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「お口ぽかん」は、鼻から下の顎の大きさの増加や悪い歯並びなどと関連

有病率は年齢とともに増加、口呼吸やアレルギー性鼻炎などとの関連を示唆
 全国における66の小児歯科を専門に診療をしている歯科医院において、定期的に歯科医院を受診している3歳から12歳までの3,399人の子どもを対象とした。日常の健康状態や生活習慣に関する44の質問からなるアンケートの回答を保護者に依頼。集計結果を年齢と全国を6つの地域に分けて、お口ぽかんの有病率に年齢差や地域差があるかどうかを検討した。

 その結果、日本人の子どもたちの30.7%がお口ぽかんを示し、お口ぽかんの有病率は年齢とともに増加していた。また、子どものお口ぽかんの割合に地域差はみられなかった。44の質問項目のうち「唇にしまりがない」「鼻がつまる」「音を立てて食べる」など12の質問項目がお口ぽかんと関連していた。このことから、顎顔面の形態や位置だけでなく、口呼吸やアレルギー性鼻炎などが関連していることが示唆された。

小児は「口腔機能発達不全症」として保険診療の対象に
 近年、子どもの口の健康な発達がとても重要であることが、徐々に明らかになってきている。これまで研究グループが行った小児のお口ぽかんに関する研究成果などがエビデンス(科学的根拠)として認められ、歯科保険診療において、2018年4月から「口腔機能発達不全症」に関する新病名のもと、「小児口腔機能管理加算」が保険収載された。また、2020年4月からは「小児口腔機能管理料」と「小児口唇閉鎖力検査」が新設され、お口ぽかんが保険診療の対象となった。このことは、従来の歯科治療の中心であった虫歯治療などの硬組織形態に関する疾患-修復モデルから、「食べる」「話す」「呼吸する」といった口腔機能に関する障害-改善モデルへのシフトが徐々に進んできていることを意味する。

 今回の研究結果から、子どものお口ぽかんは、成長期において自然治癒が難しい疾病であると考えられた。今後、お口ぽかんの病態解析や改善法の確立などにより、お口ぽかんに対するガイドラインの策定が必要となる。「子どもの口の健やかな成長発育を目指し、より一層食べる、話す、呼吸するといった子どもの口腔機能に関する基礎・臨床的な研究を推進していきたい」と、研究グループは述べている。

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