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都市鉱山

 「都市鉱山」とは、1988年に東北大選鉱製錬研究所の南條道夫教授らによっ
て提唱されたリサイクル概念で、都市でゴミとして大量に廃棄される家電製品
などの中に存在する有用な資源を鉱山に見立て、そこから資源を再生し、有効
活用しようとするものです。
 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、「都市鉱山からつく
る!みんなのメダルプロジェクト」をスタートし、リサイクルした金、銀、銅
で、五輪とパラリンピックのメダル約5,000個すべてを作ろうと、携帯電話、
スマートフォン、ゲーム機など小型家電などの回収を始めました。メダルに必
要な量は、ロンドン大会の実績を参考にすると、金が10キログラム、銀が1,230
キログラム、銅が736キログラムと見込まれていますが、加工時のロスなどがあ
るので実際には4倍程度を用意する必要があり、2019年春ごろまでに金銀銅合計
で約8トンを集めることを目標としています。
 物質・材料研究機構の試算によると、日本の都市鉱山に眠る金は6,800トンと
世界の埋蔵量の約16%、銀は約6万トンで約22%にあたる量が存在し、国別の
“埋蔵量”としてはともに世界一です。銅も約8%にあたる3,800万トンが存在し、
2位につけており、これらの量はそれぞれ世界全体の需要の3年分前後をまかな
える量に相当します。
 メダルに使う金属以外、産業的に重要なレアメタルや希土類元素(レアアース)
も都市鉱山の活用が期待されています。蓄電池などに欠かせないレアメタルの
リチウムは世界の年間消費量の約7年分が都市鉱山に存在。自動車の排ガス浄
化装置などに使われているプラチナなど白金族元素は6年分弱が埋まっています。
都市鉱山の埋蔵量からみると日本は世界有数の資源国と言えます。

 さて、都市鉱山から金属を回収するビジネスはすでに存在するものの、利益
が確保できるのは金などごく一部と言われていますが、最近では企業の取り組
みが進んでいます。三菱マテリアルは都市鉱山に眠る金や銀など希少金属の回
収・処理事業の回収設備を120億円かけて増強し、処理能力を4割増の年間20万
トンまで引き上げ世界最大規模にし、他の企業も海外拠点を設ける等の計画を
進めています。
 都市鉱山は現在、世界で年間70万トン取引されていますが、2026年度には年
間110万トンの市場に成長する見通しです。都市鉱山の活用は資源小国と言われ
てきた日本の未来に大きく関与するのではないでしょうか。

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