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【寄稿】コロナワクチンを接種しました~米ミネソタ州の状況と自身の副反応について 米メイヨー・クリニック・井上明星

はじめに
 私は、アメリカのミネソタ州はロチェスターのメイヨー・クリニックで研究留学している放射線科医です。2021年1月12日にPfizer-BioNTech社製のCOVID-19ワクチンを接種したので、その経緯や個人の感想を共有いたします。

ワクチン接種の優先順位
 アメリカでは2020年12月中旬頃から SARS-CoV-2に対するワクチン接種が始まりました。まず、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)からミネソタ州に毎週火曜日にワクチンが割り振られて、さらに、ミネソタ州が優先順位に応じてワクチンを州内に割り振りますが、1月16日現在、医療従事者のみが対象となっています(Phase 1a)。メイヨー・クリニックに割り振られたワクチンは、下記の表のように内部でさらに優先順位がつけられ(表1)、接種が行われています。現在は下表の5番目の段階で、私のような研究留学生もここに含まれます。

表1. COVID-19ワクチン接種の院内優先順位
1救急部、介護部門、霊安室で働く職員
2COVID-19外来の職員
3COVID-19の検体を採取する職員、入院患者に関わる職員
4COVID-19のワクチン接種を行う職員、外来、在宅医療の患者に関わる職員
5臨床をサポート(患者接触なし)するテレワーク不可の職員
6その他のテレワーク不可の職員
7テレワーク中の職員
(米メイヨ-・クリニック 1月16日現在)
 さて、ミネソタ州全体の話に戻りますが、医療従事者のワクチン接種が終わったら、エッセンシャルワーカーと75歳以上の高齢者(Phase 1b)、65~74歳の高齢者、16~64歳の基礎疾患のある人(Phase 1c)が接種を受ける予定となっています。一般の方のワクチン接種はそれ以降ですが、具体的な時期は未定です。なお、Pfizer-BioNTech社製のワクチンは18歳以上、Moderna社製のワクチンは16歳以上が接種対象年齢となっています。いずれのワクチンも2回接種する必要があり、前者は3週間、後者は4週間の間隔を空けるように推奨されています。

 臨床で働く職員が次々とワクチンを接種している中、私の接種はいつ頃かと調べようとしていた矢先にワクチン接種の案内がメールで届いたのは、1月7日のことでした。この時点で、フロリダ州とアリゾナ州にあるメイヨー・クリニックの支部では希望する職員に対するワクチン接種が完了している状態でした。おそらく、ワクチン供給数に対して職員数がミネソタ州のメイヨー・クリニックよりも少ないためと思われます。メールでの通知が届いたらメイヨー・クリニックの患者向けスマホアプリから予約を取るのですが、最短で1月11日の接種でした。ワクチンを接種することに迷いはなかったのですが、家に帰ってからゆっくり予約を取ろうと思い、夜にアプリを開いてみると1月11日の予約は既に埋まっており、1月12日の枠での予約となりました。

接種会場にて

ワクチン接種会場の様子

はじめに情報端末(KIOSK)でチェックインします。ハンドサニタイザーとワイパーも置かれています。
 パンデミック前は講演で使用されていたレクチャーホールが、接種会場になっていました。ソーシャルディスタンスを確保するには十分な広さです。会場に到着するとハンドサニタイザーで手を消毒してから、情報端末(KIOSK)で受付をするように案内されました。6フィート(編集部注:約1.8メートル)以上の間隔を保って並ぶように列が整えられていましたが、私の予約した午前11時の時間帯は待ち時間はありませんでした。

 氏名や生年月日などを入力すると、事前に予約していた情報が表示され、チェックインが完了します。QRコードの記載された紙を渡され、合計11カ所の接種ブースの一つに案内されました。ミネソタ州のメイヨー・クリニックには2カ所の接種会場がありますが、この会場では約900人が接種予定とのことで、私のワクチン接種を担当してくれた看護師は半日で約50人に接種したとおっしゃっていました(お疲れ様です)。

副反応の説明
 書類を見ながら、副反応について説明を受けました。発熱が5人中1人、倦怠感が4人中1~3人に起こり、多くは24~36時間後に改善することを告げられ、改善しない場合は、職員専用の相談窓口に相談するように説明を受けました。軽微な副反応ではありますが、頻度が高いという印象です。副反応の説明を聞いた後でも、COVID-19感染症による健康被害や感染を広めてしまうリスクを天秤にかけて、ワクチン接種を躊躇(ためら)うことはありませんでした。なお、私は該当しませんでしたが、アナフィラキシーの既往がある場合には、経過観察室に30分ほど滞在する必要があると言われました。

接種1時間で頭重感、夕方には痛み
 COVID-19ワクチンもインフルエンザワクチンと同様に筋肉内注射ですが、刺した時の痛みはほとんど感じませんでした。接種会場を出て、2回目のワクチン接種を3週間後に予約し、昼食に行きました。ところが、接種から1時間ほど経過した頃から頭重感と眠気を自覚したため、数十分間ソファで休憩しました。これにより、午後の生産性が低下したことは否めません。夕方になると、注射した部位の痛みが強くなってきました。発赤、腫脹、熱感はありませんが、左側臥位になり、注射した左肩に体重がかかると結構な痛みがありました。念のため体温を測りましたが、36.0℃と平熱でした。

 翌朝には頭重感や眠気は解消していましたが、注射部位の痛みがさらに強くなりました。着替え、扉の開閉、腕を伸ばして物を取るなどの日常動作で肩を動かすと痛みます。左肩に限局した鈍い痛みで、筋肉痛のような感じです。筋肉痛は広範囲に生じますが、注射部位のみに限局していたので、これまでに感じたことのない変な痛みでした。幸い、翌々日には何事もなかったように消えており、その後の体調はいつもと同じく快調です。ちなみに、私はこれまでのワクチン接種で局所の熱感と軽い痛み以外の副反応症状を感じたことがありません。

 参考のために、他の接種した人たちにも感想を聞いたところ、ほとんどの人が、肩の痛みが1~5日くらい続いただけということでした。一方で、ごく少数ながら、翌日に仕事を休むほどの体調不良を感じた人もいました。なお、2回目のワクチン接種後の方が痛みや倦怠感が強いと聞きます。大切な予定が控えている時は、ワクチン接種を避けた方が無難だと思います。

さいごに
 社会免疫を獲得するには人口の70%が免疫を保有する必要があるともいわれており、多くの人がワクチンにより安全に免疫を獲得し、流行が収束に向かうシナリオを期待したいところです。メイヨー・クリニックでは、多くの職員がワクチンを接種していますが、中には現時点では接種したくないという人もいます。長期的な副反応も十分に評価されていない状況では、少し様子を見たいというのも頷ける話です。日本でも2月中のワクチン承認・接種開始を目指していると聞いております。ニュースではワクチン接種による重篤な有害事象が強調されている印象ですが、報道とは違った視点からの一個人の体験談として、本記事が皆様の参考になれば幸いです。