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患者さんに話して、笑ってもらうことの意味

口腔ケアチームのリーダーをされている看護師のTさんに、院内を案内してい
ただいたときのこと。二人で病室に向かう途中、Tさんは廊下で患者さんを見か
けると、気さくに話しかけていきます。

「○○さん、調子はどう? お昼はちゃんと食べた?」

 笑顔でスッと患者さんに寄り添っていき、瞬く間に相手の心に入っていく絶妙
な声掛けと動作。患者さんはよく回らない口で、Tさんに向かって何やら一生懸
命に話しています。それに対して、やや大げさなくらいに、「うん、うん」と声
を出しながら頷くTさん。聞き上手な看護師さんに会って、患者さんは一層熱を
込めて話されていました。

 さて、Tさんと共に病室に入りました。すると、患者さんや顔なじみのご家族
を見ると、先ほどの廊下でのシーンのように、周囲に声をかけていきます。しば
らくすると、患者さんの若い頃の恋愛話で盛り上がる病室。トロンとした目だっ
た患者さんが、生き生きとした表情で昔話をされています。

 じつは、Tさんが患者さんに頻繁に話しかけていたのは、しっかりとした目的
があったからでした。

「しゃべる、笑うって、立派なリハビリなんですよ。だから、どんどん話しかけ
て、いっぱい話して笑ってもらうようにしているんです」

 昨年から病棟で摂食機能療法が導入され、「食べられる口をつくる」ことを目
標にした口腔ケアや機能訓練が、本格的に始まったばかり。しかし、「マニュア
ルを作って、決められた時間にやるだけがケアやリハビリではない」とTさんは
いいます。

 日頃何気なく行っている、しゃべる、笑う、噛むことは、口腔周囲筋や上半身
の筋肉をフルに使います。その結果、口腔機能を引き出したり、唾液の分泌をよ
くしたりする効果があるといいます。

「もともと話し好きなのよ」といって照れ臭そうに笑うTさん。しかし、さりげ
ない会話や、患者さんと接する機会を一瞬たりとも無駄にしない、プロフェッシ
ョナルな姿勢を感じました。

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