記事一覧

医師の働き方改革、そもそも医師は労働者なのか

3.医師は労働者なのか

 医師は、いちいち法律が介入して保護することが必要な立場かと言われると、もしかしたら違和感を持つ読者もいるかもしれない。取得するのが難しい資格を持った限られた人しかできない仕事だし、比較的給料も高い、患者をはじめ多くの人から尊敬される職業という面もある。確かに、一般に医師という職業は、一歩病院の外に出て、他の職業に比べると強い立場なのかもしれない。

 しかし、病院の中ではどうだろうか。個々の勤務医の立場に立った時に、なかなか管理的立場のいわゆる上司に相当する人の命令に反することは難しいのではないだろうか。体力的にかなり厳しい状況だとしても、他に医師がいないと言われれば過酷な勤務を断れないということはないだろうか。本来、医師を確保したり、マンパワーに応じて業務を減らしたりするのが経営側の役割だとしてもだ。

 また、医学教育の段階から医師は「患者のために」「社会のために」と、高い倫理観を教え込まれているので、少々きつくても頑張ってしまいがちな面もあるかもしれない。患者の命や健康を守るという仕事だから、そのような高い倫理観は必要だと思うし、プロフェッショナルとしての誇りも素晴らしいことだと思うが、医師も人間だから過酷な働き方では医師本人が健康を害することもあるだろうし、健康を害するまでいかなくても寝不足で手術をしてヒヤリ・ハットの経験をしたケースも決して少なくないというデータもある。患者のためにも、医師が元気でいることはとても大事なことだ。

 だから、医師は一般の労働者に比べると強い立場かもしれないが、病院の中をイメージすると、やはり働き方には何らかの歯止めが必要なのだと思う。どうしても、上の立場の人が強いし、医師自身も頑張ってしまうからだ。日本の法律が、医師も労働者として保護の対象としているのは、そういうことだと思う。