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歯性感染症が肺の炎症の原因となることがある

敗血症性肺塞栓症は病原体を含む塞栓子が引き起こす稀な血流感染症で、発熱、呼吸困難、胸痛や咳漱などを生じる。原因には注射、カテーテル留置、皮膚軟部組織感染、感染性心内膜炎、血栓性静脈炎、歯性感染症などがある2)3)。敗血症性肺塞栓症の特徴的なCT所見には、30 mm以下の大きさの多発結節、胸膜に隣接した楔状の末梢病変、halo sign、空洞形成、結節中心部への拡張血管の連続(feeding vessel sign)などがある1)3)。

本症例は血液培養で原因菌は同定できなかったが、CT撮影範囲の上端付近で歯周炎(図2)を認めた。歯肉出血の病歴と合わせると、これが感染源と考えられ、抜歯により改善が得られた。撮像して隅々まで確認することで、原因が発見できることもある。

とろみ付き炭酸飲料の「炭酸」に、嚥下改善効果があると判明②

効果検証のため、嚥下内視鏡を挿入した状態でとろみ付き炭酸飲料摂取・状況評価

 研究グループは今回、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸が嚥下に与える効果を検証するため、とろみ付き炭酸飲料と、炭酸を抜いたとろみ付き炭酸飲料摂取時の嚥下動態を比較した。とろみ付き炭酸飲料は、冷却したペットボトル入り炭酸飲料にとろみ剤を添加し、ペットボトルの蓋を閉めて直ちに振り、とろみ剤を混和した後、一晩冷蔵庫で冷却して作製した。比較対象として、炭酸を抜いた同種類の炭酸飲料にも同じ濃度のとろみを付与した(以下、炭酸なしとろみ付き飲料)。

 対象者38人を、先にとろみ付き炭酸飲料を摂取する群と、先に炭酸なしとろみ付き飲料を摂取する群の2群にランダムで割り付け、嚥下内視鏡を挿入した状態で、それぞれの試料を摂取させ、摂取状況を評価した。

 嚥下内視鏡検査(VE)画像より、誤嚥・喉頭侵入を8段階、咽頭残留を5段階で評価した。嚥下反射惹起部位は、VE上で嚥下反射が惹起する直前の食塊先端の位置を5部位に分類し評価した。

とろみ付き炭酸飲料は咽頭残留が減少、嚥下反射も早いタイミングで発生

 その結果、とろみ付き炭酸飲料は炭酸なしとろみ付き飲料と比較して、咽頭残留が減少。また、嚥下反射がより早いタイミングで生じた。

 このことから、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸には嚥下改善効果があることが明らかになった。なお、誤嚥・喉頭侵入は、とろみ付き炭酸飲料と炭酸なしとろみ付き飲料で有意な差は認められなかったとしている。

とろみ付き炭酸飲料が水分で誤嚥する嚥下障害患者の嚥下訓練に有効な可能性

 今回の研究成果により、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸に、嚥下改善効果があることが明らかになった。同知見から、とろみ付き炭酸飲料は、水分で誤嚥する嚥下障害患者の嚥下訓練に有効な可能性があると言える。

とろみ付き炭酸飲料の「炭酸」に、嚥下改善効果があると判明

とろみ付き炭酸飲料中の「炭酸」の効果は不明だった

 東京医科歯科大学は2月1日、誤嚥防止に用いられているとろみ調整食品でとろみを付けた炭酸飲料中の炭酸に、嚥下改善効果があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、中川量晴准教授、吉見佳那子特任助教、齋木章乃大学院生らの研究グループと、国立長寿医療研究センター 老年内科の前田圭介医長との共同研究によるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。

 嚥下障害患者は、加齢やさまざまな疾患により嚥下機能が低下する。水分など粘度の低いものは摂取時に一気に咽頭に流入するため、嚥下反射とのタイミングが合わず、誤嚥が生じやすくなる。そのため、一般的に水分にとろみを付与することにより、粘度を増加させることで誤嚥を防ぐという方法がしばしば用いられる。

 近年、炭酸飲料は水分と比較し少量で嚥下反射を惹起させることが可能であること、さらに炭酸飲料摂取時の方が、嚥下反射惹起時間が短縮することが報告されている。これは、炭酸飲料の発泡性が咽頭粘膜を刺激することで、嚥下運動が促進されるためとされており、炭酸飲料には嚥下改善効果があることがわかっている。

 一方、とろみ付き炭酸飲料の嚥下動態への効果を検証した研究はあるものの、とろみ付き炭酸飲料中の炭酸の効果を検証した研究は報告されていなかった。

後期高齢者の歯科受診は全身疾患による入院発生の予防効果あり!

