記事一覧

U35 歯ヨガで「健口」に 大阪・貝塚の医院が考案 「スクランブル」

 頬や舌など口周りの筋肉を鍛錬するユニークな「歯(は)ヨガ」を、大阪府貝塚市の歯科医院が考案した。目をぱっちり見せ、ほうれい線を消す顔ヨガは美容やアンチエイジングで人気だが、歯科領域の課題から生み出されたのが歯ヨガ。自宅でできる手法の動画をインターネット上で公開、「健口」を合言葉に普及を目指す。

 貝塚市の開業医「小島歯科医院」の小島理恵(こじま・りえ)副院長(52)。顎(がく)関節症などの患者を長年診てきたが、歯だけでは解決しないと感じてきた。「歯の健康には、かみ合わせから呼吸の仕方、体のバランスまでつながっている」

 そこで考案したのが歯ヨガ。口周りの体操とマッサージからなる八つのステップで構成された10分弱のプログラムだ。

 体操は(1)口を横に引っ張って「りー」と声を出し、次に舌を前歯に付かないよう突き出し「えー」を10回(2)口を閉じ、舌で歯茎の周囲を時計回りと反時計回りに5回ずつなめる(3)鼻呼吸をしつつ頬をすぼめ、膨らませる動作を10回(4)上顎に舌を吸い付け100秒間キープ。吸い付けた舌を離し音を鳴らす動作を10回―。

 マッサージは口を大きく開け、下顎を左右に大きく動かすほか、こめかみや両顎の付け根の咬筋(こうきん)をほぐし、鼻の横のつぼや唾液腺を刺激する。

 実施後は心地よい疲労感。口周りが温かくなり、口や舌の動きも滑らかに。唾液分泌も促し虫歯や歯周病も予防できる。

 小島副院長は近年、特に子どもの口腔(こうくう)環境が悪くなったと警鐘を鳴らす。診察した9割以上で舌が下顎に落ちる「低位舌」。食事でかまなくなり、口周りの筋肉が弱く顎が未発達。スマートフォンの長時間使用で首を前に出し、うつむき姿勢を維持することも悪影響を及ぼす。

 小島歯科によると、毎日10分歯ヨガをした8歳男児は、エックス線画像で比較すると気道が広がり、舌の位置が上がった。別の女児は歯ヨガに併せ就寝時にマウスピースを装着。1年後には上下の顎が広がり歯並びが整った。猫背も解消した。

 同歯科は昨年5月に建て替え、3分の2を診療、残りはヨガなどの活動に使うスタジオにした。いい歯の日の11月8日、集まった親子が鏡を手に歯ヨガを楽しんだ。姿勢が悪く下を向く癖がある息子斗真(とうま)ちゃん(5)を連れてきた主婦古家典子(ふるや・のりこ)さん(33)は「大人も美容や健康増進になり、親子が一緒に取り組めるのがいい」と笑顔だった。

 小島副院長は「歯医者はかぶせ物が取れただけで来てくれ、敷居が低いのが魅力。お年寄りから子どもまで地域の人々の健康をトータルサポートしたい」と話した。