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口腔内細菌によるアセトアルデヒド産生に関するメカニズムを解明

東北大学は8月8日、口腔常在細菌のアセトアルデヒド産生に関与する口腔環境因子やその産生メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科口腔生化学分野の髙橋信博教授、鷲尾純平講師、同研究科口腔システム補綴学分野の互野亮歯科医師らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。

 近年、口腔内細菌がグルコースやエタノールから発がん性を持つとされるアセトアルデヒドを産生することや、そのことが口腔がん発生のリスク因子となることが注目されている。しかし、それらのアセトアルデヒド産生に関わる代謝機構の詳細や、その産生に対する口腔環境因子による影響はわかっていなかった。

 今回、研究グループは、アセトアルデヒド産生能を持つ複数の口腔常在細菌(口腔レンサ球菌、口腔ナイセリア)を用いて、口腔内環境を想定した各条件下にて、エタノールやグルコースを基質としてアセトアルデヒドおよび他代謝産物の産生量を測定した。その結果、エタノールからのアセトアルデヒド産生が高く、さらに、好気環境かつ弱アルカリから中性pHの環境下にて、その産生が増加したことが明らかになった。また、エタノールは好気環境でアルコール脱水素酵素によって酸化されてアセトアルデヒドになり、生じた酸化力はNADHオキシダーゼで処理されることで、効率的に代謝が進むことが推測されたという。

 今回の研究によって、健康的な口腔内細菌叢、口腔環境でも、口腔常在菌が飲酒由来アルコールからアセトアルデヒドを産生し、口腔がんリスクを高める可能性を示唆。口腔内清涼不良とアルコール多飲はこれを増強する可能性がある。「口腔内細菌が関与する口腔がんリスクの評価法や低減法の開発にも寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。