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歯科衛生士在宅医療増で不足 県歯科医師会学生に修学金

山梨県内で、歯科診療の補助や歯科保健指導を担う歯科衛生士の不足が深刻化している。病気予防への関心の高まりや高齢化に伴う在宅歯科医療の拡大に伴い、7月の求人倍率は4・6倍に上昇。県歯科医師会は本年度、県内唯一の養成機関である県歯科衛生専門学校(甲府市)の学生の県内定着を促すため、修学資金の貸付制度を創設する。

 県歯科医師会によると、近年は糖尿病などと歯周病との関連が知られ、歯科衛生士による歯石の除去やフッ化物の塗布などを希望する受診者が増加。歯科医や歯科衛生士が高齢者宅などを訪れる介護保険の居宅療養管理指導の利用者も2023年2月は672件で、記録が残る19年7月(481件)より約4割増えた。

 業務の増加に伴い歯科衛生士が不足し、従来の地域歯科保健活動などにも影響。県歯科衛生士会の永井鈴美会長は「地域から口腔ケアの指導を頼まれても断らざるを得ないこともある」と明かす。

 県歯科医師会によると、歯科衛生士の求人倍率は、記録が残る16年度末は2・6倍だったが、上昇が続き今年7月は4・6倍になった。一方で、県歯科衛生専門学校の卒業生の県内就職率は22年度は95・3%だったが、20年度は80・4%、21年度は85・4%と安定しない。担当者は「給与水準が高く就職の選択肢も多い都市部を希望する人が出始めている」と説明する。

 県歯科医師会は県と協力して県内定着を促すため、同校の学生を対象とした修学資金の貸し付けを9月に始めることを目指す。貸与額は月3万6千円(年額43万2千円)で、1学年当たり8人。卒業後1年以内に歯科衛生士として就業し、県内の医療機関で5年間勤務することで返還を免除する。経済状況や学力面など貸与の選定には一定の基準を定める。本年度の対象者には4月までさかのぼって支給する。

 歯科衛生士は女性が多く、結婚や出産などを機に離職する人が多いことから、県歯科医師会は本年度、復職希望者らを対象にした研修会をスタート。座学と実習を通して最新技術を伝え、復帰の環境を整える。永井会長は「職場を離れている期間が長く、不安に思っている人は多い。今後も手厚い復職支援が求められる」と話した。