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奥歯喪失、認知症の進行リスクか 発症率1.54倍高く 九大研究グループ

奥歯のかみ合わせが失われるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるという研究結果を、九州大の研究グループがまとめた。2040年に高齢の認知症患者数が584万人になるとの推計もある中、研究グループは奥歯のかみ合わせの維持が認知症予防につながると指摘している。4~10日は「歯と口の健康週間」。

 九州大大学院歯学研究院の鮎川保則教授(歯科補綴(ほてつ)学)らは、複数自治体が参加した健康関連データベースから、17年4月~20年3月のレセプト(診療報酬明細書)を分析。65歳以上の約2万2000人について、奥歯のかみ合わせがそろった箇所の数と、アルツハイマー型認知症の診断時期を照らし合わせた。

 その結果、奥歯のかみ合わせが全てそろっている人に比べ、歯の欠損でかみ合わせが一部失われた人は、認知症の症状が1・34倍表れやすかった。前歯も含めてかみ合わせが全くない人だと1・54倍高かった。

 鮎川教授によると、食べ物を細かくかみ砕く能力は、奥歯を1本失うと半減し、総入れ歯では通常の3割程度に低下する。

出版:口腔ケアで高齢者守る 「おとなの歯磨き」出版 松本・諏訪地域 訪問歯科医・伊東さん セミナーも

長野県の松本、諏訪地域で診療にあたる在宅医療専門の歯科医、伊東材祐(さいゆう)さん(48)が、口腔(こうくう)ケアの向上に役立てたいと「おとなの歯磨き」(フローラル出版)を出版した。正しい歯磨きで歯周病を防ぎ、健康に過ごせるようにとの願いを込めた。「誤嚥(ごえん)性肺炎などさまざまな病気を防ぐ口腔ケアが、高齢者の苦しみを緩和し、現役世代の医療費負担を軽減するヒントの一つだと実感している」と話す。【宮坂一則】

 伊東さんは長野県出身。歯学部卒業後、大学病院の付属機関で歯周病、かみ合わせ、最先端義歯治療、歯内療法(歯の根の治療)などを学んだ。訪問歯科医として安曇野市と諏訪市に医院を開設して14年目になる。

 「訪問診療専門の歯科医は県内ではまだまだ少ないと思いますし、認知度も低い」という伊東さん。取り組むきっかけは「しっかり患者さんとコミュニケーションを図ることで丁寧に診療し、高度な義歯治療を提供したい」との思いだった。

 訪問診療は1人で歩いて歯科医院に行くことができない人が対象。伊東さんによると、主に介護施設や支援センターなどで、要介護高齢者や障がい者ら累計約7万人を治療してきたという。その経験から得た知見や具体例を「おとなの歯磨き」にまとめた。「大切な歯を守り、いつまでも自分の歯で食事を楽しめる健康生活を送るために、虫歯にも歯周病にもならない歯磨き方法を書きました」と話す。漫画やイラストを多用し、わかりやすく楽しく読める。

 伊東さんは、診療外でも多くの口腔相談に乗ったり、セミナーを開催したりしている。セミナーの受講者は、若者からお年寄りまで累計約8000人という。

 安曇野市の豊科公民館で5月24日にあったセミナーには、介護や医療施設の職員、歯科衛生士ら約20人が参加。高齢入所者向けの正しい歯磨き法などを学んだ。歯は硬めの歯ブラシ、歯茎は軟らかめの歯ブラシで磨くことや、縦磨きと横磨きを併用する病原細菌除去法など具体的な指導を受けた。

 伊東さんは「私たちは『口は命の入り口』と言っています。高齢者も口の中がきちんとケアされて食事ができるようになると、心の健康を取り戻し、生きていることの尊厳を実感するようになってきます。人が生きていくうえで、お口の健康はそれほど重要なんです」と強調していた。

 デイサービス施設勤務10年という安曇野市の女性介護職員(30)は「利用者のためにと参加したが、自分のための研修にもなりました。まず自分自身の口内健康を守りながら、利用者の健康を守っていきたい」と真剣に研修していた。

 「おとなの歯磨き」はB6判、税込み1650円。

歯科用セメントの残留が歯周炎を引き起こす機序解明 ― 東北大学

セラミック治療の接着剤として使用されるレジンセメントは、その強力な接着力ゆえにセラミック装着後の取り残しが生じやすく、セメントの取り残しが 歯周組織の炎症を引き起こすことが問題となっている。しかし、取り残したセメントが歯周組織の炎症を引き起こす機序は、わかっていなかった。

 東北大学大学院 歯学研究科 次世代歯科材料工学講座の近藤 威 助教および分子・再生歯科補綴学分野の江草 宏 教授らの研究グループは、光照射が不十分なレジンセメントには硬化不足から特定のモノマーが残留し、その溶出が歯周組織の炎症を引き起こす機構を明らかにした。
【歯科通信】

