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固唾をのむ

 緊張すると、唾液の分泌が盛んになるのでしょうか?いや、人は極度の緊張状態になると、むしろ唾液の分泌が低下します。緊張して口の中がカラカラになる経験をした人も多いはずです。それではなぜ、唾液がたまるのかといえば、物事に集中した時、人は唾液を飲むのを忘れてしまうからです。唾液は、食べ物を食べているときはもちろんですが、それ以外の時にも、常時、一定量が分泌されています。これは、口の中を湿らせて粘膜を守ることと、唾液に含まれている殺菌成分の作用で、ばい菌を増やさないためです。唾液の分泌量は、1日で1~1・5㍑にもなります。分泌された唾液は、大抵は無意識のうちに飲み込まれているので、口から唾液があふれるようなことはありません。赤ちゃんがよだれを流すのは、飲み込む力が弱いからです。緊張を感じる場面を凝視すると、人は唾液を飲むことを一時的にやめてしまいます。そして唾液がたまってくると、それに気がついて「ゴクリ」と固唾をのむのです。今年も固唾をのむ機会があると思いますが、事件、事故ではなく、スポーツ観戦など、楽しい場面でと願っています。
                   北海道新聞 2013.1.9

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