省は2014年度の学校保健統計調査の結果(速報値)を発表した。虫歯がある子供の割合は幼稚園から高校まで全ての学校段階で13年度より減少した。中学生は過去最高だった1979年(94.5%)に比べると半分以下の42.4%になった。

 学校種別では、幼稚園38.5%▽小学校52.5%▽高校53.1%。虫歯の割合は70~80年代がピークで、その後は減少傾向に。中学1年(12歳)の虫歯の本数は一人平均1本で30年前の約5分の1。学校歯科医による指導の充実や家庭での歯みがきの習慣づけなどが要因とみられる。

 一方、裸眼視力1.0未満の割合は増加傾向にある。中高生では半数を超え、高校62.9%、中学校53.0%。いずれも過去最高に比べると微減だが、文科省は「スマートフォンやゲーム、パソコンなど近くのものを長時間見ることが影響しているのではないか」とみている。

 中耳炎など耳の病気にかかっている子供の割合は小学校で5.7%、中学校で4.0%でいずれも過去最高。最近は耳あかが詰まっている子供が増えているという。アトピー性皮膚炎は幼稚園で2.4%と過去最低になった。

円滑でなかった医科歯科連携 - 佐藤徹・日本歯科医師会常任理事に聞く◆Vol.1

 医科とは、診療報酬上でも別建ての歯科医療。病院における歯科標榜も2割程度にとどまり、医科からの関心は、比較的低い状況が続いてきた。しかし、患者の高齢化などに伴い、口腔ケアが重視され、チーム医療の検討も進む中で、歯科医療の重要性がクローズアップされている。日本歯科医師会常任理事の佐藤徹氏に、チーム医療の中で果たす歯科医師の役割や展望について聞いた(2015年1月9日にインタビュー。計3回の連載)。


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――歯科医がチーム医療に関わる意義はどこにありますか。

 歯科は、従来、外来中心でしたが、通院できない患者が増えて、在宅医療や高齢者施設への入所など、訪問歯科診療のニーズが高まってきました。虫歯の患者が多くいた時代が終わる中で、歯科が実施するのは、「口腔ケア」と呼ばれる口腔内の維持管理へと変化しています。これは、単なる歯磨きではありません。訪問診療では、歯科診療ユニットは持ち運びが容易でないこともあり、治療メーンというより、口腔管理の一環として、治療を実施するイメージです。

 入院患者も含めて、口腔管理では、現状では看護師が、入院患者に対して、懸命に歯磨きしたり、口腔内を拭いたりしています。看護師は、病院に歯科の専門職がいない中で、自分なりに研修などを受けている人もいますが、専門資格を持つ歯科医師や歯科衛生士と比べれば、当然ですが、目覚ましい効果が出ているわけではありません。医師も口の中を一応確認しますが、舌や咽頭を診ることになり、歯や義歯の状態をしっかり診ることができるわけではありません。

 口腔ケアの重要性は、ある程度認識している人が多く、現場でやらざるを得ませんが、医科から歯科につながることはあまりなく、医療連携は円滑に進んでこなかったと思います。医科と歯科は、診療報酬も別になっているように二元化されてきたのも要因かと思います。


日本歯科医師会常任理事の佐藤徹氏は、従来、医科と歯科の連携がうまくいっていなかった点を指摘した。

――医科と歯科の疾患の関係は、近年明らかになりつつあるのでしょうか。

 血液の癌、消化器癌、頭頸部癌などの癌については、多くのことが分かってきました。抗癌剤や放射線治療によって、口腔粘膜炎を中心として、高頻度に歯科の問題が発生します。口腔内には肛門以上に細菌がいると言われる中、歯周病の問題や、義歯や歯肉の評価は、専門家が適切な管理をしないと良い状態に保たれないと思います。(歯周病を合併しやすい)糖尿病も、医科と歯科の連携が可能な部分です。

 当然ですが、医師や看護師は口腔の専門家でないので、ある意味見逃されてきました。そこに、歯科専門職が入って、診断をして適切な管理を実施し、より良い状態を維持するのが重要です。訪問診療でも病院での診療でも、患者には生活がありますから、(チーム医療の理念として)患者中心の視点で捉えていくことが重要だと思います。病気の治療が発展して、長寿になったのは良いですが、QOLの観点から改めて医療の現場は問われているのかもしれません。その新しい一つの在り方が医科歯科連携ではないかと思います。

――訪問診療は、どれくらいの歯科医療機関が実施しているのですか。

 2011年には、在宅訪問が13.8%で横ばい傾向、施設訪問は12.9%で増加傾向です。多くの歯科医師が、患者や家族、ケアマネジャーなどから求められて始めます。医科関係者からの依頼は、現時点では、あまりない状況です。2010年度の診療報酬改定で、「在宅療養支援歯科診療所」が施設基準として認められたのを契機に、歯科医が外に出でる足がかりができていますが、こちらは5%強です。

 ただ、訪問診療といっても、歯科の診療所はほとんど小規模で、歯科医1人の診療所が8割を占め、歯科衛生士も1人しかいないような診療所も多く、訪問診療を実施しにくい側面は今も続いています。

――訪問診療以外には、どのような方向性があるのですか。

 施設への訪問診療に加え、病院の標榜科の問題もあります。現在、7000以上の一般病院があっても、歯科を標榜しているのは、2割程度です。標榜しなくても、歯科衛生士を配置している場合もありますが、いずれにせよ、歯科医師の診断が必須となります。

 そもそも、歯科の診療報酬点数は、医科と近い内容を実施しても、低い点数となっています。病院の経営の視点からすると、収益が上がらない「不採算部門」と言われていて、やはり病院での位置づけが進まなかったことがあるとみられ、最近5年間で歯科を標榜する病院は、2011年のデータ(編集部注:全病院の26.8%)からあまり増えていないのが実情です。ただ、糖尿病と歯周病の関係などが分かってきている中で、何より患者の幸せにつながる点を、忘れないでほしいと思います。

――病院は、口腔ケアの重要性を考えているのでしょうか。

 従来、病院歯科のメーンは、口腔咽頭の疾患を治療する「口腔外科」でした。現在では、治療実績を上げるための入院患者の口腔ケア管理が求められているのが新たな役割だと思います。

 口腔外科医は、口腔内の疾患についての、「治療の専門家」としての側面が強い場合もあり、なかなか口腔ケアについての理解が進んでこなかった面があります。また、病院における歯科のマンパワーの問題もあります。歯科が1人しかいない病院では、院内の歯科診療室にいて、訪問してくる患者を診ざるを得ず、病棟で何かするのは難しいでしょう。

 歯科医師が2人いたり、歯科衛生士が病棟業務をこなすようなことが可能かもしれませんが、日本歯科医師会は、開業医の団体でしたので、あまり病院歯科の在り方を検討する場がなかったのが事実です。日歯の中で、病院歯科の在り方を検討する場ができ、現在検討を進めています。口腔ケアの重要性を病院の人に理解してもらう途上にあると言えます。

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