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財政制度等審議会「令和8年度予算の編成等に関する建議(令和7年12月)」に対する日歯の見解

1.医療費について
医療費の伸びについては、財政審の建議でも示されているように、人口増減・高齢化等の人口要因による影響と、人口要因以外の影響がある。人口要因以外の影響については、政策的に対応できる余地があると考えられる部分と示されているが、新規の医療技術や新規材料等、様々な要因が影響を与えるため、実際はそこまで政策で管理できるものではない。また、昨今の経済・物価動向等を踏まえると、医療を提供する上で、人件費が増加していること、医療機器や材料等の価格が高騰していること等から、必要な制度改革や効率化は進めるべきではあると考えるが、安定的に医療を提供するため、必要な医療費の手当をする必要があると考えている。

2.診療報酬改定について
財政審の建議の参考資料には、歯科は、「過去一貫して病院に比して高い利益率」であり、「個人立が多く、小規模・分散で非効率な提供体制が残存」していると指摘されているが、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)の2024年度の歯科診療所の経営状況をみると、歯科診療所の利益率(医業利益率)は平均値4.3%、中央値が1.7%であり、病院の利益率よりは高く、一定の利益率を確保しているように見えるが、41.4%が赤字であり、地域による差も大きくあるのが実情である。歯科診療所が小規模・分散であり、非効率との指摘については、分散しているからこそ地域医療を広く支えることができており、単に効率化だけを目指して大規模化・集約化すれば良いというものではない。さらに、歯科診療所の偏在もあるため、単にマクロ的な視点だけで論ずることは、各地域の医療の実情に合わない場合もあり留意が必要である。
また、今回の診療報酬改定については、骨太の方針2025にもあるように、高齢化による増加分に経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算した改定の着実な実施が最重要であり、さらに、財政審の提言の中には診療報酬の具体的な内容も含まれているが、診療報酬の具体的な内容については今後も中医協において行うべきであり、財政的な観点のみから個別の内容までに踏み込んで指摘する財政審の姿勢には疑問を感じる。