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福井大、咽頭がんロボ手術公開 15分で腫瘍切除 「頭頸部」保険診療に 首切開せず、患者負担軽減

福井大医学部附属病院(福井県永平寺町)は、頭頸部(けいぶ)がんに対するロボット手術を進めている。高性能手術支援ロボット「ダビンチXi」を使い、口から喉の奥へ器具を挿入して腫瘍を切除する手術で、3月から北陸3県で初となる保険診療として開始。従来は顔や首を切開しなければ届かなかった喉の奥にも、口から直接アプローチできるようになった。身体負担を抑えながら、「食べる」「話す」といった機能温存への期待も高まっている。

 5月19日には、60代男性の中咽頭がん手術が報道陣に公開された。手術室では、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の菅野講師が、患者から少し離れた場所に設置されたコンソールに座り、3D高精細モニターを見ながらロボットを遠隔操作。口腔(こうくう)内に挿入された細いアームは、人の手首以上に自在に曲がり、喉の奥で滑らかに動いた。患者のそばでは医師が器具交換やロボットアームの調整を担当。2人が声をかけ合いながら、アーム先端の電気メスで腫瘍を切除し、手術は約15分で終了した。

 今回切除したのは、舌の付け根にできた約3センチの腫瘍。頭頸部は呼吸や食事、発声など、生きる上で大切な機能が集中する領域で、特に中咽頭や下咽頭は喉の奥にあるため、人の手では届かない。従来、この部位のがんでは首を切開し、場合によってはあごの骨を割って視野を確保する大がかりな手術が必要だった。

 手術後、菅野講師は「以前なら2~3時間以上かかっていた手術が短時間でできる」と強調。「アームは自分の手よりも滑らかに動き、手ぶれも補正されるので非常に操作しやすい」と話した。

 今回のような症例では、顔や首を切る手術を避けるため、放射線と抗がん剤による治療が選ばれるケースも多かった。ただ、約2カ月の入院が必要になるほか、強い痛みや味覚障害などの副作用が出ることもある。一方、ロボット手術では術後3日程度で退院でき、患者負担を大幅に軽減できるという。今回の患者も、手術で切除できたことで、再発時などに回数が限られる放射線治療を選べる可能性を残せるという。