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緩和ケアそば支えに 中央の診療所で無償提供

中央市成島のホスピス診療所「玉穂ふれあい診療所」(土地邦彦院長)で、甲府市のそば店「川田奥藤第二分店」の店主名取信造さん(60)が月1回、入院患者らに手打ちそばを無償提供している。活動を続けて1年余り。終末期医療を受ける患者らの楽しみになっているといい、名取さんは「そば職人として人生の最期を穏やかに迎えるお手伝いができればうれしい」と話している。

 そばの提供は昨年9月から。診療所に歌や絵を届ける活動をしている友人に刺激を受け、「自分もそば職人として何かできないか」と思い立った。入院患者の多くは、末期がんなどで緩和ケアを受ける人たち。38年前に肝臓がんで亡くなった母・重子さん(享年50歳)の姿を重ね、「当時の母親にしてあげられなかったことをしてあげたい、という思い。最期の時を穏やかに過ごせるよう少しでも役に立ちたい」と話す。

 毎月後半の店の定休日、入院患者と職員ら50~60人分の手打ちそばとつゆ、割りだし、揚げ玉などを診療所に届ける。診療所の調理担当者が患者の状態に合わせ、一口サイズに切ったり、細かく刻んだりして提供している。

 「おいしい。幸せだ」と涙を浮かべて食べる人、長く食事が取れない状態だったのにそばを食べ、つゆまで飲み干し、家族とそばを食べに行った思い出話を語る人も。長田牧江統括看護師長(71)は「ここに入院している患者さんは一食一食が最後の食事になるかもしれない。名店の味を届けてもらい、患者さんたちの口を幸せにしてくれる尊い活動」と感謝する。

 感染対策などのため、名取さんは食べているところは直接見ていないが、職員から患者たちの様子を聞くと励みになるという。活動は「自分の世界だけじゃなく、まわりに目を向けるきっかけになっている」と言い、「自分がそばを打てるうちは続けていきたい」と話している。