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「頭が真っ白になった」 五輪後に歯科医目指す金井 「揺れるアスリート」

陸上男子110メートル障害の金井大旺(かない・たいおう)(ミズノ)は東京五輪で競技生活に区切りをつけ、歯科医師を目指すことを決めている。しかし、集大成の舞台は新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期。「頭が真っ白になった」と言う。不安を抱えながら、自宅で鍛錬を続ける。

 北海道函館市の実家は歯科医院。中学生の頃には早くも後を継ぎたいとの思いが芽生えたという。北海道有数の進学校の函館ラサール高へ進んだ。陸上に本格的に取り組むのは高校までと考えていた。

 競技を続ける決断をしたのは、5位に終わった3年時の全国高校総体(インターハイ)だった。「全然力を出し切れなかった。ここでやめたら悔いが残る」。高校には専門的な指導者がいなかったこともあり、自らの可能性も感じていた。

 全国高校総体は自身の競技人生を大きく左右した大会だった。だからこそ今年の中止には胸を痛めている。「高校生の時はインターハイが全てだった。みんなそう言いながら高め合ってきたので、僕が想像しているよりも、数倍、数十倍つらい思いをしている」。高校生の心中を思いやった上で「自分の選択した道を貫いてほしい」とメッセージを送る。

 法大3年だった2016年の日本選手権で3位に入り、東京五輪を狙う決意を固め、18年には当時の日本記録の13秒36で同選手権を初制覇した。だが昨季は初出場の世界選手権で予選敗退。踏み切り位置が近くなって歯車が狂い、不本意な1年となった。冬場は修正に取り組み、2月には室内大会の60メートル障害で日本新をマーク。今夏へ手応えを感じていた。