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歯の病気で動脈硬化が悪化 京大、疫学研究で確認

失った歯の本数と、動脈硬化の悪化の程度とに強い関係があることが、京都大の大規模な疫学研究で明らかになった。

 歯周病菌の感染などで動脈硬化が進むことは従来の研究で指摘されていたが、地域の住民の集団で関係が確かめられたのは初めてといい、「歯の手入れと歯科の定期的な受診により口の中の病気を予防することで、動脈硬化に関係する死亡のリスクを下げる効果が期待できる」としている。

 京都大と滋賀県長浜市が連携して2007~10年、同市の30~75歳の男女約1万人を対象に進めた疫学研究「ながはま0次予防コホート事業」の成果。

 浅井啓太(あさい・けいた)京都大助教(口腔(こうくう)外科学)らは、まず参加者全員の歯科検診を実施。矯正や外傷によらない、歯周病などで失った歯の本数を確かめた。同時に、体を横たえた状態で、両腕と両足首の血圧と、心拍が末梢(まっしょう)血管に伝わる様子とを測る「CAVI」という方法で参加者の動脈硬化の程度を割り出した。

 年齢や性別、喫煙の有無、血糖値など、動脈硬化に関わるほかの条件の影響を排除して両者の関係の有無を解析したところ、失った歯の本数が多いほど、動脈硬化の程度が悪くなっていることが分かった。

 従来の動物実験や臨床研究では、口中で歯周病菌などの細菌感染による炎症が起こると炎症性物質が血管に入り込み、その結果、血管の内面が傷ついて動脈硬化を引き起こすことが分かっている。

 浅井助教は「毎日の歯磨きを中心とした生活習慣で動脈硬化が防げることを知って、健康管理につなげてもらいたい」と話している。