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嚥下障害でも食楽しむ旅を 山形・鶴岡でモデル考案へ

伝統的な食文化が今に受け継がれる山形県鶴岡市で、高齢や病気で食べ物をのみ込む力が低下した嚥下障害の人向けに、食べやすさとおいしさの両方に配慮した食事や試食体験ができる観光のモデルコースづくりが始まった。目指すのは、誰もが安心して食べる喜びを感じられる街だ。

 ノドグロのにぎりずし、山形牛の赤ワイン煮…。鶴岡市が食に関わる団体とつくる協議会は2月、医療や観光関係者向けに1泊2日のモニターツアーを開いた。海沿いの宿泊施設では地元食材を使った夕食が並んだ。

 すしネタは筋を切るよう包丁でたたいて形を整え、シャリも歯ぐきでつぶせるほど軟らかく炊いて、口に入れるとふわっとほぐれる。山形牛は長時間煮込んだ肉をペースト状にして成形。かまなくてものみ込めて、味は濃厚な肉そのものだ。

 嚥下障害がある人の食事は、のどに詰まらないよう細かく刻んだり、とろみをつけたりといった工夫が必要だが、安全性を優先すると見た目や食感が単調になりがちで、食欲が減退する人もいる。夕食を作った料理人の延味克士さん(57)は「自分の調理技術で、食べることに困っている人が喜んでくれるなら力になりたい」と話す。

 2日目の昼食は西洋料理店へ。地元産の羊肉のタルタルや豚のリエットの前菜盛り合わせは、味も見た目も嚥下食だとは気づかないほど。参加者は他にも、老舗の刻んだ漬けものの試食や、昆布やワラビのだしの飲み比べなどを市内各地で楽しんだ。

 市には在来作物が多く残り、修験道と結びついた食文化や郷土料理が伝わる。2014年、芸術文化を生かした特色ある都市でつくる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「創造都市ネットワーク」に、日本で初めて食文化の分野で加盟した。

 一方、市内では医療関係者と料理人らでつくる「鶴岡食材を使った嚥下食を考える研究会」が8年前から障害に関する研修会を開催。飲食店にメニュー開発の助言を続け、嚥下食を提供するフレンチやイタリアンなどの店が増えつつある。

 研究会は今回のモデルコースづくりにも協力。会の共同代表で言語聴覚士の田口充さん(48)は「食べるために外出する一連の動作がリハビリや社会参加につながる」と意義を語る。

 協議会では今後、当事者も含めたモニターツアーの企画や、モデルコースの発信を目指す。協議会の事業推進員遠藤遼さん(40)は「子どもや若者にも嚥下障害で旅を諦める人がいる。誰もが食を通じて地域の魅力を体験できる街にしたい」と意気込んだ。