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潜在的に人間の顎の骨の奥深くには、未発達の「第3の歯」が存在している

歯科医療の常識を覆す最先端の治療が今、日本から世界へ発信されようとしている。京都大学発のスタートアップ企業、トレジェムバイオファーマが開発を進める世界初の「歯生え薬」だ。歯の成長を止めるタンパク質の働きを制御する抗体(薬)を投与することで、人間が本来持っている「歯の芽」を呼び覚まして再生させる。

同社はすでに成人男性を対象とした第1段階の治験を終え、安全性を確認。現在は生まれつき歯が足りない「先天性無歯症」の子供(2~12歳)たちを対象とした第2段階の治験(効果の検証)へと歩みを進めている。

歯科医師であり、医学博士として同社を率いる喜早ほのか代表取締役社長に、開発の経緯と、この新薬がもたらす歯科医療の未来について聞いた。

「大人の永久歯は、一度失えば二度と生えてきません。これが現代の常識でした。サメやワニといった一部の脊椎動物は、生涯にわたって何度も歯が生え変わりますが、人間を含む哺乳類の多くは幼少期の乳歯と、その後に生え変わる永久歯の2回しか歯が生えません。永久歯を失った場合、入れ歯やインプラント治療を選択することになります」

この常識に風穴を開けたのが、同社の高橋克CTOが30年以上にわたり積み重ねてきた分子生物学・歯科口腔外科領域の研究だった。高橋氏は近年の研究結果の解析により、人間の顎の骨の中には、永久歯がすべて生え揃ったその奥深くに、未発達のまま眠っている「第3の歯の芽(歯胚)」が潜在的に存在していることを確信していた。