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ダウン症抑制の新化合物 出生前投与、マウスで効果

京都大大学院医学研究科の萩原正敏 教授(化学生物学)らの研究チームは9月4日(月)、ダウン症で知的障害を引き起こす原因の一つとされる遺伝子の働きを抑制する新たな化合物を発見したと発表した。

 ダウン症の胎児を妊娠している母マウスに投与したところ、胎児の脳構造の異常や学習行動が改善したことを確認した。

 ダウン症などの染色体異常を調べる出生前診断を受ける妊婦が増えているが、今回の研究は胎児期に治療できる可能性につながる成果という。論文は近く米科学アカデミー紀要に掲載される。

 研究チームは、神経細胞を作り出す神経幹細胞の増殖を促す化合物を717種類の候補から探し出し、ダウン症の赤ちゃんを妊娠した母マウスに、妊娠中期に1日1回経口投与した。

 結果、胎児には大脳皮質が通常より薄くなるダウン症の特徴が出なかった。迷路の正しい道を覚える出生後の学習行動実験では、通常のマウスと同程度に正しい場所を覚えていた。 この化合物が遺伝子の過剰な働きを抑制するため神経幹細胞が正常に増え、脳構造の異常や学習行動の低下を改善させたとみられる。

 ダウン症の人のiPS細胞から作った神経幹細胞も、正常に増えることを確認した。今後は神経細胞が関与している脳梗塞やアルツハイマー病、パーキンソン病も対象に研究を進める。

(毎日新聞 9月5日)