記事一覧

よく噛んで食べるとGLP-1とPYYの分泌が亢進する

日本では昔から、よく噛むことが健康にいいと言われてきたが、そのことの科学的な根拠の1つがGLP-1やPYYなのかもしれない。健常人を対象にした研究で、そしゃくの回数が血中のGLP-1とPYY濃度に影響する可能性が示唆された。9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催される第46回欧州糖尿病学会(EASD2010)で、奥羽大学(福島県郡山市)薬学部疾患薬理学教授で、同大付属病院内科の衛藤雅昭氏(写真左)らが発表した。
腸管のL細胞から分泌されるホルモンであるGLP-1とペプチドYY(PYY)は、血糖や中性脂肪、体重のコントロールに重要な役割を果たしていると考えられている。GLP-1はグルコース濃度に応じて分泌され、インスリン分泌を刺激する。一方のPYYは、視床下部の受容体に作用して食欲を抑えて食べる量を減らす。ともに食後に血中濃度が上昇する。
日本では昔から食事の際によく噛むことは健康にいいと考えられてきた。しかし、そしゃくとGLP-1とPYYの関係についての研究はほとんどない。そこで衛藤氏は、健常人を対象に、そしゃくの回数と食後のGLP-1とPYYの血中濃度の関係を調べた。
試験では、22人(男性11人、女性11人)を対象に調査を行った。平均年齢は37±2歳。平均BMIは23.1±0.8kg/m2、FPG(空腹時血漿グルコース)は96±3mg/dL、平均血圧は112±4/69±3mHgだった。
被験者は、夜間の12時間の絶食の後、翌朝にテストミールを食べた。1口につき5回ずつ噛みながら20分間で食事をする日と、1口につき30回ずつ噛んで20分間で食事をする日を設けて、両者を比較した。
血中のGLP-1とPYYは、食前と食後1時間に測定した。テストミールはパン、バター、キャベツ、バナナ、牛乳、ゆで卵とし、総カロリー630kcal、炭水化物49%、タンパク質15%、脂質30%、コレステロール235mg、食物繊維4.4gに設定した。
試験の結果、食前の血しょうPYY濃度は、5回そしゃくした場合は平均41.0pmol/L、30回そしゃくした場合は平均41.7 pmol/Lと、両者に差はなかった。しかし、食後60分時の血中のPYY濃度では、5回そしゃくした場合は46.1pmol/Lだったのに対し、30回そしゃくした場合は65.4pmol/Lと、30回そしゃくした場合に血しょうPYY濃度が有意に高かった(p<0.01)。
一方、血中GLP-1の濃度については、食前の測定では、5回そしゃくした場合(平均4.8pmol/L)と、30回そしゃくした場合(平均5.0pmol/L)に差はなかったが、食後60分時には、5回そしゃくした場合は18.9 pmol/L、30回そしゃくした場合は25.1pmol/Lであり、GLP-1においても30回そしゃくした場合に血しょう濃度が有意に高かった(p<0.01)。
衛藤氏は、このほかにも、食後の血糖値や血中インスリン濃度、中性脂肪について、そしゃくの回数による違いを調べた。血中の中性脂肪は食後120分時に測定した。すると、5回そしゃくした場合は170mg/dL、30回そしゃくした場合は147mg/dLであり、そしゃく回数が多い方が血しょうの中性脂肪値が低かった(p<0.05)。食前と食後60分の血糖値や血しょうのインスリン濃度については、5回そしゃくした場合と、30回そしゃくした場合で有意差は認めなかった。
これらの結果から衛藤氏は、「今回の研究は健常人を対象にしたため、食後の血糖値に差が見られなかった可能性がある。今後は、糖尿病患者を対象に研究を行い、さらに、より長い期間での調査を行いたい」と話した。

児童生徒の虫歯 10年で半減

県内の小中学生、高校生1人当たりの虫歯の平均本数が10年前の半分程度に減ったことが、県教委の調査で分かった。就学前の歯磨き指導の普及による意識向上、歯磨き用品の改良などが背景とされる。一方で歯周炎など歯茎の病気は虫歯に比べてまだ関心が低く、対策も「まだまだ」(専門家)の状態。だが、食生活が乱れがちな高校生を中心に症状が出ている児童・生徒は相当数いるとみられ、県も「次の課題は歯茎」として啓発に力を入れる。
 子供の虫歯が全体的に減ってきたことで、虫歯が児童虐待の早期発見につながるサインとしても注目されている。虫歯の多い児童はネグレクト(育児放棄)などの虐待の結果、歯磨きの習慣がなかったり、歯の治療を受けていない可能性もあるためだ。実際、東京都や岩手県の歯科医師会の調査では、虐待で保護された児童は虫歯の本数が平均より多かった。
                   上毛新聞 2010.8.5

過去ログ