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歯周病 男性は職業で発症の危険性に差 岡大病院

歯周病は歯を失う原因の第1位。発症の危険性は職業によって差があることを、岡山大病院が5年間の追跡調査で突き止めた。背景には職業柄の不規則な睡眠やストレスがあるようだ。11月8日は「いい歯の日」。研究者は「この結果を、歯と口の健康を考えるきっかけにしてもらえれば」と話す。

 歯周病は、口の中の細菌によって歯茎が炎症を起こし、最後には歯を支える骨が溶けてしまう病気だ。喫煙や歯磨き不足などが発症の危険性を高めることが分かっている。

 岡山大病院予防歯科の入江浩一郎講師らは、2001年4月から02年3月の間に名古屋市で歯科検診を受けた人で、その時点で(1)歯周病がない(2)歯が20本以上ある(3)職に就いている――という条件を満たす成人3390人を対象に、約5年後の状況を調べた。すると、男性の32%、女性の24%が歯周病になっていた。

 このデータを職業別に解析し、これまでの研究で歯の病変が少ないと報告されている「専門的・技術的」な職の人を基準として比較。その結果、男性では生産・労務、販売、運輸・通信の3分野で働く人が2・39~2・74倍、歯周病になりやすいことが分かった。女性では、職業別の差は出なかった。

 入江さんは「歯周病リスクが高い職種では、定期的な歯科検診が重要でしょう」と話す。女性は職業にかかわらず、口の衛生に関心が高いため差が出なかったとみている。

 成果は10月26日、日本疫学会の英文誌「ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」電子版に掲載された。

歯周病原因菌、食道がんと関連 熊本大

歯周病の原因菌の一つ「フソバクテリウム」と食道がんに関連があることが分かったと、熊本大大学院生命科学研究部の馬場秀夫教授(消化器外科)らが発表した。馬場教授は「フソバクテリウムを詳しく研究すると、がん治療薬の開発につながるのではないか」と話している。

 馬場教授によると、フソバクテリウムは人間の口腔[こうくう]内に常在する細菌の一種。最近の研究で、大腸がんから高頻度で検出されることが分かったため、大腸より口腔に近い食道がんとの関連を調べた。

 熊大で手術した325人の食道がん患者から切除したがん組織を調べたところ、23%にあたる74人からフソバクテリウムを検出。がん周囲の正常な組織では、ほとんど検出されなかった。

 食道がんの影響に着目した5年後の患者の生存率は、フソバクテリウム未検出の患者は75%だったが、検出された患者では59%と低かった。

 また、フソバクテリウムを検出したがんを調べたところ、炎症を引き起こすタンパク質の一種「ケモカイン」に関連する遺伝子が働いていることが判明。馬場教授は、フソバクテリウムがケモカインを介して食道がんの進行に関与したとみている。

 馬場教授は「フソバクテリウムと食道がんの因果関係を完全に確かめたわけではないが、関連が分かった。今後の研究に期待したい」と話している。

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