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母子健康手帳デジタル化 吉備中央町、子どもの予防医療充実へ

岡山県吉備中央町は母子健康手帳をデジタル化する。先端技術によって医療や健康分野の課題解決を図る政府の「デジタル田園健康特区」(仮称)としての取り組み。スマートフォンがあれば、いつでも必要な情報が取り出せることから保護者の利便性が高まるほか、妊娠中の生活状況から出産、子どもの成長過程といった情報を町が集積して予防医療の充実につなげる。今夏にも利用を始める予定。

 導入するのは、岡山大発の医療ITベンチャー企業が開発したアプリ「WeLoveBaby(ウィラバ)」で、スマホにダウンロードして使用する。新たに妊娠した人だけでなく、すでに手帳を持っている人も使える。紙の手帳の発行も続け、併用してもらう。

 従来の手帳をアプリで撮影すると、記載情報を自動でデータ化して記録する。助産師や栄養士にオンラインで相談に乗ってもらったり、妊娠時の体調変化や子どもの食事内容をチャット形式で質問に答えて記録したりできる機能もある。

 それぞれの情報はアプリを通じてビッグデータとして集積され、町の関連施策の展開に活用する。母親や祖母が使っていた手帳を読み取ることも可能で、健診での情報や家族の病歴といったデータの蓄積が進めば、子どもの将来の疾患リスクの予測や早期対応に役立てられるという。

 5月上旬、町子育て支援センターでアプリのデモ体験会を開き、町内の母親8人が参加。外出先で急に手帳が必要になった際もスマホで確認できるといった利便性などをアプリの開発担当者が説明した。乳児から小学生まで4人の子どもを育てる女性(38)は「4冊も手帳を持ち歩くのは大変だった。アプリがあればとても助かりそう」と話した。

 参加者からは「予防接種の通知がほしい」「子どもが過去に服用した薬を記録したい」といった要望があり、町は機能拡大を検討する。

 町保健課は「アプリを通じて母子医療の安全安心を提供し、出生数増加に向けた仕組みづくりを進めたい」としている。