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院長解任、広揺 コロがる動ナ禍「連携水差す」 「旭川医科大」

新型コロナウイルス感染拡大で昨年12月に医療崩壊寸前にまで追い込まれた北海道旭川市で、地域医療の中心的役割を担う旭川医科大病院の院長がコロナ患者の受け入れを巡り学長と対立し、解任される事態に発展した。「連携に水を差す」。コロナ禍の中で表面化した"お家騒動"に、患者の受け入れに追われてきた市内の病院関係者の間で動揺が広がっている。

 ▽受け入れ却下

 「学長に軽症のコロナ患者を受け入れるよう求めたが断られた」。昨年11月、市庁舎で開かれた医療対策連絡会。旭川医科大病院の院長だった古川博之(ふるかわ・ひろゆき)氏は、力ない様子で市内の基幹病院の院長らにこう打ち明けた。

 事前の取り決めで旭川医科大病院は重症者を受け入れる役割だったが、市内の慶友会吉田病院でクラスター(感染者集団)が発生しコロナ専用病床が逼迫(ひっぱく)。古川氏の直談判に吉田晃敏(よしだ・あきとし)学長が軽症者の受け入れを却下したことで2人の関係にひびが入った。

 対立が決定的になったのは昨年12月。学長が学内会議で吉田病院について「ぐちゅぐちゅとコロナをまき散らしている」「なくなるしかない」などと述べた音声が外部に流出し、学長は釈明に追われた。大学側は音声が外部に漏れたことを問題視。古川氏は漏えいを否定したが、大学側は音声を流出させたとして今年1月25日付で病院長職を電撃的に解任した。

 ▽混乱拡大

 大学側は古川氏の解任に吉田学長は関与していないと強調するが、処分を決めた役員会のメンバーは学長と長年連れ添った側近で固められている。大学幹部は「解任は学長の意向が反映されていたのではないか」と処分の正当性を疑問視する。

 旭川医科大は2009年に学長任期の上限を撤廃、吉田学長は約14年に及ぶ長期政権を維持してきた。大学経営の黒字化など手腕に定評があるが、学内では教授人事を握り反対派を排除する「恐怖政治」との声も上がる。大学関係者は「一連の問題は長期政権の弊害。ガバナンスが崩壊しており、立て直すにはトップが代わるしかない」と批判する。今月9日には教授ら有志が、吉田学長の辞職を求める署名活動を始めた。

 旭川医科大で拡大する混乱に、市内の医療関係者は危機感を募らせる。保健所幹部は「リーダーシップを発揮してきた古川氏が抜けた。市のコロナ対策に響く」と懸念。旭川医療センターの西村英夫(にしむら・ひでお)院長は「次の感染拡大にも備えなければならない中、内部でごたごたしている場合か」といら立ちをあらわにした。