 2022年12月13日にArchives of Gerontology and Geriatricsに掲載された研究によるもので-山田宏のデンタルマガジン・Evidence Check!-に報告された。

[研究のポイント]
☆北海道に在住する後期高齢者約80万人のうち、ベースライン期間(2016年9月から2017年2月)に医療機関を受診した約75万人を対象者とした。
☆ベースライン期間に入院経験があった者や在宅医療を利用していた者、要介護認定があった者などを除いた432,292名分のレセプトデータを分析に用いた。
☆歯科受診があった者と、歯科受診がなかった者の特性(性別や年齢、医療費自己負担割合、疾患、健康診断受診の有無、地域)を均等にするため、傾向スコアマッチング法を用いた
☆2年間の追跡期間(2017年3月から2019年3月)とした。
☆歯科受診がなかった者に比べて、歯科受診があった者では、肺炎と脳卒中発作、尿路感染症による入院の発生割合が低かった。
☆歯科受診がなかった場合に比べると歯科受診があった場合に、急性期の入院発生は、肺炎で15%、脳卒中発作で5%、尿路感染症で13%の抑制効果が認められた。
https://doi.org/10.1016/j.archger.2022.104876

新型コロナ・オミクロン株 爆発的感染の原因を解明か

オミクロン株に感染した人の唾液の中には、従来株の感染者に比べて、遠くへ長時間飛びやすい状態の新型コロナウイルスが多量に含まれていることを、日本大学などの研究チームが突き止めた。

 新型コロナウイルスのオミクロン株が爆発的に感染拡大する理由は、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)の唾液中の多さにある。日本大学歯学部感染症免疫学講座の今井健一 教授らは、とても小さく唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うセルフリーウイルスが、変異を起こす前の従来株やデルタ株と比べてオミクロン株患者の唾液中に多く排出されていることを世界で初めて発見。エアロゾル感染がこれまでの株以上に広がりやすいことから、改めて歯科診療所での換気の大切さを強調している。


【歯科通信】

日歯会長予備選挙 大久保元会長が高橋氏を支援

元 日本歯科医師会会長の大久保満男 氏が、日歯会長予備選挙に立候補している高橋英登 氏の支援を公言した。大久保氏はあいさつで、高橋氏について「私も国民皆歯科健診に何度か挑もうとしたが、あまりに厚く高い壁で歯も立たなかった。それを見事に大勢の人を引き連れ、先頭に立って、重い扉をこじ開けた。それだけでも先生の功績は大きい」と強調した。
さらに、厳しい状況の中で時代がどのような会長を求めているかが重要とし、「正当な政治力の行使が日歯の会長に求められている」と主張。世界情勢から防衛費が手厚くなっている状況に触れ「厳しい財源の中で医療費をもっと抑えようという動きが出てこない保証はない」と述べ、「防衛は国の安全保障だが、社会保障、医療は人間の安全保障。安全保障として防衛と国民の健康は一体なので、防衛費を増やすために医療費を減らすのは矛盾の極まり。それをしっかり申し上げる政治力が次の会長に求められている」と訴えた。

【歯科通信】

その傷跡、虐待じゃない? 子どもの目、耳、口内、脇...目立たないところに傷「疑って」 法医学の専門家解説

つじつま合わない説明気をつけて

【鹿児島大大学院・林敬人教授】

 法医学は遺体を解剖して死因を究明することが本来の目的だが、近年は虐待を受けた可能性がある子どもを生きた状態で見て、適切な保護につなげるという予防的な観点でも活動している。特に出水市で4歳女児の死亡事案があった2019年ごろから、児童相談所の依頼で診察することが増えた。

 虐待を疑う所見かどうかかは、厚生労働省が作成した「子ども虐待防止の手引き」にある「繰り返す事故」「つじつまの合わない事故」「新旧混在する身体的外傷」「説明のつかない低身長や栄養不良」を参考にしている。

 「つじつまの合わない事故」とは、「子どもが自分で転んでけがした」など加害者の説明が成り立たない場合。虐待と、事故による損傷部位は全く異なる。通常転んでも帽子のつばより上の頭部や目、耳、口内、脇、二の腕、太ももは打たない。虐待する側も「目立たないところに...」との心理が働くため、そうした部位に傷があれば虐待を疑っていく。

 身体的外傷のうち、特徴的なものを挙げる。たばこは直径6~8ミリメートルの丸い痕がつく。ドライヤーから熱風が出た状態で押し当てると波打ったような痕、爪でつかむと三日月のような痕が残る。特徴的な形をしている場合、道具を使っている可能性を疑ってほしい。

 虐待を受けた年数に従い、「胸腺」という免疫に関わる臓器が小さくなることが知られている。免疫能が下がると、通常なら大事に至らないような傷や炎症が死因につながることもある。

 虐待を早期に発見し死亡させないためには、関係機関が連携することが大事だ。

矯正治療トラブル集団提訴 153人、医療法人側に

マウスピースを使った歯の矯正治療をモニターとして宣伝すれば、治療費と同額の報酬を支払う契約を結んだのに、実際は支払われなくなったとして153人が26日、東京都の医療法人社団や代表理事、東京都の会社などに計約1億9700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 原告側代理人の弁護士によると、医療法人社団は歯科医院を都内2カ所と京都、福岡の両市に展開し、1400人以上が勧誘された。治療を放棄され健康被害が出た人もいるとして、告訴も検討している。

 訴状によると2018年4月以降、医療法人社団側はモニターの勧誘を始めた。153人は治療費など計154万~187万円を一括で支払えば、毎月一定額をモニターの報酬として得られ、実質的な負担がないとする契約を結んだ。報酬の一部は支払われたが昨年3月以降は停止。ローン返済が残った人もいた。「確実に破綻することを認識していたのに勧誘を続けた」と主張している。

 弁護士は提訴後、都内で原告らと記者会見し、勧誘には交流サイト(SNS)が利用されたと説明。153人の7割は女性で「女性をターゲットにする詐欺的商法だ」と話した。30代女性は「かみ合わせが合っていなくて食べづらい。借金と健康被害だけが残った」と声を詰まらせながら語った。

 訴えられた東京都中央区の会社の代理人弁護士は「当社が関与、関知しているモニター契約については、責任を持って支払いをしていく」などとコメントした。

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