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入れ歯で寿命が延び縮み? 歯と口の健康アラカルト

2011年の調査で、80歳で20本以上の歯が残っている「8020」の達成者は38・3%となりました。05年にあった前回調査の24・1%から大きく伸び、大変喜ばしいことです。では残る歯が増えることで、取り外しができる部分入れ歯や総入れ歯(以下入れ歯)を使う人は減っているのでしょうか? 推計によれば、入れ歯を使用する人の割合は減ってきているのですが、高齢者人口増により入れ歯を使う人の総数はまだしばらく増えていくようです。

 そもそも入れ歯は何故必要なのでしょうか? それは多くの歯が無くなると、奥歯なら「噛(か)みにくい」、前歯なら「見た目が悪い」「しゃべりづらい」などの不便さが生じるためです。失われた機能や形を回復し、残りの歯を守る意味でも歯を補う必要があり、保険治療では入れ歯が選択される場合が多いのです。

 では、不便がなければ入れ歯は必要ないのでしょうか? 現在世界中で歯の数と寿命との関係について研究が行われています。その結果、研究により差はあるものの、歯があるほど寿命が延びることが分かってきました。さらに別の研究では、歯が少なくても入れ歯で補うことで寿命を延ばす効果があることがわかりました。入れ歯ってすごいですね。

 しかし、入れ歯が逆効果になることもあります。実際にあった話ですが、介護施設から最近入所された方の歯が動くので診てほしいと依頼がありました。お口の中を見ると、何カ月も外されていない、汚れたままの部分入れ歯が隣の歯と共にグラグラと動いていました。着けたままの入れ歯が汚れをため込み、隣の歯も痛めつけていたのです。

 社会の高齢化が進むと、入院や認知症など様々な理由で自分の入れ歯を管理できない人が増えていきます。汚れた入れ歯を着けたままでいると、誤嚥性(ごえんせい)肺炎になる危険性も高まります。ご家族を介護されている方や、病院、介護関係者には注意して頂きたいものです。(府歯科医師会学術部)