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ヒアルロン酸:がん化左右 安易な体内注入にリスク 東大チーム

美容医療などで広く使われるヒアルロン酸が、がんの抑制や発がんに関わっていることを解明したと、東京大の研究チームが10日、米科学誌デベロップメンタル・セルに発表した。ヒアルロン酸の分子が大きい場合は「善玉」としてがんを抑制するが、炎症などにより細かく分解されると「悪玉」となって発がんを促す。チームの畠山昌則教授(分子腫瘍学)は「体の中に安易に注入するのはリスクがある」と警鐘を鳴らす。

 ヒアルロン酸は、人体で水分や細胞の形を保つ働きがあり、皮膚や関節などの組織に含まれている。美容医療では皮下に注入して顔のしわ取りや豊胸などに使われる。ヒアルロン酸は体内で鎖のように長く大きな分子として作られるが、炎症などが起きた組織では分解酵素が過剰に作られ、酵素で短く切られ小さな分子になる。

 チームは、がん化の進行を阻止する細胞内の機能に着目。ヒトの乳腺の細胞を使った実験の結果、大きいヒアルロン酸はこの機能を活性化してがん化を抑えた一方、小さいヒアルロン酸は機能の働きを抑制し、がん化を促進した。

 また、悪性度の高い乳がんの細胞では、ヒアルロン酸の分解酵素が過剰に作られており、大きなヒアルロン酸を注入しても小さく細分されてしまい、がん化をさらに促進することもわかった。

 畠山教授は「ヒアルロン酸を注入した組織が炎症を起こさないという保証はない。大きな分子を注入しても体内で分解が起こる限り、がんのリスクは高まる」と話している。

 化粧水などに含まれるヒアルロン酸については、皮膚から体内に吸収される可能性はほとんどないという。