ガム咀嚼で年間約52億円の介護費を抑制 ― ロッテらが推計

 ロッテは、「噛むこと」の普及によってもたらされる社会的インパクトの一つとして、ガムによるオーラルフレイル予防に伴う介護費の抑制効果(52億円)を推計した。

 全国の65歳以上の人口のうち、ガム噛み習慣を有している割合を13.98%と仮定して要介護3以上で試算しており、今後ガム噛み習慣が拡大すると社会的インパクトも拡大することが見込まれているという。オーラルフレイルの基準は、咀嚼能力、滑舌、舌の力、残存歯数、主観的な噛む力とむせの6項目のうち3項目以上で低下が認められた場合としている。

 同データは要介護3以上で介護費の抑制効果を推計したもので、要介護1・2の回避につながる可能性や介護離職に伴う労働損失などの影響を考慮すると、社会的インパクトがさらに大きくなることが考えられる。
【歯科通信】

医療的ケア児の情報を一冊に 災害対応サポートブック、徳島文理大生が作成

災害時における医療的ケア児の避難や支援に役立ててもらおうと、徳島文理大保健福祉学部人間福祉学科2年の五島愛莉さん(19)が「医療的ケア児のための災害対応サポートハンドブック」を作った。板野郡5町と郡自立支援協議会子ども支援部会、文理大が協力。冊子(A6判、28ページ)を300部用意し、各町役場で配布するほか、各町のホームページからダウンロードできるようにする。

 ハンドブックでは、胃ろうや経管栄養の種類、吸引チューブのサイズ、酸素吸入量など必要な医療的ケアの項目を用意。身長と体重をはじめ、排せつ回数、食事形態、コミュニケーション方法といった日常生活の様子を書くページも設けた。ケア児の生活必需品や避難先、かかりつけ医なども記入できる。

 意思疎通が難しいケア児の情報を記載し、誰が見てもケア児の状態や対応が分かるようにしている。

 弟の祐磨さん(16)がケア児で、災害発生時に家族が近くにいない場合を想像すると不安に思ったことがきっかけ。祐磨さんが通う「障がい者生活支援センター 凌雲」(藍住町)に相談しながら作成した。

障害者施設の入所男性死亡 歯科治療中、急性呼吸障害

大阪府警は30日、大阪市淀川区にある障害者支援施設で歯科治療を受けていた入所者の男性(69)が搬送先の病院で死亡し、司法解剖した結果、死因は胸や腹を圧迫されたことによる急性呼吸障害だったと発表した。府警は状況を調べる。

 府警によると、施設側は27日午後2時ごろ、歯科治療中だった男性の呼吸が止まったと府警に説明。男性は治療中に体を動かすことがあったため、職員5人が体を押さえていたところ、男性の顔色が悪くなり、動かなくなっていたという。午後2時25分ごろ、職員が119番した。

 施設長は取材に対し「原因を追及し、同じような事故が起きないように取り組む」と話した。

 施設はJR加島駅から南東約500メートルの住宅街の一角。

10代男性の前歯脱落、市立敦賀病院で誤診 「折損」再植治療できず 賠償67万円、和解

市立敦賀病院(福井県敦賀市)は5月28日、昨年6月に前歯2本が脱落して受診した若狭町の10代男性に対し、当直医が折損と誤って診断し、自歯を元に戻す再植治療ができなくなる医療事故があったと発表した。男性側に損害賠償金67万5千円を支払うことで和解が成立し、6月定例市会に関連議案を提案する。

 新井良和院長らが同病院で会見し説明した。

 新井院長らによると、男性は時間外に救急搬送され、当直の内科医の診察を受けた。脱落した前歯を保存に適した牛乳に沈めた状態で持参していたが、内科医は十分に確認せず、折損と診断したという。また、男性は下唇にも傷があり、出血状態から縫合するのが適切だったものの、内科医は経過観察とした。

 男性は帰宅後も唇の出血が続き、翌日に敦賀市外の病院で下唇を縫合した。前歯の診察も受け、この際に歯を再植できた可能性を伝えられたという。

 会見で新井院長は「再植で歯が再生する可能性は高くはないが機会を逸した。患者さんやご家族をはじめ、市民の皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪した。再発防止策として、歯科や口腔(こうくう)外科の専門医以外でも適切に治療できるよう救急マニュアルを見直した。同病院は、新井院長と診療部長を厳重注意とした。

1歳女児、給食のリンゴを喉に詰まらせ死亡…保育士が口に指を入れかき出したことが逆効果か

 東京都は21日、国分寺市の認可外保育施設で2022年、当時1歳5か月の女児がリンゴを喉に詰まらせて死亡する事故があったと発表した。

 発表によると、事故が起きたのは22年11月29日昼。給食でリンゴ(各辺約2センチ、厚さ約3ミリ)を食べていた女児が眠そうな様子だったため、保育士が口に指を入れてリンゴをかき出した。その後、女児はぐったりして意識を失い、搬送先の病院で死亡した。死因は低酸素脳症。口に指を入れられたことに驚き、リンゴが気道に詰まって窒息した可能性があるという。

 都は有識者による検証委員会を設置し、事故の経緯を調査。21日に公表された報告書は、女児が自宅ですり潰されたリンゴを食べていたとの情報を施設内で共有していなかったと指摘し、「丁寧に家庭での食事の状況を聞き取り、職員が共有できる仕組みが必要だった」と結論付けた。都に対しては、施設側が誤嚥を想定した実践的な研修を行えるよう支援することを求めた。

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