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発達障害抱える学生が増加、優先席や休憩室の確保で配慮…支援の専門部署ある大学は3割未満

私立大学で発達障害を抱えた学生が増え、支援体制の整備が急務となっている。4月には改正「障害者差別解消法」が施行され、障害のある学生の困難を軽減する「合理的配慮」が国公立大学に続き、私立大学でも義務づけられるためだ。発達障害は周囲に気付かれにくく、一人ひとりに応じた支援が求められるが、大学間で取り組みに差が出ている。(松本将統)

私大にも配慮義務

 「卒論の実験は、データ取得に苦労しながらも頑張っています」

 東京都日野市の明星大で昨年12月上旬、発達障害のある理工学部4年の女子学生(22)が、臨床心理士と面談をしていた。

 女子学生は対人関係を築くのが苦手な「自閉スペクトラム症(ASD)」を抱え、集団行動が得意ではない。入学後、「グループでの実験では他の人に迷惑をかけてしまう」と悩んだ。

 大学に相談すると、2年時から大学院生のサポートが付き、一人でも実験に取り組めるようになった。聴覚が過敏なため、授業では空調音などを低減させるヘッドホン型の防音保護具の使用が認められている。女子学生は「勉強に集中できる環境を整えてもらったので、なんとか卒業できそう」と話す。

 明星大では2015年、障害のある学生の相談窓口「ユニバーサルデザインセンター」を設けた。臨床心理士などの専任スタッフ3人が学生と面談を行い、個別の支援計画を立てる。

 センターは、4月の改正法施行を前に、障害のある学生への支援内容をまとめた教職員用ハンドブックを作った。林貴雄マネジャー(61)は「学生のニーズに応えられるように大学全体で支援していきたい」と話す。

10年間で5倍

 日本学生支援機構によると、22年度に大学や短大などに在籍する障害のある学生は4万9672人で、12年度の約4倍に増加した。このうち発達障害のある学生は1万288人で、10年間で約5倍に増えた。

 背景には、発達障害への理解が深まり、診断を受ける子どもが増えたことなどがあるという。大学は高校までと異なり、履修登録などを自分で行わなければならず、大学生活で初めて発達障害に気づく学生もいる。

 一方で、大学生活に困難を抱えた学生が休学、退学するケースも少なくない。