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乳歯で被ばく状況調査 原発事故受け福島歯科医会

東京電力福島第1原発事故を受け、福島県歯科医師会などが県内外から提供された子どもの乳歯に含まれている放射性物質を測定する研究を進めている。胎児期の歯の形成段階で体内に取り込まれた放射性物質がそのまま残りやすい性質に着目、世代間や地域間で比較し、事故後の被ばく状況や健康影響の解明につなげるのが狙いだ。

 環境省の研究調査事業として2013年度に開始した。これまで北海道、新潟、静岡、熊本、沖縄の歯科医師会と連携し、本人や両親の同意を得て、約5560本の乳歯を集めた。

 対象となる主な放射性物質はストロンチウムで、化学的性質がカルシウムと似ているため骨や歯にたまりやすく、検出量から被ばく線量を推定できる。東北大(仙台市)と奥羽大(福島県郡山市)が今月までに分析を終えた5千本では、ほとんどの歯で微量の放射性物質が検出されたが、地域間での差は確認できなかった。過去に行われた核実験や自然界に存在する放射性物質が原因とみられ、第1原発事故による影響は考えにくいとしている。

 ただ、これらのほとんどが事故前に生まれた世代の乳歯とみられる。福島県歯科医師会は世代間で比較して事故の影響をさらに見極めようと、乳歯が抜け始める事故後に生まれた世代からの提供を呼び掛けている。

 乳歯は県歯科医師会に加盟する歯科診療機関などを通じて集めているが、福島県外に避難したり引っ越したりした人も分析を申し込める。1年程度で結果を受け取ることができ、県歯科医師会の添田功(そえだ・いさお)主任は「原発事故の被ばくの実態を正確に理解するため、乳歯を提供してほしい」と話している。